from 北海道(道央) – 32 - ぶらりと「小樽」の街中を歩いてみる。《2》

(2010.05.24)
2羽のカモメがゆったりと水面を泳ぐ、ある日の「小樽運河」。浅草橋から撮影。

小樽のバックパッカーズホステルを発見。

小高い丘の上に建つ「水天宮」から眼下の小樽市街へと向かうためには、3方向の経路がある。そのうちの一つ、花園十字街方向へと向かう参道を降りて行くと「鳥居」が待ち受けている。むしろ、表参道はこちら側であり、前回「水天宮」へと登った道は脇道だったのだ。「鳥居」を左側へと曲がり、さらにぶらりと歩いてみると、使われなくなったと思われる自転車と大きな洗い桶を利用した「看板」を、時機に目にすることになる。

そこには「The Otarunai Backpackers’ Hostel Morinoki, single simple travel」と描かれている。
 
『旅の家 小樽 もりのき(杜の樹)』さん。バックパッカーズホステルとして1999(平成11)年9月にオープンされてから、11年が経過し、世界各国からの旅人ばかりではなく、小樽市民の皆さんにも愛される存在なのだ。ちなみに、「Otarunai(おたるない)」とは「小樽」という地名の語源。
 

『もりのき』さんの入口。「The Otarunai Backpackers’ Hostel Morinoki, single simple travel」という標記が入ったロゴマークが目印。
築80年の古民家を活用している「もりのき」さん。

 
「梅」を観る会に招待される(笑)。

築約80年近くの昭和初期の古民家を改修し、ホステルを営まれるのは家代・原田正樹(はらだ・まさき)さん。素敵な奥さまと、可愛い犬たちに囲まれながらホステルを営まれている。

小樽市内の名門高校を卒業後、すぐに旅を始める。国内外へと足を伸ばし、気が付くと地元・小樽でバックパッカーズホステルを営むことになった。

「(ホステルを営むために)どこかよい場所はないかと探していたのですが、偶然、自宅の横にある古民家を使えることを知ったのですよね」と、朗らかに語ってくださった。
 
実は、原田さんと『もりのき』さんの存在を以前から知っていたのだが、今回の小樽ぶらり散歩の途中、ようやく『もりのき』さんを発見し、偶然原田さんがいらっしゃったことからお会いすることができたのだ。初対面である。

結局、色々と話をしているうちに、「渡辺さん。今度の金曜日にホステル中庭にある「『梅』を観る会」をやるんですが、自分の食べる分量の肉を持って、遊びに来ませんか?」というお誘いを受けた。図々しい自分は、多少遠慮しながらも、「肉と赤ワイン」を持参し参加させていただいた。
 
その会には、小樽市内の皆さんはもちろんのこと、アメリカ・オレゴン州から小樽に仕事で来ているという素敵な女性とお母さまがいらっしゃったり、その日偶然『もりのき』さんに宿泊されたという世界50か国以上を旅行しているというオランダ人の方がいらっしゃったりと、国際色豊かな「楽しい宴」に招待いただくことに。「ぶらり旅も、なかなかよいものだ」と、妙に楽しい気分になってしまった。

旅慣れた皆さんや若い皆さん方には、気楽に連泊できる肩肘張らないホステルなので、格式の高いホテルとは違った楽しみを、小樽にて体験されてみてはいかがでしょうか。

国内外を旅して周り、現在は世界各国から小樽へと旅行される皆さんのためにホステルを営まれる家代・原田正樹(はらだ・まさき)さん。
部屋の一つ。最大で1日当たり20人弱の方々の宿泊をお受けしているとのこと。
宿泊された皆さんは、世界地図にどこの国から来たのか「ピン」とともに、自国の紙幣を気が付くと貼り付けていかれるそうだ。国内はもちろんのこと、欧米、アジアからのお客さまのピンが特に多かった。

出抜小路の「火の見櫓」にて。

さて、「もりのき」さんをお暇し、小樽運河方面へとのんびりと歩いてみる。小樽市内には「寿司屋通り」「嵐山通り」「堺町通り」などなど、固有名詞が付いた通りが多いこともあり、小樽に転勤してきた4年前には「右も左も分からない」とう状況であったことが懐かしい。

小樽観光に来られる多くの皆さんは「堺町通り」を中心に歩かれるのだが、国内の多くの街と同様、小樽もかつての「中心市街地」は閑散としている感が否めない。地域の課題でもある。
 
多くの観光客の皆さんが記念写真を撮られる場所は、小樽運河でも「浅草橋(あさくさばし)」と呼ばれる場所だが、臨港道路を挟んで反対側には「出抜小路(でぬきこうじ)」という看板を見つけることができる。
 
 
火事が多かった小樽。
(参考) 消防犬 ぶん公。(『WEBダカーポ』より)

 
「火の見櫓」が作られていて、ここから違った角度から小樽運河を眺めることもできるのだ。観光客の皆さんはその存在に気が付かないかも知れないが、地元に住んでいる自分も今回始めて昇ってみた。いつもとは違った角度で眺めることのできる小樽運河、そして地獄坂方面へと続く道路を眺めてみると、改めて小樽が「坂の街」であることを再認識させられることになる。
 

「小樽出抜小路」と書かれた看板がある「火の見櫓」。櫓の上から、小樽運河などを眺めることができる。
1910(明治43)年11月、当時の小樽住江町・入舟町有志によって鋳造され、実際に使用されていた青銅製の「半鐘」が櫓の最上階にある。
「火の見櫓」から小樽運河方面を眺めてみると、小樽運河埋め立て反対運動などの歴史的経過を含め、小樽の歴史が浮かび上がって見えてくるかも知れない。
「出抜小路」の看板を裏側から。出店している店名が書かれているが、どのお店も観光客の皆さんで賑わっている。

 
「小樽ビール」と旬の食材に満足。

さらに小樽運河の1本海側の通りを歩いてみる。この通りには、昔からよく通っていた『小樽倉庫No.1』という、小樽の地ビールを提供するお店があるのだ。

ビール製造工程の見学もできるし、数種類ある「小樽ビール」を飲みながら、「旬の食材」をふんだんに使った料理を観光客の皆さんと一緒に楽しむことも、また楽しい一時である。
 
ちなみに、こちらのお店では、『もりのき』さんの「『梅』を観る会」でご一緒した、ドミニカ共和国から珈琲豆を輸入・焙煎師でもある千葉さんの珈琲を飲むことができたり、小樽の街の狭さを実感したりもするのであった。(つづく)

 

小樽の地ビールを飲むことができる『小樽倉庫No.1』。店内には麦酒仕込み用の釜が置かれている。
一人であっても、大勢であっても、ジョッキー片手にゆったりと料理を楽しむことができる。
4月と5月の季節限定麦酒「ヘレス」。麦芽の風味豊かな黄金色の麦酒。この季節、旬の味覚である「アスパラガス」との相性は抜群。
「地物生ウニと2色アスパラのグラタン仕立て」。小樽のある後志(しりべし)で日本最初のアスパラガスの栽培が始まったのだが、グリーンアスパラガスとホワイトアスパラガス、さらには地物生ウニを使った贅沢なグラタン。「ワイン文化史研究家」とすれば、リースリング(白ワイン)と合わせることもお勧めしたい。
「自家製やわらかスモーク盛り合わせ」は、鶏肉、貝、タコ、サーモン、卵がスモークされていたが、季節によって素材は変わるそうだ。
〆に「パエリア」をいただいたのだが、なぜか別腹のようにお腹に吸い込まれていってしまった(笑)。