加納忠幸のワイン飲もうよ 国産ワインコンクールって?(その2)

(2008.10.14)

 前回は国産ワインコンクールの授賞式について書きましたが、今回は審査内容について。

 国産ワインコンクールは2003年、「国産原料ぶどうを使用した国産ワインの品質と認知度の向上を図るとともに、それぞれの産地のイメージと国産ワインの個性や地位を高める」ことを目的として、第1回が開催されました。

 主催者は国産ワインコンクール実行委員会。その構成は、道産ワイン懇談会、山形県ワイン酒造組合、長野県ワイン協会、山梨県ワイン酒造組合、日本ワイナリー協会、山梨大学ワイン科学研究センター、山梨県となっています。その事務局が山梨県庁内にあることからも、主体は山梨県であることが良くわかります。

 コンクールの審査員は2008年は24名。ジル・ド・ルベル氏(仏・ボルドー大学醸造学部教授)、デニス・ガスティン氏(豪・ワインジャーナリスト)他、国税庁、酒類総合研究所の専門家、各主要ワイン産地組合の代表、有識者等から構成されます。

 コンクールに出品できるワインの資格としては、国産ぶどうを100%使用していること、出品年の12月末日までに市場で流通することが必要です。したがって、少量生産のマニアックなワイン等は出品することが出来ません。

 さて、審査方法ですが、一次審査と本審査に分かれ、一次審査で20点満点で12点以上獲得したものがが本審査にまわされます。

 一次審査、本審査とも審査員は4つのグループに分かれて審査。本審査では、色、香り、味、ハーモニー等の各項目により審査します。

 そして、得点の平均点が17.5点以上を「金賞」、15.5点以上を「銀賞」、13.5点以上を「銅賞」、12点以上を「奨励賞」とします。

 また、各カテゴリーで最高点のものを「最優秀カテゴリー賞」とします。

 審査会を取材した方のお話では、各審査員が個々に点数をつけてそれで評価するのではなく、全員で相談しながら評価を決めてたそうです。評価の統一性をもたせるため、最高点と最低点は削った後、どこをどう評価するのか、審査員同士で意見を合わせながら審査が進んでいくそうです。また、審査員には年号とぶどう品種は公表されそれによって評価が変わったりもするそうです。

 審査は当然ブラインドで行われますが、実際はボトルをアルミフォイルで包んだものが使われています。これですと目の肥えた審査員には完全なブラインドになりません。

 背が高いメルローのボトルはどう考えてもメルシャンですし、透明瓶の甲州のボトルは中央葡萄酒以外に考えられません。また、750ml瓶と720ml瓶では微妙にボトルの形が異なるので、特に750ml瓶と使う会社は少ないのである程度限定することができます。

 

ブラインドにならないボトルたち。左から奥出雲葡萄園シャルドネ、都農ワイン・シャルドネ。
この形のボトルを使っているのは奥出雲葡萄園と都農ワインのみ(デザイナーが同じ)。
そしてシャトー・メルシャン勝沼甲州。甲州でなで肩瓶、この太さはメルシャン。
左から4本目はグレイス甲州:甲州で透明瓶は中央葡萄酒。
いちばん右はシャトー・メルシャン桔梗ヶ原メルロー・シグナチャー:
背の高さ、ボトルの首の長さでそれとわかります。

 2008年のコンクールでは、総出品数622点のうち、一次審査を通過したものが282点、全体の45%でした。そして、269点が受賞(43%)、受賞ワイナリー数は80ワイナリー(76%)でした。

 以上がコンクールの概略ですが、このコンクールが行われたことの最も良い点は、この6回のコンクールを通じてつくり手の意識が向上し、それによって国産ワインの品質が格段に向上したこと。今年の銀賞ワインは、去年の金賞ワインに匹敵するとの話もあるほどです。

 また、コンクールが一般消費者、流通にも認知されることによって国産ワインの裾野が広がったこと。特にこの1〜2年には、国産ワインの売り場面積全体はかなり増えたのではないでしょうか。

 問題点もいくつか挙げられます。一つは審査員に一つの傾向が見られ、ワインの造り方が審査で高評価を受ける方向へ引きずられてしまう可能性があること。

 ワイナリーによってはそれを嫌って一切出品していないところもあります。また、大手ワイナリーの担当者から聞いた話では、そのメーカーの代表的なワインのひとつは審査の傾向から賞を取れる可能性が少ないので、それを恐れて出品しなかったということでした。

 また、エントリーに対し、年号の縛りがない事。出来たばかりのワインも熟成が進んだワインもカテゴリーが同じなら同じ土俵で評価されます。また、去年出品したワインが今年1000本以上残っていればまた出品することができるので、同じワインが賞を2度受賞することも可能ですし、実際受賞したものもあります。

 もう一つ、1,000円台のワインも10,000円以上のワインも同じく同じ土俵で評価されること。今年、1,000円台で金賞を受賞したものも金賞が14のうち4品ありましたが、やはりちょっと無理があるのではないでしょうか。

 まあ、こんな問題点があるものも毎年問題を少しずつクリアしており、国産ワインの品質向上と、消費量の向上に貢献しているのは紛れもない事実。

 私はこれからも、国産ワインの応援団として、国産ワインコンクールにも注目し続けて行きたいと思います。今年の審査結果の詳細はこちらのリンクでチェックしてください。