ヨハン・クリスター・シュッツから
届いた、この夏最高の贈り物。

(2013.07.22)

キャリア最高傑作を携えて

素晴らしい小説や随筆を読んでいる時、ふと思うことがあります。「この作者は私と話したこともないのに、なぜ私の内面を知っているのだろう?」と。心を揺さぶられる音楽に出会ったときも同様で、それが自分の好み、あるいは今欲している旋律やリズムを熟知しているかのような音だったら、嬉しさと幸せな気持ちで胸がいっぱいになります。そして、誰かとその思いを共有したくなるのです。

スウェーデン出身のシンガー・ソングライター、ヨハン・クリスター・シュッツ(以下、ヨハン)の1stアルバム『Passion』を初めて耳にした時、まさにその感覚を抱きました。心の中で沸き立った感動と、新たな才能に出会えたことのへ高揚感は今でもはっきり覚えています。

そしてこの夏、ヨハンから最高の贈り物が届きました。間もなくリリースされる通算5枚目のアルバム『Beautiful Place』は、何度も繰り返し聴きたくなる、キャリア最高傑作といえる作品です。

2004年のデビューから数えること早9年。3rdアルバム『C’est La Vie』をリリースした後、ヨハンは日本人女性との結婚を機に拠点を東京に移しました。国内ミュージシャンとの交流も深め、作曲家・プロデューサーとしても精力的に活動しながら、2011年にPEACEBIRD名義で4thアルバム『Peacebird』をリリース。そして2013年、クレジットも本名に戻して本作『Beautiful Place』を発表。ジャケットからはみ出るほどに大きく書かれた<JOHAN CHRISTER SCHUTZ>そして<BEAUTIFUL PLACE>の手書きの文字からは、彼の本作に対する意気込みが感じられます。

全12曲、優しさと情熱に満ち溢れたヨハンの音楽をまたこうして楽しめることを心より嬉しく思います。

アレンジャーとして躍進したヨハン

まずあまりの素晴らしさに思わず唸ったのが、アルバムの冒頭を飾る「Peace Is The Way」。自宅で一緒に聴いていた妻からも「すごく良い曲!」との声。一度聴いたら忘れられない、どこか郷愁を感じるイントロと、爽やかな口笛の音色が印象的なミディアムテンポなナンバーです。曲の展開やコード進行はいたってオーソドックス。しかし、各楽器の抜き差しや絶妙な音のバランスによってしなやかで心地良いグルーヴが生まれています。ポップソングとしてのクオリティが極めて高く、代表曲「Passion」に勝るとも劣らない出来栄えと言ってよいでしょう。この一曲を聴いただけでも、メロディメーカーとしてだけでなく、プロフェッショナルなポップ職人としての彼の才能を再認識しました。

3曲目の「Peace (Give The People The Power Back)」は、ファンキーなドラム、多幸感溢れるハンドクラップ、ディスコティックなシンセサウンド、そして70年代のニューソウルテイストなコーラスなど、ヨハンの音楽性に新たな基軸が加わったことを感じさせる最高にクールなナンバー。

一方で、「Beautiful Place」や「I Learned To Be Me」などのアコースティックな曲も、いずれもため息が出るほど素敵なものばかり。ヨハンがプロデュースを手がけ、全ての楽器演奏を担当したmamericoのアルバム『minuscule』のように、一つひとつの音をとても繊細に奏で、ゆったりとした贅沢な時間を作り出しています。

長年のファンならご存じの通り、ヨハンは優れたメロディメーカーであると同時に、優れたアレンジャーでもあります。本作で彼は編曲家としての卓越した才能をこれまで以上に発揮し、ボサノヴァ、サンバ、ジャズ、ロック、ソウル、クラブミュージックなどの様々な音楽的要素を丁寧に凝縮しながら、どの曲もハイクオリティなポップミュージックとして見事に昇華しています。特にサウンド面においては、単に通過点としての5作目というよりも、これまでの集大成的な作品といって過言ではありません。

“ピース”に込められた想い

昨年12月、ヨハンは自身初のクリスマスソング「Christmas Time」をリリースしました。耳馴染みの良い普遍的なポップスでありながら、“We Can Change The World”というサブタイトルが示す通り、3.11以降の社会に対する希望が込められたナンバーでした。本作『Beautiful Place』では、「Peace Is The Way」や「Love This World」など、彼がクリスマスソングで心に描いた世界観をよりいっそう近くに感じられるような言葉が作品全体に散りばめられています。

最も印象的だったのは、「Peace (Give The People The Power Back)」のエンディングで反復する“Peace, Peace, Peace…”のフレーズ。彼はこの場面で、“ピース”という言葉にあえて無機質なループサウンドを纏わせています。ややもすると気恥ずかしさを生むその言葉が、彼の抜群の音楽的センスとアレンジによって、強く説得力のあるものへと変貌を遂げた瞬間だと私は思っています。ここに、リアリストとしての逞しいヨハンが垣間見えた気がしてとても嬉しく思いました。

もう一度ジャケットに目をやると、そこにはギターを抱え、照れ臭さそうにちょこんと座る、イメージ通りの物腰柔らかなヨハンの姿がありました。でもはにかむその笑顔は、彼の中に芽生えた確かな自信の裏返しのように思えてなりませんでした。

『Beautiful Place』はこれまでの集大成的作品であると同時に、一皮剥けたヨハンの第二章の始まりである。そんな思いを私は今抱いています。

『Beautiful Place(ビューティフル・プレイス)』

JOHAN CHRISTER SCHUTZヨハン・クリスター・シュッツ
2013年7月28日発売 2,400円(税込み) RCIP-0190
レーベル:IDÉE Records

【Track List】
01. Peace Is The Way
02. Changes Changes
03. Peace (Give The People The Power Back)
04. Piece Of Myself
05. A Smile Will Take You Far
06. From Here
07. Beautiful Place
08. Don’t Fight The Flow
09. I Learned To Be Me
10. Out Of Nowhere
11. Love This World
12. Over The Rainbow

【ヨハン・クリスター・シュッツ ライブ】
イデー・レコーズからのリリースを記念し、イデーショップ 自由が丘店3Fにてスペシャルライヴを開催!
開催日:7月28日(日)
時間:18:00~(17:45開場)
場所:イデーショップ 自由が丘店3F
定員:30名 入場料:2000円(税込)
ご予約:03-5701-7555
*ライブ詳細につきましては、イデーショップ 自由が丘店までお問い合わせください。