Par-delà le Pont – 1 - シュリー橋(Pont Sully)右岸と左岸とサン・ルイ島をつなぐ、公爵ゆかりの橋。

(2010.11.29)

パリを東西に流れるセーヌ川。このセーヌ川に、パリ市内だけで何本の橋(pont)が架かっているかご存知ですか?

答えは、30本です。

セーヌ川を挟んで南北にわかれたパリの右岸(rive droite)と左岸(rive gauche)を繋いだり、川に浮かぶシテ島とサン・ルイ島を右岸や左岸と結んだりと、橋たちは華やかなパリの街の名脇役。

そして橋たちはシックな河岸の風景をバックに、時間帯や季節によって表情を変えながら私たちの目を楽しませてもくれます。

この連載──「Par-delà le Pont(橋の向こう)」では、そんなセーヌ川に架かる30本の橋の、初夏の昼下がりの表情を紹介します。

どうぞよろしく、おつきあいいただけたら嬉しいです。

まずは、シテ島付近の「マレ/シテ島地区」(PONT SULLYからPONT NEUF) の橋を、東から順番に渡っていきますね。

 

さて「マレ/シテ島地区」1回目の今回は、シュリー橋です。

真ん中のサン・ルイ島を挟んで、シュリー橋は右岸と左岸を結ぶ。オーステルリッツ橋から撮影。

フランス国鉄のターミナル駅の一つ、オーステルリッツ駅近くのオーステルリッツ橋から西に二十分ほど歩くと、セーヌ川に浮かぶ2つの島のうち小さな方、サン・ルイ島が見えてきます。このサン・ルイ島の東端で、島と右岸左岸を繋いでいるのが、シュリー橋です。

右岸からシュリー橋を渡ってサン・ルイ島に着くと、いったん橋は途切れます。そして島を数分歩くと、再び左岸と島を繋ぐシュリー橋が現れる、というように橋の途中を島が横切るような具合になっています。

ちなみに右岸とサン・ルイ島をつなぐ橋は”Petit Bras”(小さな腕)、左岸とサン・ルイ島をつなぐ橋は、”Grand Bras”(大きな腕)と呼ばれています。

どちらのシュリー橋も、道幅のわりには交通量があり、静かなサン・ルイ島の中では一番活気にあふれた橋かもしれません。
 

左岸とサン・ルイ島を繋ぐ方のシュリー橋。サン・ルイ島から。
右岸から。対岸はサン・ルイ島。

シュリー橋の前身は歩行者専用の吊り橋で、右岸に架かる方がダミエット歩道橋、左岸に架かる方がコンスタンチーヌ歩道橋、と呼ばれていました。詩人のボードレールが、この橋の近くに住んでいたのは1840年代というので、彼が渡っていたのはこの歩道橋だったのでしょうね。

残念ながら、ダミエット歩道橋は2月革命で壊され、コンスタンチーヌ歩道橋も落下してしまいます。そして、現在のシュリー橋が出来たのは、1876年。「シュリー」は、当時の国王アンリ4世の宰相であり親友でもあった、シュリー公爵の名前から取りました。ちなみにこの「シュリー」橋を右岸に渡ると、そこは「アンリ4世」大通りになっています。さすが親友。

パリの西からセーヌ川をのぼる遊覧船、バトー・ムーシュはこの橋で引き返して、西へ戻っていきます。

ところでこのシュリー橋。サン・ルイ島から右岸に渡ると、古い建物や豪華なお屋敷なんかも残る、閑静なマレ地区。一方、左岸に渡ってそのまま歩くと、ソルボンヌ大学にも近くて学生の多い賑やかな繁華街、ムフタール通り。まったく特徴の違う二つの地区を繋げているんですね。

静と動、両極に見える雰囲気を両方とも素直に受け入れるシュリー橋は、きっと子供みたいに無邪気な橋で、ピュアな明るいエネルギーを人々に送り込んでいるのかもしれませんね。

次回は、ここからサン・ルイ島を西に歩いてマリー橋を渡ります。

 

Pont Sully シュリー橋

竣工:1876年
長さ:256m
幅:20m
建築家:ギュスターヴ・ブロスラン、ポール・ヴォドレー
形式:アーチ橋
素材:鋳鉄
最寄駅:Sully Morland駅(メトロ7号線)
付近の観光スポット:アラブ世界研究所、バスティーユ広場