島下泰久の世界の車道から – 今週はコレに乗った - 2010年6月13日〜6月19日編

(2010.09.22)

中国で電気自動車に乗って帰ってきたと思ったら、この週は日本で電気自動車だ。時代は着実にシフトしている。その中で、取り敢えずは先を言っているように見える日本メーカーは、本当にこの先もその地位をキープできるのか。そんなことを考えさせられる週となった。
今回は2010年6月13日〜6月19日編です。

プジョー3008 / シトロエンC3 6月14日 伊豆周辺
「モーターマガジン」誌のフランス車特集の取材のため、最新の2台で連れ立って伊豆方面へ向かった。
3008は最近流行りのいわゆるクロスオーバー。ワゴン的に使い勝手が良く、SUVのように多少の悪路もスポーティに走れる。見た目、特に顔つきは結構エグいが、乗り味はフランス車らしいしなやかさがあって悪くない。内装の雰囲気も上々だ。
普通の小型車ではなくこんなクルマを選べば、生活に何か変化が起こるかも、なんて思わせてくれるのが、この手のクルマの存在意義である。3008の室内から見る景色は、確かにそんな匂いを漂わせていた。
一方のC3は、典型的なフランスの小型車。実用車のくせにちょっとオシャレで、乗り味にも独特の雰囲気がある。日本の小型車にはない遊び心は、つまり日本人とフランス人の普段の生活に於ける遊び心の度合いの差なのかも。

BMWアクティブハイブリッド7 6月15日、6月16日 台場周辺
BMW初のハイブリッド車は、高級セダンの7シリーズで登場した。面白いのは、単なる燃費重視のモデルではないところ。何とエンジンはV型8気筒4.4ℓ直噴ツインターボで、電気モーターと合算した最高出力は449psにも達するのだ。
よって走りっぷりは強烈。フル加速時の迫力は、「これがエコカー?」と思わせる。しかしながら燃費は10.15モードで9.3km/ℓ。ハイブリッドではない750iに較べて、実に41%も向上しているのだから驚く。我慢はさせずに、しっかりエコ。これは正しい方向性かなと思う。

MINI E 6月15、6月16 台場周辺
こちらはMINIをベースにしたEV=電気自動車。ドイツ、イギリス、アメリカで公道実証実験に使われていた車両がメディア向け試乗会のために上陸した。
前輪を駆動する電気モーターは最高出力204psと強力。車重はざっと300kg増えているものの加速は強烈で、ちゃんとステアリングを保持していないと蛇行してしまうほどだ。しかも面白いことにアクセルペダルは踏めば加速するのはもちろん、戻せば減速して車両を停止させることもできる。要するにEVならではの新しい走りの楽しさが模索されているのである。
このMINI E、来年には日本での実証実験に供される予定だ。1台所有がほとんどで、渋滞は激しく、東京圏に人口の集中した日本のデータは、BMWグループが考える将来のEVに欠かせないということだろう。そう、このMINI Eは市販予定は無く、ここで培ったノウハウを元に2013年にもMCV=メガシティ・ヴィークルと呼ばれる、まったく新しいコンセプトの都市型EVが投入される予定だ。

ベントレー コンチネンタルスーパースポーツ 6月14〜17 都内近郊
コンチネンタルGTをベースに、サーキットまで視野に入れられるまでにスポーツ性を高めたモデルが、このスーパースポーツ。6ℓW12ツインターボエンジンは80ps増しの630psにまでパワーアップが図られ、2座化などによる実に110kgもの軽量化やシャシーの改良を実施している。
走りっぷりは、GTとはまさしく別物と言える。ドライバーの操作に対するあらゆる反応が素早く、軽くなったとは言え2トン以上という車重をまったく感じさせない俊敏な身のこなしを見せる。0-100km/h加速を4秒以内で済ませるパワーだって足りないわけがない。
正直、物凄く欲しくなった。けれど価格は3150万円だ。

日産リーフ プロトタイプ 6月17 横須賀市追浜 日産グランドライブ
電気自動車としてはかつてない規模で量産されることになる、今冬発売予定の日産リーフのプロトタイプに日産のテストコースで試乗した。リーフの特徴は、EVだからと言って特殊なものとはせず、日常的に使えるクルマとしている点にある。実際、加速不フィーリングなどはEVの良さを活かしながらも違和感の無い仕上がり。鼻先の軽いフットワーク、高い静粛性などにはEVのメリットを感じられるが、特殊な乗り物にはなってしない。
とは言え、航続距離160kmでは都市部以外のユーザーはなかなか今のクルマと置き換えるのは難しいだろう。かと言って都心のマンションでは、どう充電するかという問題がある。要するに自動車単体ではなく街づくり、都市づくりまで含めて考えていかなければ、電気自動車の本格普及は難しいということだ。
それと…何をどう説明されても、やはりこの外観はどうかと思うけどな。

「電気自動車の時代になってもクルマって楽しめる?」と、よく聞かれる。答は「もちろん!」 動力源が何になっても、クルマを操る楽しさ、クルマを使う楽しさの根源は変わらない。持てる性能を引き出すには、やはり腕が要るだろうし、クルマがなんだってクルマでのデートの楽しさは変わらないでしょ? ということだ。

言い方を変えれば、自動車メーカーはやっぱり良いクルマをつくり続けなくてはいけないということ。技術がいくら進化しようと、そこに近道は無いのである。