土屋孝元のお洒落奇譚。ホノルルにモジリアーニ?
ハワイの 穴場中の穴場、それは……。

(2013.01.30)

ハワイに印象派絵画が
あるとは!

ホノルルにモジリアーニ。不思議に思う方もいるかもしれません。でも『ホノルル・ミュージアム・オブ・アート』(以下『ホノルル・ミュージアム』)には世界中の優れた美術作品が集められているおり、印象派の作品まであるのです。

古くはエジプト、ギリシャ、オリエント、ヘレニズムの美術品からガンダーラからインド、インドネシア、イラン、トルコ、などシルクロードの国々、日本の鎌倉時代の仏教彫刻。かなりの大きさで身の丈は2mを超えるものもあります。名刹の本堂にあった御本尊だったのかな? と思わせる立派さです。他にも千手観音などありました。そのほか、茶道具コレクション。細かく見るとかなりのお道具だてです。場所柄か炉ではなく風炉でした。

浮世絵は外国人に人気の高い歌麿、春信などの春画など。この展示室は子供が入れないように障子の建具で覆われていて、入り口に注意書きがありましたが。

珍しいところでは柴田是信の作品がありました。柴田是信は明治の超絶技巧で有名な漆作家です。

民藝運動の作家のものもあります。柳宗悦はじめ浜田庄司、河井寛次郎、もちろん、北大路魯山人。そのほか韓国の李朝陶磁器、中国の青銅器、青銅仮面や珍しい金朝のものも。さらには17世紀から現代までの西洋のポートレイトや風景画、そして、印象派のコレクション。

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印象派作品はみなサイズは小ぶりですが、モネ、ルノワール、セザンヌ、ボナール、ゴーギャン、マチスなどがあります。印象派以降のピカソ、ブラマンク、レジェ、キリコ、現代作家のオキーフ、カッツも。どれも画集ではあまり見かけない作品です。絵画作品以外では、各地域(日本の有田、伊万里、中国の景徳鎮、マイセン、リモージュ、など)の陶磁器の展示も。

ハワイの各島、各地域の酋長のマントやヘルメット。これでイメージが浮かばない方のために言いますと、あのカメハメハ像のヘルメットとマントのようなものです。そのほかハワイの古い絵画からハワイをテーマにした現代絵画などまで幅広くコレクションされています。
 


ジョン・メルビル・ケリーはあまり日本では知られていないのですが、以前から僕はファンでした。ハワイアンの風俗を描いています。版画もあり、作品集は『ホノルル・ミュージアム』のミュージアム・ショップにて購入できます。『ロイヤル ハワイアン ホテル』にはこの作家の作品が何枚もロビーや廊下に飾られています。
各国風の庭園のカフェで一服がおすすめ。
でもAM中に行きましょう。

ちょうど僕が見に出かけた時には、ミュージアムの企画として、50年代から現代までの著名なサーファーのサーフ・ウェアーの変遷の歴史の展示もありました。個人のコレクターが集めたものが部屋ごとに展示されているようで、建物もミクロネシア、ポリネシア風、まるで日本の茅葺屋根の古民家風にも見える建物です。

ミュージアムは外からは小さく見えるのですが、各コレクションや地域ごとに展示室があり、その部屋は、それなりに広いので全体としては、かなりの規模になります。

中庭が作られていて、中国風庭園、地中海オリエントスタイル、イベントをするための現代庭園など、この庭園も作品として楽しめるものになっています。その庭園に面して落ち着けるカフェがあり、ここもまた、優れたデザインですが、昼の1時までなのでゆっくりされたい方は午前中から出かけることをオススメいたします。

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もちろん、ミュージアム・ショップも充実していて、展示してある作家の作品集などもきちんと揃えられていました。僕の個人的な印象ですが、ニューヨークの『リゾーリ』のような専門書の品揃えでした。お土産にちょうど良い洒落た小物から、本格的な染めのスカーフ、バテックの数々やレターセット。もちろんハワイアンキルトや日本のお正月のポチ袋まで、東西を問わずいろいろありました。

僕の記憶が正しければ、ジョージア・オキーフはこのハワイでも制作をしていたような。オキーフはハワイ独特の植物を沢山描いていて、それらがレターセットやレプリカポスター、画集になっていてミュージアムショップで購入できます。

ここはワイキキの中心部からは離れているので、帰りには事務所にてタクシーを呼んでもらうと便利です。目の前にはバスラインのバス停もあるので時間に余裕のある方は、そちらでも十分です。

ハワイの 穴場中の穴場です。

このミュージアムの近くには、昔々、ロケーションの時に良く来ていたチャイニーズレストランなどもあり、懐かしく思い出しました。撮影のためにずいぶん前からはハワイには幾度か来ていたのに、こういう文化施設には来る時間もありませんでした。今、思えば何をしていたんだろうと思います。

ホノルルに来て天気の悪い日などは、ここで一日過ごすのもよいものです。これだけ、ゆっくりと作品を見れるところは他には、あまりないと思いますから。

モジリアーニの作品の前には僕ひとりだけでした。ミュージアム全体でも入場者は5人くらいだったでしょうか。

個人的な感想では、今回気に入った作品は、もちろんモジリアーニ。ブラマンク、オキーフ、カッツ、どれも画集ではあまり見かけない作品でなかなかの傑作でした。
 
 


数少ないモジリアーニの裸婦シリーズの1枚がありました。作品的にも素晴らしいです、ホノルルにあったとは。

『ホノルル・ミュージアム・オブ・アート』