from 広島 - 15 - どれもテッパン!?
バリエーション豊かなお好み焼き

(2011.09.26)

「広島風」と呼ばないで。

お好み焼きといえば、関西のものと広島のものに大きく二分されますが、関西の方が「関西風お好み焼き」と呼ばれることに抵抗があるように、私たち広島県人も「広島風お好み焼き」と呼ばれたくないんです。

それに、広島県外でときどき見かける「牡蠣を入れたら、広島風お好み焼き」というのも、まったくの誤解。

ということで今回は、週に一度は必ずお好み焼きを食べている広島県人のワタクシが、もっと知って欲しい「広島のお好み焼き」をナビゲートします。

広島のお好み焼きといえば、クレープ状の小麦粉の生地にキャベツやもやしなどの具材がドッサリ、麺が入って、甘口のトロリとしたお好みソースで仕上げるというのが一般的なイメージでしょうか。

確かにそれが基本形ですが、地域やお店によって焼き方やトッピングに微妙な違いがあるので、広島県人には「このお店のコレが好き!」という具合に、誰もが皆お気に入りの一枚(一枚に留まらない場合が多いですが)があります。

「府中焼き」、「尾道焼き」をご存知ですか?

私が暮らす広島市とその周辺のお好み焼きは、豚バラ三枚肉と卵と麺が入った、全国的に知られたもっともポピュラーなタイプ。それが広島県東部になると、また違った特長が見られます。

まずは、福山市に隣接している府中市が発祥の「府中焼き」。B-1グランプリにも出場したため、近年、人気・知名度ともに急上昇。豚バラではなくミンチを使い、時間をかけてじっくり焼き上げることで凝縮された野菜と、サクサクの食感がまるでスナック菓子のような香ばしさの麺とのコントラストは、今までのお好み焼きの常識を覆すほど。昨年開催された広島県内のご当地お好み焼きを集めた「広島てっぱんグランプリ」での優勝も頷けます。

数年前までは府中市周辺でしか食べられませんでしたが、広島市内にも「府中焼き」専門のお好み焼き屋さんが登場。広島駅新幹線口から徒歩5分の『としのや』なら、出張で広島に来られた方など、あまり移動時間がとれない場合でもお楽しみいただけます。

続いて、今年の3月まで放映されていたNHK朝の連続テレビ小説『てっぱん』の舞台として注目を浴びていた尾道市の「尾道焼き」。こちらは、なんと「砂ずり」入り。蒸し焼きにされた甘くて柔らかいキャベツと、コリコリとした砂ずりの食感が絶妙です。

「尾道焼き」は、地元の常連客に混じって、同じ鉄板を囲んで食べるのが醍醐味。尾道駅前から続く商店街を通り抜けた、街の一角にある『村上』では、優しくて気さくな店主のおばちゃんと、誰でも受け入れてくれる雰囲気の常連客の輪の中にいると、まるで親戚の家に遊びに来た気分になれますよ。


進化し続ける「広島のお好み焼き」。

「府中焼き」や「尾道焼き」のような、ローカル色があって珍しいタイプのお好み焼きもいいけれど、やっぱり、日常生活においては禁断症状が出る前に、ふらっと立ち寄れるお好み焼き屋さんの存在は重要。
 
私が休日のお昼に、サンダル履きに自転車で通うご近所のお好み焼き『おてつ』は、豚バラ肉と卵に麺入りのベーシックタイプ。

ここに私は、必ず「ハラペーニョ」をトッピングします。お好みソースの甘みに、ハラペーニョの辛さをプラスすると、鉄板の熱さも手伝って、生ビールが欲しくなるおつまみ系の一枚になるんですよね。

戦後、水で溶いた小麦粉と少しの野菜で作られた一銭洋食が広島におけるお好み焼きのルーツと言われていますが、時代の流れとともに、具材のボリュームが増え、特製のソースが誕生し、トッピングもチーズ、お餅、シーフード、キムチ、ハラペーニョなど、バリエーションも増え、ずいぶんと進化してきました。

そんな広島のお好み焼きの新潮流として浸透してきたのが、「卵半熟系」。

従来の焼き方は、仕上げに黄身をつぶした卵の上にお好み焼きを乗せるので、黄身のトロトロ感は残りませんでした。卵半熟系は、お好み焼の上に半熟の卵を乗せるので、黄身がトロトロのまま。

ここでオススメしたいのが、卵半熟系の代表格『ひなた』から暖簾分けした『こひなた』。
原爆ドームや平和記念公園から徒歩圏内にあるので、広島観光の時に、トロトロ半熟卵のお好み焼きをお試しいただけます。

今回、ここでご紹介したのはほんの一部。まだまだ、たくさんのバリエーションが楽しめる「広島のお好み焼き」の中から、お気に入りの一枚を探してみてはいかがですか?