Another Quiet Corner Vol. 25
9/2〜4エンリコ・ピエラヌンツィ来日、9/4『寄り添う音、重なる想い』発売
エンリコ・ピエラヌンツィ来日と
ピアノ&ヴォーカルの新コンピ

(2013.08.23)

秋の気配を感じたら、耳を傾けたくなる柔らかいピアノの音色。
Quiet Cornerでおなじみイタリアの名ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィが、
9年を経てようやく2度目の来日をします。ライブの日に発売されるのは、
ピエラヌンツィの楽曲こそ入っていないけれど、同じ繊細さとエレガントさを纏っている
ピアニストたちと優しいタッチに寄り添う柔らかなヴォーカル、
ピアノ&ヴォーカルをフィーチャーしたコンピレーション『寄り添う音、重なる想い』。
優雅で気品のある9月初旬のお楽しみを届けます。
【Live情報】9/2-4 エンリコ・ピエラヌンツィ in コットンクラブ

9月、エンリコ・ピエラヌンツィが待望の来日!

「どうしても観ておきたいピアニストは?」と聞かれたら、真っ先に名前を挙げたいのがエンリコ・ピエランヌンツィです。彼は以前このコラムでも紹介したことがあるイタリアの有名なジャズ・ピアニスト。ピエラヌンツィは2004年に一度来日していますが、残念ながらその機会を逃してしまい、その後長らく待ちわびていました。2011年に2度目の来日公演が予定されましたが、東日本大震災の影響で中止に……。その待望の2度目の来日公演が、まもなく実現されるのです。しかもピアノ・トリオでの演奏なので、きっと多くのファンが歓喜していることでしょう。

ブラッド・メルドー・トリオでもおなじみのラリー・グレナディア(ベース)とジェフ・バラード(ドラム)という一流のプレイヤーを従えて、ピエラヌンツィは一体どんな演奏を聴かせてくれるのか、とても楽しみです。“エヴァンス後継者”などと言われながらも、実は多彩なスタイルをもつピエラヌンツィ。僕が好きな彼の演奏は決まって繊細で、そして静かな情熱を宿しています。来日公演に向けて、彼のピアノ・トリオの作品を聴くのはもちろん十分な予習になりますが、ここではクワイエット・コーナーのフィルターを通して、あえて彼の知られざる作品にスポットを当てたいと思います。

隠れた名作『Racconti Mediterranei』と『OSLO』

まずは、イタリアのEGEAレーベルに残した『Racconti Mediterranei』。これは、ベースにマーク・ジョンソン、クラリネット奏者にガブリエル・ミラバッシを迎えた作品で、EGEAらしいとても優雅で気品のある室内楽が特徴的であり、ドラムレス・トリオという編成もユニークですし、ここでのピエランヌンツィは終始、ゆったりとしたピアノ・タッチを聴かせてくれます。

そしてもう一枚は、ピエラヌンツィのリーダー作ではありませんが、ぜひファンには聴いていただきたい一枚です。ノルウェーのベーシスト、テリエ・ゲヴェルの『OSLO』です。テリエは同郷のピアニスト、ダグ・アルネセンのトリオ・メンバーとしても知られている北欧を代表するベーシストです。ここでのピエラヌンツィの演奏はサポートながらも、実に存在感が光っています。タイトル曲での、テリエのベース音に彼のなめらかなタッチが寄り添う瞬間なんて! まさに至福といえるでしょう。9月2日からコットンクラブではじまるステージでも、ピエラヌンツィのピアノ、そしてラリーのベース、ジェフのドラムが、どんな素晴らしいハーモニーを生むのか、僕もこの目で、耳で確かめたいと思います。


Racconti Mediterranei / Enrico Pieranunzi, Marc Johnson, Gabriele Mirabassi

Oslo / Terje Gewelt, Enrico Pieranunzi, Anders Kjellberg
「ピアノとヴォーカルが織りなす美しい調和」を掲げたコンピレーション。

さて今日はもう一枚、素敵なピアノつながりで紹介したいコンピレーションがあります。それはクワイエット・コーナーのコンピ・シリーズ第6弾『寄り添う音、重なる想い』です。これは昨年に発売された『Pastoral Tone』の続編的な内容であり、“ピアノとヴォーカルが織りなす美しい調和”をテーマに掲げて選曲した一枚です。クワイエット・コーナーでもおなじみのジョー・バルビエリやグレッチェン・パーラトといったヴォーカル曲、そしてトリオセンスのようなピエラヌンツィ・ファンにもおすすめのピアノ・トリオ、さらにはフランスのサラヴァ・レーベルの楽曲を織り交ぜながら、全編にわたって落ち着いた大人の雰囲気を醸し出しています。

今回一番の目玉は、サラ・ガザレクによる人気曲「Blackbird / Bye Bye Blackbird」のセルフ・カヴァー。なんとこのコンピだけでしか聴くことができません。なぜなら…コンピを制作するにあたり「サラの特別曲を収録したい」と考えていて、今年5月のサラの来日公演の際に、彼女の楽屋を訪れて熱烈にオファーをしたのです!

それから2カ月後、送られてきた音源を聴いて感激してしまいました。ジョシュ・ネルソンのピアノの音に、そっと重なる彼女の歌声は、まさにこのコンピのテーマにぴったりだったのです。ヴォーカルは8年前のオリジナル・ヴァージョンよりもさらに深みを増し、ピアノとのデュオだからこそ伝わってくる親密な距離感もまた今の時代に相応しいかと思います。深まる秋の色を感じいただけるコンピに仕上がりましたので、ぜひ多くの人に聴いていただければうれしいです。

寄り添う音、重なる想い。 V.A.
Graceful Harmony – Piano and Vocal
2013年9月4日発売 2,300円(税込) YMCJ-10019
選曲:山本勇樹 レーベル:ヤマハミュージックアンドビジュアルズ

【Track List】
01. ブラックバード / バイ・バイ・ブラックバード(Quiet Corner Version)/サラ・ガザレク&ジョシュ・ネルソン (piano : Josh Nelson / vocal : Sara Gazarek)
02. ナウ・アット・ラスト/ジョー・バルビエリ (vocal : Joe Barbieri / piano : Antonio Fresa)
03. ラヴ・マークス/フルーリーン (vocal : Fleurine / piano : Brad Mehldau)
04. サマー・レイン/トリオセンス(piano : Bernhard Schuler)
05. プラ・マシュカール・メウ・コラソン/ピーター・エルドリッジ(vocal & piano : Peter Eldridge)
06. ドビュッシー/アラム・セダフィアン(vocal : Aram Sédèfian, synthesizer : Jean-Pierre Auffrédo)
07. ラ・トゥール・デゥ・ネル/ピエール・バルー(vocal : Pierre Barouh / piano : Maurice Vender)
08. アワ・デイ・ウィル・カム/アーメン・ドネリアン(piano : Armen Donelian)
09. ウィーン・ブルース/ローリー・アントニオーリ(vocal : Laurie Antonioli / piano : Matt Clark)
10. ソングス・アンド・ララバイズ/フレッド・ハーシュ(vocal : Norman Winstone / piano : Fred Hersch)
11. ベター・ザン/グレッチェン・パーラト(vocal : Gretchen Parlato / piano, rhodes, hammond : Taylor Eigsti)
12. ニカズ・ドリーム/ロマン・コリン(piano : Romain Collin)
13. ウィル・ユー・スティル・ラヴ・ミー・トゥモロウ/クリスティーン&リアム(vocal : Christine Tobin / piano : Liam Noble)
14. イエスタデイ/ルネ・ユルトルジェ(piano : René Urtrege)
15. サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム/メレディス・ダンブロッジオ(vocal & piano : Meredith d’Ambrosio)
16. ブリッジ・オーヴァー・トラブルド・ウォーター/マット・ウィルソン(piano : Gary Versace)
17. ムーン・リヴァー/メリッサ・スティリアヌ(vocal : Melissa Stylianou / piano : Jamie Reynolds)


【Live情報】
2013. 9.2.mon – 9.4.wed
ENRICO PIERANUNZI TRIO(エンリコ・ピエラヌンツィ・トリオ)
MEMBER:Enrico Pieranunzi (p), Larry Grenadier (b), Jeff Ballard (ds)
[1st.show] open 17:00 / start 18:30 [2nd.show] open 20:00 / start 21:00
会場:コットンクラブ
CHARGE:自由席8,400円(税込)〜
予約: コットンクラブ ホームページ から

Another Quiet Cornerとは

このコラムはHMVフリーペーパー『Quiet Corner』編集長・山本勇樹さんが、『Quiet Corner』で書ききれなかった音楽を伝えてくれる連載です。2009年HMV渋谷店にできた「心を静かに鎮めてくれる豊潤な音楽」をジャンルや国籍に関係なくセレクトした伝説の売り場「素晴らしきメランコリーの世界」が、アルゼンチンの音楽家カルロス・アギーレと共鳴する音楽を聴くというbar buenos aires選曲イベントへと繋がりました。イベントごとにつくられた幻のフリーペーパー『素晴らしきメランコリーの世界』が、2011年春「Quiet Corner」と名前を変え、同じコンセプトで静かだけではない豊かでQuietな音楽を紹介し続けています。