加納忠幸のワイン飲もうよ 松徳硝子見学記(その1)

(2010.07.05)

私が使っているグラスの中で大変好きなグラスに
「うすはり」というグラスがあります。

こちらがそのうすはり。
この名前は昔ガラスのことを「玻璃(はり)」と呼んだことから
「薄い玻璃」で「うすはり」になったのだそうです。

何しろ驚くべきはそのガラスの薄さ。
約0.9mmとのことで、
昔電球を作っていた技術でつくっているのだとか。

このグラスに出会ったのは数年前のワインのイベント。
ワイングッズの業者のブースにこのうすはりはありました。
ちょっと変わったグラスがあったので持ってみるととにかく軽い。
まるでプラスチックのグラスのよう。

それから大変興味を持ち店で販売するようになり、
自家用にもSサイズのうすはりを買って、
もっぱらビールや水を飲むのに使っています。
この薄いグラスでビールを飲むと大変うまいんです。

そのお気に入りのグラスですが、
私はどうしてもどのようにつくるのか見てみたい。
ということでお願いして見学させていただくことになりました。

場所は錦糸町から歩いて5分ほど、
下町の商業地区の一角に「うすはり」のメーカー、
松徳硝子はありました。

まず会社の横のこのショールームで
村松社長のお話を少しうかがってから早速見学開始。
見学は広報の齊藤さんが案内してくださいました。

工場は2階建てになっており、1階は窯になっています。
窯はこのように天然ガスの窯で、
一度温度を決めるとその温度を維持するため、
火はずっと消さないのだそうです。

この窯の入口には、
社員の方のお弁当が並んでいました。
毎日温かいお弁当を食べることができるのでしょう。

これは窯の温度の記録計。
現在の温度は1381度。

2階へ上がってこちらが作業場。
多くの社員の方たちが忙しく働いています。

こちらが、実際にガラスの原料を中に入れて溶かす壷。

これは窯のミニチュアですが、
このように窯の中に6個の壷が入っており、
一つの壷につき3人、全部で18人の方が、
ガラスを「吹く」作業をしています。

一つの壷では、1種類のガラスを作ることしかできないため、
成分が異なるガラスをつくるためには別の壷が必要。
したがって、こちら窯では最大6種類の成分が異なる
ガラスをつくることができます。

こちらがガラスの原料。
珪素、ソーダ、石灰が基本原料で、
それに色をつけるための原料を入れたりするとのこと。

さていよいよ、グラス作りの作業です。
まずこちらが「玉取り」という工程。
壷から棹(さお)の先に一定の溶けたガラスを巻き取り、
棹を回しながら息を吹き込んで「下玉」をつくります。

次に下玉に作るグラスの大きさに合わせて更にタネを巻き、
グラスの型に入れて空気を吹き込みます。

こちらは型ができたグラス。
くるくる回転させているのは、まだ熱いので型崩れさせないため。

下のほうが太い形状のものを吹く時には、
このように型に入れて吹いてから、

型が2つに分かれて取り出します。

ちなみに「うすはり」は、この吹きの段階で0.9mmの厚さを実現します。
これはまさに神業としか言いようが無いことを、
いとも簡単にやっているように見えるところがすごい。

今回は吹きの過程まで。
その後グラスがどのように仕上がるかは次回のお楽しみ。