シェアリング・エコノミーと 新しい旅のかたち -ex2- ニック・バーリーさんに聞く、オリンピックの心得。
(2015.05.13)大成功の大会として見習いたいロンドン五輪。2020東京五輪を控えて日本人はどのような心構えが必要でしょうか? 2020五輪招致IOC総会で抜群の印象を残し見事開催を勝ち取った「お・も・て・な・し」プレゼン。その執筆者で戦略コンサルタントを務めたニック・バーリーさんにうかがいました。
ーニックさんは2020五輪招致総会においてJOC日本オリンピック委員会会長 竹田恒和さんはじめ7人のスピーカーによる最終プレゼンテーションを執筆されたとのことですが、あの滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」の考案者ご本人でもありますか?
ニック・バーリーさん「私たちはライター、スクリプトライター、パワーポイントの専門家、スピーチ・コーチそしてスピーカーからなるチームでした。プレゼンといってもただ大きな声で強調すればよいというものではない。言いたいことをいかに効果的に伝達するか? そのために地道に積み重ねていったものの成果があのプレゼンテーションでした。実はあの「お・も・て・な・し」にたどりつくまでに2年が費やされています。チームで意見交換しながら生み出した努力のたまもの。滝川クリステルさんの言い回し、呼吸、表現力、すべて総合して一番よかったものを繰り返し練習し寸分の狂いもなく実演したのがあのプレゼンなのです。」
ー「お・も・て・な・し」は母音の響きが明確な日本語の特徴だけでなく、日本独特のリズム感や身振り手振りのセンスを端的に表現していたと思います。
ニック・バーリーさん「 ”ウェルカム!” ではなく ”ホスピタリティ” でもなく ”お・も・て・な・し” がよかったのでしょうね。」
ーその後、東京のオリンピックの準備はどのくらいまで進んでいるのか気になります。
ニック・バーリーさん「東京の準備はリオより進んでいるという噂ですよ。(笑) シンカンセンもそうですが、日本の人は時間に遅れない。五輪準備も遅れないでしょう。」
スモウ、スシ、シンカンセンというよりも。
知られざる日本文化を世界に知らしめるチャンス。
ーたとえば開会式にしても大成功をおさめたロンドンのような素敵なものになればいいなと思います、でも日本には007やミスター・ビーン、D・ベッカム選手はいません。
ニック・バーリーさん「オリンピックは日本にとってグローバルなチャンス。これを認識することが大切です。2020年、東京は世界のキャピタル、首都になるのです。このチャンスは、みなさんにとって一生に一度やって来るかどうかの貴重なものです。私が思うに、ロンドンはチャンスをぐっと捕まえることができました。イギリスは、特に現在 20世紀のイギリスはどんな国なのかを全世界に知らしめることに成功したと思います。東京もそのチャンスをものにしてほしいですね。」
ーチャンスをものにする、ですか……。でも東京をアピールするってどうすればよいの? というか……。
ニック・バーリーさん「日本の文化を説明して、世界における日本の位置づけをよりよいものにすることができるはずです。外国人の目から見て日本は多いに誤解されている国だと思います。メディアが日本について報道しているのを見たり聞いたりするとフラストレーションを感じずにはいられません。例えば捕鯨の問題はたいへんデリケートなものです。でもその背後のストーリーを語ってあげれば、世界の日本に対する認識の助けになるかもしれない。スシ、スモウ、シンカンセン、それ以外に膨大な文化が日本にはある。それを世界に理解させてほしいということです。」
***
ー日本人が誤解されやすいというのは面白い視点ですね。日本人自身も自分たちを過小評価する傾向があるかもしれません。
ニック・バーリーさん「しばしば日本社会は自己防衛的、保守的立場をとることがあります。ちょっとした会話の中ですぐにスミマセンと言ったり。これは欧米では謝罪を意味してしまう。もし東京に課題があるとしたら、コミュニケーションでしょう。日本では小、中、高と学校で英語を勉強します。ある程度英語を話せるし聞き取りもできるのに多くの人は ”英語はできません、I can’t speak English.” と英語で言う。(笑)日本人は完璧主義すぎると思うことがあります。」
ー英語ができるかどうかの問題もあると思いますが、それとはまた別のコミュニケーション能力、表現力をつけることが大切なように思えます。そのためにまずは日本、東京の魅力を知ること、客観的に捉え直すことが必要ではないでしょうか。
ニック・バーリーさん「日本の素晴らしいところは……私は日本のシンカンセンが大好きですが、それ以外にも時間に遅れなかったり、タクシーの細かいサービスだったり……日本の人々が当たり前と思っているところにあるのでしょうね。」
●London Little More
ロンドンは美味しい!
『ブループリント・カフェ』
ニック・バーリーさんにお話をうかがったのはイースト・ロンドンの『ブループリント・カフェ』。バトラーズ・ワーフにある『デザイン博物館』の2F、テムズ川に面しロンドンのアイコン タワー・ブリッジが臨める絶景と、ひねりのあるモダン・ヨーロピアン・キュイジーヌでロンドナーにも人気のスポットです。ちなみにこの『ブループリント・カフェ』ならびに『デザイン博物館』はじめバトラーズ・ワーフ一帯はコンラン卿の指揮のもと再開発が進められたエリア。気取りすぎずカジュアルに、洗練された料理と雰囲気が楽しめます。







