桂真菜の演劇ダンス道 観客を挑発する野外劇3本とダンス
『フェスティバル/トーキョー2011』

(2011.09.14)
ルネ・ポレシュ作・演出『無防備映画都市―ルール地方三部作・第二部』。映画撮影所を舞台に展開するドラマには、「傷ついた町」の記憶が重ねられる。Photo / Thomas Aurin

「書を捨てよ、町へ出よう」は寺山修司の評論集の題にもなった名文句だから、読書の否定じゃなくて、私たちを挑発する言葉なのね。2011年のフェスティバル/トーキョー(F/T)には「劇場を捨てよ、町へ出よう」という趣の野外劇が。観客参加型や美術と渾然一体の空間もそろうF/T、「普通の芝居」じゃ不可能な冒険ができるわ。このページで紹介するのは野外劇3本と、「ダンスって何?」って考えさせるダンス(公演情報はページ下方)。

9月16、17日の『宮沢賢治/夢の島から』は日本とイタリアのアーティストが、それぞれ構成・演出した新作を続けて上演。ともに優れた美術家でもある飴屋法水とロメオ・カステルッチが、互いの作品に出演するゴージャス企画。植物園も備えた夢の島公園の芝生にすわって、過激に、あるいは詩的に織り成される宮澤賢治のイメージに浸りましょう。

21日からの野外スペクタクルは、ルネ・ポレシュ作・演出『無防備映画都市―ルール地方三部作・第二部』。ロッセリーニ監督が第二次大戦の影を負った町と人を描く「戦争三部作」(『無防備都市』『戦火のかなた』『ドイツ零年』)に触発されたポレシュは、豊洲の空き地を映画撮影所に仕立てるの。名画のかけらが散らばる本作、映画ファンも盛り上がりそう。ドイツ西部の重工業地帯として発展したルール地方は、1929年の世界恐慌で失業者が増えて沈滞。33年にナチスが政権をとってから軍需産業が盛んになったため、大戦では爆撃対象に。冷戦時代に西独の工業都市として復興したら、50年代後半から炭鉱閉鎖で傾いて……。傷ついた町の歴史は、私たちと無縁ではなくってよ。

ポレシュが現代社会に対する批判をこめた野外劇は、ドイツ人俳優によって広い空き地で上演される。ベルト・ノイマンの美術にも期待。
刺激いっぱいの野外劇、
行く前にF/T公式HPの注意を読もう

10月7日は松本雄吉率いる維新派の『風景画―東京・池袋』、世界初演初日。大阪を拠点に活躍する維新派は港や島でも巨大な装置を築き、独特の美意識あふれる身体性豊かな表現を重ねてきました。なんと、今回はデパート屋上に降臨! 喧騒たちこめる空中で、どんなリズムが響くのかしら? 超高層ビルに囲まれた町の風景が、グルリ反転しちゃうかも。野外公演は予定調和を破る瞬間も訪れるけど、天候リスクも。出かける前にF/T公式HPの注意とお知らせ、読んでね。

松本雄吉作・演出の維新派公演『台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき』(2010年、犬島にて撮影)は装置も凄い。今回、デパート屋上では何が起こるか? Photo / 井上嘉和
次々ヒット曲が流れる愉快なステージ
気分は弾んでダンサブル

劇場内でも新鮮な驚きにうたれるステージが、フランス人振付家ジェローム・ベル構成・演出『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』。多彩な国で観客を笑わせながら、踊りの意味を問いかけてきた作品を、日本で選ばれたパフォーマーが上演するの。ビートルズはじめ親しみやすい18曲をDJが送る中、異なる年代と職業の26人(ダンサー含む)が、「ダンス」の領域を拡げる現場を目撃しなきゃ。

 
9月16日から11月13日まで続くF/T11のテーマは「私たちは何を語ることができるのか?」。F/T主催作品と公募作品(アジアからも来日)に加え、映画や講座など関連企画も。舞台芸術を深~く楽しむチャンス!

ダンスを革新するジェローム・ベルの作品は物議を醸す。でも、『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』はポップな感覚で、各国の観客を笑わせた。Photo / Mussacchio Laniello

 

『フェスティバル/トーキョー2011』

◆F/T11オープニング委嘱作品『宮沢賢治/夢の島から』
前半『わたくしという現象』構成・演出:ロメオ・カステルッチ
後半『じめん』構成・演出:飴屋法水
日時:2011年9月16日(金)~17日(土)
会場:都立夢の島公園内 多目的コロシアム 

◆『無防備映画都市―ルール地方三部作・第二部』
作・演出:ルネ・ポレシュ、製作:フォルクスビューネ(ドイツ語上演、日本語字幕つき)
日時:2011年9月21日(水)~25日(日)
会場:豊洲公園西側横 野外特設会場

◆『風景画―東京・池袋』維新派
構成・演出:松本雄吉
日時:2011年10月7日(金)~16日(日)
会場:西武池袋本店4階まつりの広場

◆『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』
構成・演出:ジェローム・ベル
日時:2011年11月12日(土)~13日(日)
会場:彩の国さいたま芸術劇場Tel. 0570-064-939
共同主催:埼玉県芸術文化振興財団埼玉芸術劇場、フェスティバル/トーキョー

以上、問合せ:フェスティバル/トーキョー
Tel. 03-5961-5202