アコースティック・ポップスの新星、マルコマルシェに魅せられて。

(2015.12.19)

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2015年、インドネシアで産まれた新たな才能に出逢う。

12月に再来日公演を行ったシンガー・ソングライター、アディティア・ソフィアン。2011年に彼がアルバム『Quiet Down』で日本に初めて紹介されたとき、それがインドネシアから届けられた音楽だということに非常に驚いたのをよく憶えています。それまで私がインドネシアに抱いていた音楽的イメージといえば、南国特有の熱気に満ちたロックやダンス・ミュージック、あるいは伝統的な大衆音楽であるクロンチョンでした。しかし『Quiet Down』から聴こえてきたのは、アコースティック・ギター1本による、とても繊細で洗練されたベッドルーム・ミュージック。彼の地に対する印象が一変した瞬間でした。

あれから4年。アディティア・ソフィアンと同じインドネシアで産まれた、一枚の優れたポップアルバムをご紹介します。マルコマルシェのデビュー作『ウォーム・ハウス』。今年2月に現地で発表されたこのアルバムが、11月に日本国内盤としてリリースされました。センシティブでフォーキーで歌心溢れる作品です。

このアルバムが現地で発売されてすぐ、インターネットを通じて偶然本作を耳にした私と妻は、マルコマルシェの音楽に心から感動し、もっと沢山の人に聴いて欲しいという思いに駆られました。そこで私たちはその輸入盤を現地から取り寄せ、福岡市内のいくつかの店舗で委託販売を行いました。聴いてくださった方々の反応はみな好評で、ありがたいことに仕入れた分は程なくして完売。しかし取り扱いが僅かな枚数だったこともあり、個人で展開するには限界を感じていたのですが、このたび国内盤として全国流通されることになり、より多くのリスナーの耳に届くようになったことをたいへんうれしく思います。

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フォーキーな暖かさに包まれた『ウォーム・ハウス』の世界観。

マルコマルシェは、インドネシアの首都ジャカルタで活動する男女のアコースティック・デュオです。上品さを兼ね備えたキュートな歌声のAsterina、マイルドで人懐っこい歌声のDuta。デュオ結成以前は各々ギタリストとしてキャリアを積んできたそうです。とあるイベント会場で出逢った彼らは意気投合し、2013年にマルコマルシェを結成。2014年から『ウォーム・ハウス』の制作をスタートしました。

収録されているナンバーはどれも新人らしからぬ完成度があります。研ぎ澄まされたギターのアルペジオが印象的なアルバム冒頭の「A Song of Us」や、クールなバンド・アンサンブルが心地良い「Special Lovely Way」、人生における希望を歌にしたインドネシア語のナンバー「Senja Dan Mentari」。いずれも彼らの抜群のメロディセンスと卓越したギタープレイを堪能できる楽曲たちです。後半には「Oh Why」や「I Was The Sunshine」といったポップでより温かみのあるナンバーも収録されており、幅広い音楽的下地も感じることができます。そして彼らの息の合ったハーモニー・ワークも、『ウォーム・ハウス』の音楽性の軸のひとつと言ってよいでしょう。

このアルバムを聴いて想起するのは、キングス・オブ・コンヴィニエンスやエヴリシング・バット・ザ・ガールといった面々が残した、アコースティックなギターポップの名作群です。素朴と洗練の絶妙なバランス。作品全体に広がる切ない空気感。親しみ易いメロディーライン。時を経ても色褪せない、普遍的なポップ・ミュージックが携えるマジカルな輝きが本作にも宿っています。

高湿で熱帯的な南国の暑さではなく、北欧産の薪ストーブのようなナチュラルな暖かさ。『ウォーム・ハウス』というアルバム・タイトルもぴったりです。日増しに寒くなるこの季節、マルコマルシェの二人が奏でる、親密でハートウォーミングな世界観をぜひ感じてください。

 

マルコマルシェ『ウォーム・ハウス』
2015年11月22日発売 2,180円(税別) RCIP-0229
発売元:Demajors / インパートメント

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【Track List】
01. A Song of Us
02. Warm House
03. Special Lovely Way
04. Senja Dan Mentari
05. Thin Line Between
06. Oh Why
07. Buaian Dansa
08. I Was The Sunshine
09. You And Your Shadows