『デシネ・ショップ』オープン。音楽と繋がるライフスタイルの未来。

(2014.08.08)
 
 

レコード、CD、アパレルをはじめ、書籍、グッズ、オーディオまで幅広い商品を取り扱うコンセプト・ショップとして、神戸・栄町で永く愛されてきたディスク・デシネが、この8月8日、装いも新たに『デシネ・ショップ』として東京・渋谷にオープンしました。
渋谷駅西口から徒歩6分、2階建ての新店舗は鶯谷町の閑静な住宅街の中にあります。南に向かえば代官山は、もうすぐそこ。ショップの四方を走る坂道や水路跡の細道からは、さわやかな風が吹き抜けて行きます。

レコード&CD、アパレル販売とともに、音楽レーベル運営を本格化。
スタンスを変えずに、その幅を広げるということ

デシネ・ショップに足を踏み入れた瞬間、まず最初に気がつくのはインテリアと陳列のデザインが神戸時代の店舗を踏襲したものであるということ。フロアと壁面はそれぞれ青と白を基調にしたデシネ・カラー。CDやレコードの飾り棚は作り付けの生成。ショップ・オリジナルのハンガーに吊されたカラフルなウェアが店内をグラフィカルに彩る。

「お店のデザインもそうですけど、好きなものだけを売る店っていうスタンスも神戸時代とまったく一緒やと思います。ただ、その幅をちょっとずつ広げてる感じはありますね。音楽はもちろん、レコードのジャケットのデザインもすごく好き。じゃあ、それに関連したポスターを売ってみたい。かわいい音楽やおしゃれなものが好きやから洋服も、と。わりと自然にやりたいことが増えていっている感じ。ターンテーブルなんかも取り扱ってますし、家具も少しやってみたいブランドがあるんです」。

港街・神戸の気風薫る軽やかなイントネーションでそう語るのは、デシネ・ショップ・オーナーの丸山雅生さん。語り口もそのままに、今回の東京移店に関しても「いろんな偶然が重なっただけ」と、まったく気負いがない。それでも、1階をショップ、2階を自社音楽レーベル『プロダクション・デシネ』のオフィスとして使用できるということが、この場所を最終的に選んだ理由だという。

「神戸内で移店する可能性もあったんですが、結局、東京に決めたのは所属アーティストのプロモーションに力を入れたいという思いが強かったから。実はウチが管理している楽曲をTVや映画、CMに使用したいっていう話がこれまで結構あったんですけど、神戸にいるとそういうことへの対応がスムーズにできなかった。せっかくプロダクション・デシネが日本での窓口になってるのに申し訳なかったなという思いがあるんです。お店の方も今後は自主ブランドのCDや服を中心にコンセプト・ショップとして、より絞り込んだものを提供して行きたいですね」。

クールに、そして綿密にトータライズされた『デシネ』のブランド・イメージ。それを裏付けるように、丸山さんの頭の中には首尾一貫したひとつの思想があるようだ。移店を機に、その想いは加速する。

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音楽レーベル『プロダクション・デシネ』の圧倒的な存在感
未知なる新人の発掘から、ハードディガー驚愕のレア盤リイシューまで

丸山さんはプロダクション・デシネ所属のフレンチ・ポップ・ユニット、エレファンのジャパン・ツアー・プロデュースを7月に終えたばかり。新店舗のプレ・オープンと開業12周年記念を兼ねた7月7日の東京公演も盛況のうちに幕を降ろした。プロダクション・デシネがプロデュースし、リリースするアーティストのCDは実に様々だ。欧米~中南米~アジアの新進シンガー・ソングライターの音盤から、世界に数十枚しかオリジナル盤が存在しないレア音源まで、選盤の幅は多岐にわたる。ハイクオリティな未知の音盤を掘り起こし、着実に製品化して行く手腕と鑑識眼。その極意はどこにあるのだろう。

「販売店として現場の眼で音盤を探しに行った結果ですよね。とにかく自分たちが良いと思ったものを売るっていう考え方しかないんですよ。レーベルを始めたのも、自分がその音楽を売りたいけれどCDが存在しないから、じゃあ作ろうっていう発想。あればもちろん発売元からそれを仕入れて、どんどん売りたいと思う。僕、商品の仕入れを任せるようになったスタッフに必ず言うんですよ。『売れる売れへんの前に自分が絶対感動できて、人に薦められるかどうかで考えなさい。そのことに95%を注力しなさい』ってね。そう思えたらそれを売るのは簡単やからって教える。そこから先はお客さんに判断してもらえばいいんやと思ってるんです。それはプロダクション・デシネの商品にしても他社のCDやレコードについても100%同じ考え方なんですよ」。

実際、ザ・ロイヤリティーズやマリ・ペルセンのCD、ヨーロピアン・ライブラリーの中古アナログ盤など、他社製品~買い付け盤ながらデシネがプッシュした音盤がスマッシュ・ヒットを示す例は枚挙に暇がない。また、マテオ・ストーンマン、ミンディ・グレッドヒル、ヨハン・クリスター・シュッツといった新進のアーティストたちは、プロダクション・デシネからのリリースをきっかけに大型レコードストアでの大展開~メディア露出~ワールドワイド市場への進出と目覚ましい活躍を見せている。既に評価の定まった大物アーティストの日本盤をメインにプロモートしているようなメジャー・カンパニーからすればデシネの存在は異形に映ることだろう。

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アパレル部門『アンサンブル・デシネ』はブランド・オリジナル商品を強化
音楽とファッション、その共鳴し合うテイスト
この春夏からはアンサンブル・デシネ・オリジナルのカーディガンも登場。今冬までにはパンツやシャツなどの新商品も揃い、アパレル・メイカーとしての活動も本格化させる。

「ネット販売の充実はもちろんですが、お店でコミュニケーションをとりながら、実際に商品を手にとって見てもらうのも大切なことやと思ってます。嬉しいのは、洋服を見に来た人に『今かかってる、この曲何ですか?』と訊ねられてCDが売れた時。その逆で、CDを買いにきた人に『この服かわいいですね、試着しても良いですか?』と言われてアパレル商品をご購入いただくこともある。僕としてはこういう現象が本当に嬉しいんですね。お客さんもそういうお店の感じを楽しんでると思う。だから、テイストさえ合えばすごく面白いお店なんだと思うんですよ。CDもレコードも洋服も、扱っている商品に中途半端なものはないですから」と丸山さん。

デシネ・ショップでは、大定番となった『ラ・レーヌ・レネット-LYS』のセーラーブラウスや、フランスの『ジョジョ・メッセンジャー』のバッグなど、有名ブランドながらここでしか購入できない稀少な商品を筆頭に、音楽にゆかりのあるブランドも多く取り揃えている。たとえば、ヨーロピアンカラーのバッグやスカートが人気を集める『ロレアック・メンディアン』はスペインの良質なインディーポップ・レーベル『エレファント』のオーナー、ルイスの親友が経営するブランド。デシネ所属のポップ・バンド、ベイ・ベアーがイメージソングを担当している『ウェイティング・フォー・ザ・サン』は、木製フレームが特徴的なフランスのサングラス専門ブランドだ。音楽、ファッションとかたちは違えど、通底するセンスと『作品=商品』そのものの良さで人々が繋がりあうということ。一見不思議に思えるシンクロニシティも、丸山さんの言うテイストという言葉で、すべて説明がついてしまう。

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『デシネ・ショップ』の提唱するライフスタイルのかたち
そこにあるものすべてが、完全な『サークル』を描く

『プロダクション・デシネ』からは好調なリリースが続いている。宗教系メロウソウル~AORの最高峰、ラサ『エヴリシング・ユー・シー・イズ・ミー』、フリーソウル・フリークをも魅了するラヴァーズ・アルバム『ソニア・スペンス・シングス・ラブ』など、マニア待望のリイシュー作を筆頭に、ブラジルの才気溢れる新進シンガー・ソングライターのデビュー・アルバム『ゼ・マノエウ』、若きMPBアーティストの野心作、ファビオ・カドーレ『インスタンチ』と、そのラインナップの多様さ、ハイペースなリリース・スケジュールには眼を見張るばかりだ。丸山さんは話の最後をこう結ぶ。

「僕、レアなレコードをたくさん知ってる人、なんてよく言われるんですけど、正直そこに何の値打ちがあるのか分からないんですよ。それを自慢する人ですか?って言う。それは本当に格好が悪いこと。中古のレア盤なんて市場にわずかしかないし、レコード・プレイヤーを持っている人しか聴けない。それに中古盤を売っているだけではアーティストや権利者にお金が還元されない訳です。それじゃあ、音楽業界は絶対になりたたない。だから、プロダクション・デシネではちゃんと許諾を受けてそれをCDにしてお客様に提供する。アーティストに利益を還元し、最初にも言ったようにメディアへのプロモーションにも尽力する。そこまでフルに働けるようになったら、仕事として初めて良かったなって思いますね。要は、完全な『サークル』を作ろうとしてるんですよ。やっていることすべてが輪に乗って全部が連動しているというね。洋服やグッズを扱うのも同じことなんです。端と端だけを見れば全然違うことをしているように見えるかもしれないけれど、何ひとつかけ離れたことはやっていない」。

ともすれば、時の狭間に埋没して行ったであろう音楽作品に『光』を与える作業。経済システムをも織り込んだアーティストとリスナーの幸福な関係の構築。その循環には同じ空間で展開されているファッション、グッズ、デザインまでが含まれている。東京・渋谷で再出発した『デシネ・ショップ』。その核には『送り手』と『受け手』が美しい循環円を描く、明確なライフスタイルの提唱があったのだ。

dessinee shop (デシネ・ショップ)

東京都渋谷区鶯谷町17-7 Tel.03-6873-4062
営業時間はカレンダーを参照

プロダクション・デシネ 最新リリース・タイトル
ゼ・マノエウ『ゼ・マノエウ』 2014年3月19日発売2,484円(税込)PDCD-123/VSCD-9454
マノロ・フアレス『ティエンポ・レフレハード』 2014年4月23日発売2,700 円(税込)PDCD-134/VSCD-9465
ジュニア・タッカー『イッツ・ア・スモール、スモール・ワールド』 2014年5月28日発売2,700 円(税込)PDCD-137/VSCD-9468
ファビオ・カドーレ『インスタンチ』 2014年5月28日発売2,484円(税込)PDCD-139/VSCD-9470
ジェイ・オー・ビー・オーケストラ『オープン・ザ・ドアーズ・トゥ・ユア・ハート』 2014年6月25日発売2,700円(税込)PDCD-141/VSCD-9472
ジト・ヒギ・イ・セウ・コンジュント『アルシノランディア』 2014年6月25日発売2,700円(税込)PDSF-143/VSCD-9474
パウル・ウェイネル・ジャズ・カルテット『スピラーレ』 2014年7月9日発売2,700円(税込)PDCD-145/VSCD-9476
ラサ『エヴリシング・ユー・シー・イズ・ミー』 2014年7月9日発売2,700円(税込)PDCD-140/VSCD-9471
ソニア・スペンス『ソニア・スペンス・シングス・ラブ』 2014年8月20日発売2,700円(税込)PDCD-146/VSCD-9477
ヴォイセズ・オブ・ダークネス『ヴォイセズ・オブ・ダークネス』 2014年8月20日発売2,700円(税込)PDSF-142/VSCD-9473
ピエール・ニコライエフ『リベルテ・シェリー』 2014年9月17日発売2,592円(税込)PDCD-147/VSCD-9478