花と音楽のある暮らし Music & Flower Vol. 6 – 薫風 - 蒼く香りたつ初夏の風にのって。

(2009.05.25)
Music
初夏の幻影のような音楽。
XTC/スカイラーキング
パンク/ニュー・ウェイヴ最盛の1977年にデビューしたイギリスのバンド。現在唯一の存在であるアンディー・パートリッジ、そして06年に脱退したコリン・ムールディングによるポップなソングライティングで人気を博す。本作はプロデューサーにトッド・ラングレンを迎えた86年リリースの8作目。アンディー自身は失敗作と語るが、『Rolling Stone』誌による1980年代ベスト100アルバムに選ばれるなど評価は高い。

この季節、なにげに目にするビールのCMのほとんどは、野外で飲んでいる映像を使っていたりするものが多かったりします。本当に気持ちよくビールを味わえるそんなことを、みんながもっと日常的に実践すればいいのに、なんて日頃思っていたりするのですが、皆さんはいかがなんでしょうね(だらしない人間の視点ですみません)。

東京湾に近い公園と、江戸川の河川敷からほど近いところに住んでいる僕にとって、何の予定もない今時分の気候の休日は、本とCDプレイヤーをトートバッグに、そしてクーラーバッグに氷と缶ビールをぎっしり詰め込んで、ひとりぼんやりとビールを飲みながら海や川を眺め、放心状態で過ごすことを心から楽しみにしています。時間が経てば勝手に鋭敏になってゆく意識下、目に映る景色がまるで自分と同化してしまうような錯覚さえ起こし(早い話、酔っぱらい)、心の中に淀んでいた考えごとなどがさーっと流されていくようで、ほんと気持ちをリセットするにはもってこいなのです。

今回のテーマ「薫風」からは、その言葉が紡ぎだされたその瞬間の、淡々と流れる緩やかな時間までもが肌の感覚で伝わってくるような、とても優しく美しい情景が浮かび上がりました。とっさに思い浮かんだ音楽は、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、そしてこのXTC『スカイラーキング』。オリジナルのレコード・ジャケットには、草原を渡る風を模したかのように、和紙に似た白い繊維がエンボス加工によって施されています。

とにかくポップに際立ったメロディーとハーモニー、夏の白日夢の幻影を思わせる甘美に彩られたアンサンブル。そしてプロデュースはトッド・ラングレン。アンディー・パートリッジと彼との対立は、頑固なポップ職人同志の意地の張り合いのようなエピソードとして語り継がれていることでも有名です。冒頭の「SUMMERS CAULDRON」と「GLASS」のメドレーは、今もなんだか心ときめくし、ビートルズのアルバムにも匹敵するクオリティーの高い捨て曲なしの素晴らしい名曲が、全編にわたってちりばめられています。

蒼く茂る若葉があたたかな初夏の風に煽られざわめく風景は、それを受けとめるだけで気分をリフレッシュさせ、そして心に風通しが大切なことを伝えてくれます。そんな体感は、自然と共鳴し合うことによって、人の行動が抑制されていくことへと繋がったりするものなのかな、と。「薫風」という言葉が生まれたその瞬間を想像しただけで、なんだかとても気持ちが軽くなりました。

(文/武田 誠)

 

Flower
どこまでも晴れやかな新緑の季節。
ニゲラ
種:キンポウゲ科クロタネソウ属
原産:南ヨーロッパ
開花時期:4〜7月
花言葉:未来

風が吹き抜ける。少し前に聴いた風の音とは何かが違う。
ただそこを通り過ぎるだけ、そんな空虚な音だった。
でも今は違う。そこに何かが存在する。なびき、揺れる、そして音を奏でます。
空を見上げる。どこまでも青く、青く、青い空。
この晴れやかな雰囲気を花で表現してみたい……。
どこまでも澄み切った青空。風に揺れて奏でられる新緑の木々の音。そして清々しく流れる若葉の香り。
結婚祝いに、との友人のオーダーで作ったアレンジメント。
薫風に若き二人を乗せて、いつまでもお幸せにとの思いを込めました。

(文/井上揚平)