ホテルタカヤマのYOKOSO NIPPON! 鉄ちゃん、鉄子から、小鉄まで……。ホテル業界もセールス・ポイントは「トレインビュー」

(2009.08.20)

昨秋以来、不況不況と言われつつも、新たなマーケット創造の芽は着実に進んでいるようです。むしろそうだからこそ、これまでニッチなマーケットと捉えられていた世界も、一定量の愛好家によってビジネスが支えられることから注目が集まるのかもしれません。

2006年に秋葉原にあった交通博物館がクローズし、高度成長の息吹を感じさせる昭和の時代の終焉に寂しさを覚えたものですが、一昨年の秋、さいたまに鉄道博物館がオープンして以来、その入館者数は、1年で200万人を達成したと言います。ちょうどその前後には、鉄道漫画『鉄子の旅』もあり、鉄ちゃんや鉄子というファンの呼び名もメディアにも露出し、鉄道=マニアといった世界がだいぶ一般的になってきたのでしょう。先月には、『BRUTUS(ブルータス)』でも、ニッポン鉄道の旅という特集もしていましたし……。

『大鉄道博』のエントランスではブルートレインがお出迎え。

ホテル業界も最近はこのブームにあやかれ! とばかりに、「トレインビュー」をウリにしたプロモーションが、北は北海道、南は九州まで、全国で提供されています。例えば北海道では、京王プラザホテル札幌の「鉄ちゃん・鉄子の宿プラン」。九州は、西鉄イン博多が「電車愛好家必見!! プラン」を販売しています。

「トレインビュー」は、やはりそのロケーションが絶対ですから、駅近のビジネスホテルやJR系のホテルメッツなどの展開が多いようですが、フォーシーズンズ丸の内がオープンした時には、ラグジュアリーホテルのバスルームから新幹線を臨めると密かな話題になったものですし、メトロポリタン丸の内もバスビューをウリにするなど、付加価値を高めているようです。最近では小田急センチュリーサザンタワーや帝国ホテルまで宿泊プランをラインナップし、もはやホテルカテゴリーの別なく“トレインビュー”は、現代のホテルプラン定番化の様相です。

『大鉄道博』懐かしの昭和体験コーナーには、当時の街並みを再現。
流麗な姿は満州鉄道アジア号の鉄道模型。
新幹線グッズいっぱいです。煙草のチェリーのパッケージまで新幹線!
新幹線の安全運行検査をする黄色い新幹線がドクターイエローなんですね、なるほど!
リニアモーターカーが実体験できるアトラクション「リニアGT」も。
鉄道マーケットで見つけた山手線茶。

このような背景からか、グランドプリンホテル新高輪では、この夏、『大鉄道博』が開催されました。ブルートレインの実車が展示されたエントランスを入ると、今年50周年を迎えたというプラレールがお出迎え。懐かしの昭和体験ギャラリーや、新幹線物語などの展示コーナーに、鉄道シミュレーター、リニアモーターカーの体験乗車、そして実際に鉄道で使われていた様々なグッズを集めた鉄道マーケットまで。鉄ちゃん、鉄子はもちろん、小鉄にも嬉しいイベントは、ファミリーの夏休みに最適でしょう。

走る電車は2週間に1度変わります。「あさかぜ」「シュガートレイン」などの鉄道ドリンクは1470円(税込)

でも、もっと密かにオトナの楽しみを! という場合には、銀座日航ホテル裏手の銀座の『バー銀座パノラマ』がオススメです。8丁目のビルの8Fのエレベーターを降りると、玉砂利に飛び石をあしらった和のエントランスの出現に一瞬躊躇しますが、そのまま奥に進むと、バーテンダーがきちんと出迎えてくれます。さらに奥には座敷も用意されていますが、このバーを満喫するには、やはりカウンターを陣取りたいものです。カクテルシェーカーが心地良く鳴り響く中、もう少し小刻みにシャカシャカシャカと接近してくる音の主は……、

カウンターの後部には車庫! 約400台の電車でズラリ。販売用です。
鉄道模型ジオラマのすべてを制作したのは『DDF』
鉄道グッズは果てしなく、パノラマのオリジナル箸「パノラマ箸」と箸置きはギフト販売も。(8月25日まで)

何と鉄道模型がカウンターを駆け抜けてゆきます。線路延長約60mを誇るというこのNゲージのジオラマは、限られた奥行きを東西に行き交うという直線距離を活かした設計になっていることで、迫りくるヘッドライトの明かりから、消えゆくテールライトまで、どことなく旅情を掻き立てるものがあります。窓が無いのに、夜景を楽しんでいる気にさせるのは、模型のライトだけでなく、ジオラマの駅のホームにLEDが灯るその芸の細かさからでしょうか。ふとカウンターの後ろを振り向くと、大きなショーケースにかなりの数の鉄道模型が鎮座しています。新幹線から懐かしの機関車まで、次は何が走っているのか? と、ファンには再訪の期待感が高まるでしょう。

ホテルもバーも鉄道ブームを背景にこの熱はしばらく続きそうですが、元々は、きっと誰かが好きなことが講じて始めたというところだったのではないでしょうか?好きだからこそディテールにまでこだわることで、一般ユーザーにはそのリアリティが受け、ファン心もくすぐる。このこだわりこそはニッポンのお家芸かもしれません。うちのホテルでもせっかくなので何か鉄道にちなんだことを企画してみたいものです。

 

大鉄道博

問い合わせ:Tel. 03-3442-1111 受付時間[10:00~18:00]
会場:グランドプリンスホテル新高輪 飛天
住所:東京都港区高輪 3-13-1
時間:10:00~17:00 (最終入場は閉場の30分前)
※毎金曜日は19時まで
会期:~2009年8月31(月)

 
バー銀座パノラマ

Tel.03-3289-8700
中央区銀座8-4-5 GINZA HACHIKANビル8階
18:00~03:00、土日祝〜23:00
http://www.ginza-panorama.com/