Tatiana Parra & Vardan Ovsepian 『Lighthouse』の魅力。時代の声を持つタチアナ・パーハが
ピアニスト、オヴセピアンとデュオ。

(2014.04.28)
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時代の先端をゆくアーティストに求められる「声」

イヴァン・リンスからダニ・グルジェル、アントニオ・ロウレイロ、アカ・セカ・トリオまで。時代の先端をゆくアーティストに求められる「声」タチアナ・パーハの新作がリリースされました。

90年代にキャリアをスタートさせた彼女を大きく成長させたのは、ブラジルを代表するジャズ・ギタリストであるシコ・ピニェイロ作品への参加でしょう。今やブラジルを代表する歌手となったマリア・ヒタ、シコの奥様であり現在のブラジリアン・ジャズ・シーンに欠かせない歌手であるルチアーナ・アルヴェスとともに、彼の1st『MEIA-NOITE MEIO-DIA』に参加。超実力派に囲まれながらも別段の存在感を発揮した彼女は、シコの2nd『シコ・ピニェイロ』にも続けて参加。このあたりから自然とブラジル国内で高い評価を得るようになり、 テオ・ヂ・バホスやゼリ、ファビオ・トーヘス、ルイス・ヒベイロら、実力派アーティスト作品への参加が目立つようになります。

一方でアルゼンチンの音楽シーンとも親交がある彼女はアカ・セカ・トリオのキーボーディスト=アンドレス・ベエウサエルトの作品への参加で、一躍日本の音楽ファンからも高い評価を得るようになります。2010年、まさに名実ともに熟しきったタイミングで、ブラジルのボランダーから初のソロ・アルバム『インテイラ』をリリース。プロデューサーにマルセロ・マリアーノを迎え、セルジオ・サントス、アンドレ・メマーリ、ダニ・グルジェルやコンラード・コイス、アカ・セカ・トリオまで幅広い人脈と作り上げた本作は、この時点での彼女の集大成ともいえる作品となりました。続けてアンドレス・ベエウサエルトとのデュオ・アルバム『Aqui(アキ)』をリリース。まるでショーロのような器楽的かつ歌心溢れるデュオで新境地を開拓しました。その後もアントニオ・ロウレイロの『ソー』、フランソワ・モラン『Naissance(ネッサンス)』、ジュリアーノ・オランダの『A ARTE DE SER INVISIVEL』、アレシャンドリ・アンドレスの『マカシェイラ・フィールズ』といった話題作にもゲスト・ヴォーカルで参加。とりわけここ1~2年の彼女は可憐さに加えて、凄味すら獲得しつつあるとすら感じます。

  • Tatiana Parra
    Tatiana Parra
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21世紀の”響き”を提供する最新作。

歌手としてまさに今ひとつのピークを向かえつつあるタチアナ。そんな彼女の最新作はアルメニア出身で現在はLAで活動するジャズ・ピアニスト、ヴァルダン・オヴセピアンとの完全デュオ・アルバムです。シコ・ピニェイロ作曲の#10、アレシャンドリ・アンドレス&ベルナルド・マラニャオン作詞作曲の#5などのカバーも含みつつ、大半がヴァルダンのオリジナルを中心にした全12曲を収録。先述の『インテイラ』でも2曲のオリジナルを収録するなど実は作曲家/ピアニストとしても高い能力を持つタチアナ、その音楽的素養がなせる業なのでしょう。前作『Aqui』の延長線上にありながらも、スキャットを多用した器楽的なヴォーカルはより自由さを増し、既存のヴォーカル×ピアノ・デュオの枠に収まらない関係性を生み出しています。ブラジル音楽の持つ独特の響きが世界中から求められる昨今、ジャズ、ショーロ、ミニマル、室内楽といった複数のキーワードが同時に連想されるような二人のアンサンブルは、21世紀の音楽シーンに新たな”響き”を提供してくれることとなるでしょう。

Vardan Ovsepian
Vardan Ovsepian

『Lighthouse』
Tatiana Parra/Vardan Ovsepian

オープン価格 レーベル:NRT NRTI-004

【Track List】

01. Louvers (Vardan Ovsepian)
02. Sonho expresso (Keco Brandão/Carlos Saraiva)
03. Chorinho for Tati (Vardan Ovsepian)
04. Trompe l’oeil (Vardan Ovsepian)
05. Um som azul (Alexandre Andrés/Bernardo Maranhão)
06. Parapet (Vardan Ovsepian)
07. Lighthouse (Tatiana Parra/Vardan Ovsepian)
08. Joist 1 (Vardan Ovsepian)
09. That night (Darek Oleszkiewicz)
10. Um filme (Chico Pinheiro)
11. Joist 2 (Vardan Ovsepian)
12. Cantilever (Vardan Ovsepian)