北原徹のバカ買い! Smells Like Teen Spirit - 1 - 不良の正義と白いコート。

(2009.04.02)

不良と書いて“ワル”と読む。

かつて、本当にカッコいい不良たちが街にいた。ちょっと生き方が下手だったり、うまく社会と折り合いがつけられなかったり。でも、悪いと思っているのは社会であって、世間の目ではあるけれど、決して“悪”ではなく、良くできないだけなんだ。むしろ、大人になりすぎた、政治的に“偉く”なっていく汚いやつらより、ピュアであり、何よりも“自分”という“正義”を胸にしっかりと刻んでいる本当の男=漢だったのだ。

川久保玲さんは<コム デ ギャルソン・オム プリュス>の服に関して「大人の不良に着て欲しい」と言っているそうだ。

この大人の不良。なかなか手ごわい。いやむしろ、こんな大人になんか成れない……かもしれない。ちょいモテだかワルだか知らないけれど、そんな薄っぺらい奴なんかにはわからない世界であろう。上に厚く、下に厳しいゴマばかりすっている、みみっちいやつにも理解できない世界であろう。

だけれど、大人の不良たちや、それを目指す大人の不良予備軍の人生や考え方、生き様の深さは確実に顔に出るし、生きている姿そのものが“おしゃれ”だと思う。<ナンバー ナイン>のデザイナー宮下貴裕さんは、ぼくより若いけれど、ぼくから見ても“大人の不良”なのである。彼の作る服が素晴らしいのは、彼の一途で純粋な服への想いが込められているからに他ならない。

<ナンバーナイン>のスプリングコート。本当に不良。

今、ぼくが最も“恋している”ブランド、それが<ナンバー ナイン>だ。このスプリングコートも、本当に不良だな、と思う。カート コバーンを思わせる全体感に惚れた赤、黄、緑、紫のステッチ、全部違うボタン、美しいシルエットを作り出す前身頃、(何というのだろうか裾に向って開く感じ。)

この後、何アイテム、<ナンバー ナイン>で書くことになるのだろうか……(続く)。

『POPEYE』北原副編集長の手描き原稿。
使用しているのは伊東屋の原稿用紙。