from ミラノ(近正・ササキ) – 1 - 聖ニコラウスとベファーナに翻弄されすぎる13日間。

(2010.01.26)

日本のクリスマスと言えば、24日のイブの夜を気合いの入ったクリスマスディナーに出かけ、高価なプレゼントを贈り合う恋人達の日。一方、カトリックの総本山を有するここ、イタリアでは、愛する人つまり「家族」と過ごす祭日です。このお祭り気分が、12月25日のクリスマスから年始まで続きます。

年越しもからんでくるから、その用意はとっても大変。気分を盛り上げるための飾りから、プレゼント、家族が大集合したときのための食材まで、やることがいっぱい。その準備をより楽しくさせてくれるクリスマスマーケットが各地で開催されています。今回は特に有名なメラーノのクリスマスマーケットに行って来ました。

ミラノから車で3時間半。イタリア、オーストリア、スイスと、3国の国境に面する街、アルト アディジェ地方メラーノ。

温泉保養地としても有名な地方で、自然は盛りだくさん。中心部からでもアルプスが見え、少し歩けばりんご畑やぶどう畑があります。その自然を手軽に楽しめるよう、散歩道がいくつもあるのです。

イタリアでありながら、ドイツ語が第一言語。イタリア語も通じるけど、かなり「ハホハホ」したフィレンツェ的発音が難しい。生活はオーストリアのチロル文化が濃く、街並もイタリアの他の地域とはだいぶ違っています。

ワインやスペックなど、美味しいモノでも有名なこの地方。クリスマスマーケットには観光もかねたイタリア人が各地からやってきます。クリスマスデコレーションの間にアルプスを見ながら歩いていると、子供達が「あ!サンタ・ニコラウスだ!!」

うーん。。。。サンタ・ニコラウスって誰??

彼こそが、世界中で愛されるサンタクロースの起源となっている聖人なのです。
お腹出てないし、トナカイいないし、杖とか持ってるし。いまいちピンとこないお姿、おもちゃはもらえそうにない気がする。この聖ニコラウスは、お金がなくて娘を売らざるを得なかった家族に、煙突から金貨を投げ入れたというお話があります。その金貨がたまたま干してあった靴下に入ったために、クリスマスに靴下を準備するようになったのだとか。

クリスマスを迎える準備をするためのマーケット。販売されているアイテムは、伝統的なもの、手作り、素材にこだわったものが多く見られます。普段ミラノで目にすることがないモノばかりなので、アッチもコッチも興味深い。

体が冷えたら、ビンブルレと呼ばれるホットワインをゴクリ。赤ワインをベースにオレンジとスパイスを加えて温めた冬限定の飲み物。ブルレ。。。。、もしかしてブリュレ? クレ−ムブリュレ的な? ビンって、もしかしてVINO(ヴィーノ、ワインの意)の略? 調べた結果、正しくはVin Brule”(ヴィン・ブルレ)のイタリア語。ヴィンはワイン、ブルレは焼いたという意味。これがドイツ語ならグリューバイン、フランス語ならヴァン・ショー。ホットワインは和製英語なようです。

クリスマス特有の華やいだ町並みと、行き交う人々の幸せそうな笑顔。豪華ではないけれど、暖かさがいっぱい。本来のクリスマスの意味を教えてくれるメラーノでした。

 
クリスマスマーケットは、実はミラノにだってあるんです。毎年恒例のクリスマスマーケットがミラノのドゥオーモ広場を超えてすぐ、メルカート広場からダンテ通りで開催されています。星柄のテントが並ぶ様は本当にキュート。

こちらも負けずに大盛況! ただし、、、行ったのは元旦すぎてから。え!?年を越してもクリスマスマーケット?と、思われるでしょうが、“聖ニコラウス”さんに勝るとも劣らないクリスマス関連の人気者が登場するのは1月6日だから。

その名は“ベネファーナ”。

どう見ても魔女です。コワイです。

イタリアのクリスマス休暇が1月6日まで続く訳はこの“ベファーナ”が登場する“エピファーナ“という東方三博士が生まれたばかりのイエスキリストのもとを訪れた祭日があるため。ベファーナはカトリックの国として祭日にまでなっているこの日の夜にほうきに乗って、良い子にはお菓子を、悪い子には炭を配っていくのです。なぜにそんな事をするのかと言えば、東方三博士がキリストの居場所を尋ねたにもかかわらず、無視したのだとか。あとで後悔し、お菓子を持って追いかけたものの見つからず、探しがてらにお菓子を配り歩いたらしい。

なぜ悪い子には炭を持って行くのか、疑問がないこともないのですが、今ではその炭を模したお菓子まで売られております。

いつも美しいお菓子で飾られているウインドーにも、俺が主役とばかり炭のお菓子が。砂糖でできておりますがなかなかリアルでしょ? そして、怖いお顔の“ベファーナ”もクリスマスマーケットの主役です。

日本で言えば、家族の安否を確認し合い、行き慣れない神社に行ってさい銭を投げたり、はたまた慣れない着物を着たりと大忙しのお正月ですが、イタリアでは“聖ニコラウス”と、“ベファーナ”に翻弄されすぎる13日間。

ただ、どちらの国も思いは一つ。大切な家族や愛する人の無事を思い、新年に向けて心新たにするためのお休みなのです。