池田美樹のLOVE♥ CITY WALK 東京タワーと冬の月。

(2009.01.20)

 年末まではたらいて、帰省などして、新年、東京に帰ってきた。

 ふと窓の外を見ると、我が家の窓から見える東京タワーの隣に、大きな満月が浮かんでいる。美しい光景。この東京タワー、昨年12月23日に、50周年を迎えたそうだ。

 どうも、東京タワーに思い入れがあるのは、私のような地方出身者なのではなかろうか、という気がする。東京生まれ、東京育ちという人々から、特にあの塔についての思いを聞くことはない。彼らは、東京の空に輝くタワーを見上げることもなく暮らしてきたのだろうか。

 10年ほど前、とある週刊誌にエッセイを依頼されたことがある。「東京で暮らす、はたらく女性というテーマで自由に書いてください」というのが依頼の内容だ。

 その時に選んだモチーフが、東京タワーだった。保守的な故郷で、地元の大学に行き、そのまま社会人になって数年。ふと出会った人に言われた。あなたは東京に行ったほうがいい。そのとき、私は東京という街に一度も行ったことすらなかったのだ。

 会社の終業後、飛行場まで急いで、週末を使って仕事を探す日々が始まった。
 羽田空港に着き、都心のホテルに向かう金曜日の夜。最終便に乗るために急ぐ、日曜日の夜。モノレールに乗っている間じゅう、オレンジ色に光る東京タワーが見えていた。それは、私にとって東京の象徴だった。
 そのことを書いたのだ。

 たまたま今、東京タワーの見える部屋に住み、輝く塔の見える場所で毎日食事をし、このコラムを書いていながら、それを意識することはほとんどない。

 手に入っているものがたくさんありながら、そうとは意識せずに、日々、過ごしてしまってはいないだろうか。そんなものが、たくさんある気がする。
 満月に導かれるように東京タワーを見つめながら、そんなことを思った。

 2009年、新しい日々のはじまり。

部屋から見えた満月と東京タワー。

週末の20時〜22時は、この「ダイヤモンドヴェール」というライトアップに変化する。