福島原発 池田香代子ブログから “嘘と真のこのくにのメルヒェン”
福島原発で作業している人々 ⑤

(2011.05.09)

続々々々・福島原発で作業している人々の状況は
第二第三のカサンドラを生まないために

きのうはブログを更新しなかったのにアクセス数が伸びていて、なんだろうと思ったら、1月20日の記事、「【動画あり】シンポジウム『どうする放射能廃棄物』」(こちら)を読んで(観て)くださった方がたくさんいらしたのでした。その方がたは、「小出裕章(京都大学助教)非公式まとめ」というブログの5月4日の記事(こちら)で、小出さんのこの動画をお知りになったことが、アクセス解析からわかりました。今、小出さんが社会的な注目を集めていますが、こちらのブログはすでに小出さんにかんする膨大な情報を蓄積しておられます。

 
 
小出さんの学者人生を賭けた警告に耳を貸さなかった原子力体制派、小出さんの警告を知るよしもなかった圧倒的多数の私たち、これらが両輪となって坂道を転げ落ち、東電原発事故の今を迎えてしまいました。小出さんはまるで古代ギリシアの予言者カサンドラのようです。その予言は必ず実現するが、誰にも信じてもらえない宿命を帯びたカサンドラ。彼女は、トロイアの破滅につながるとして、ヘレネー誘拐にも木馬の受け取りにも渾身の抗議をしましたが、聞き入れられませんでした。


 
今また、このくには新たなカサンドラを生み出してしまうのでしょうか。福島原発産業医をつとめる谷川武・愛媛大学教授が、作業にあたっている方がたの自己末梢血幹細胞採取をする体制作りや提言を行っていることには、当ブログも注目してきました。名付けて「谷口プロジェクト」。谷川さんは、虎の門病院血液内科の谷口修一医師と連携しているからです。ところが、提言から1カ月以上たつというのに、東電も政府も動きません。


 
おととい、危機感を強めた谷口チームは、「原発作業員およびご家族、国民のみなさまへ~原発作業員のための自己造血幹細胞の採取と保存計画について~」という文章を、サイトに公開しました(こちら)。専門語でのやりとりでは広く理解を得られない、それどころか専門の異なる人びとの間でも議論が成り立たない、という真摯な反省から、中学生でもわかる平明な言葉でつづられています。漢字の読み方もカッコに入れて示すというていねいさです。なんとしても多くの人にわかってほしいという切迫した思いが伝わってきて、ジャーナリストの江川紹子さんはツイッターで、「読んでいて涙が出てきた。分かりやすく、心を打つ」と感想を述べています。医療には絶対ということはないとした上で、自分たちは今この方法をなぜ最適と考えるかを説明し、この方法をとるかとらないかは、作業にあたる人びとが自分で選択できるようにすべきだ、とする提言には、医学にたずさわる人の良心が輝いています。
 


あしたから、危険な建屋内の作業に人が送り込まれるそうです。谷川さんと谷口さんをカサンドラにしないために、この提言が広まり、おおきな声となることを願っています。
(2011年5月5日00:48)

池田香代子ブログ