色を聴き、音を見る

ダスティン・オハロラン初来日

(2012.06.22)

モダン・クラシカルの街ベルリン

「Quiet Is The New Loud」……ベルリンの『Time Out』誌は、かの地に現在興隆するモダン・クラシカルと呼ばれる音楽シーンをこのようなことばで紹介しました。これはキングス・オブ・コンヴィニエンスの名作のタイトルからの引用ですが、ベルリンに集う新進気鋭の音楽家たちの強固な意志を的確に切り取っていると思います。そして、昨今、意欲的な新作をリリースしたピーター・ブロデリックとニルス・フラーム、グレッグ・ヘインズといった20代の若い音楽家たちが昨年ベルリンから立て続けに来日し、高い評価を得ましたが、彼らにつづき、ダスティン・オハロランという才能豊かなピアニストの来日ツアーが9月におこなわれることが決定しました。ほんとうは昨年の4月に開催されるはずでしたが、震災の影響で残念ながら延期していました。それから随分と時間がたってしまいましたが、こうして彼の来日ツアーをご案内できることをうれしく思います。

ソフィア・コッポラも認めた作曲家

ダスティン・オハロランはベルリン在住のアメリカ人作曲家/ピアニストです。元々は、女性シンガーのサラ・ローヴとのプロジェクト、デヴィックスの一員としてその活動をスタートさせています。90年後半にデビューし、これまでに数枚のアルバムをリリースしています。そんな彼がソロ・アーティストに転身したのは2004年のことで、ソロ・ピアノ作品『Piano Solos』をリリースし、その後、2006年には2作目のソロ・ピアノ作品『Piano Solos Vol. 2』をリリース。これらの作品には映画監督ソフィア・コッポラの依頼で作曲した『マリー・アントワネット』(2006年公開/日本公開は2007 年)のためのスコアも含まれています。この仕事をきっかけに彼の知名度は世界的に広まり、2011年のサンダンス映画祭でグランプリである審査員特別賞を受賞したドレイク・ドレマス監督作品『Like Crazy』(日本未公開)をはじめ、数本の映画のスコアを手がけています。ダコタ・ファニング主演『Now Is Good(原題)』ほか、彼がスコアを担当した映画作品が今後いくつか公開を控えており、いまもっとも注目される作曲家のひとりだと言えます。

ロック・バンドあがりのピアニスト

2011年はダスティン・オハロランにとって飛躍の年でした。前述のソロ・ピアノ2作品が『Piano Solos Vol. 1 & 2』としてセットになって日本限定で再発。イギリスの老舗レーベル、ファット・キャット・レコーズのオーケストラ・ミュージック部門「130701」よ り、オーケストラと共演したソロ・アルバム『Lumiere』と、ベルリンでの教会でのライヴ・レコーディング『Vorleben』(再発盤)を立て続けにリリース。さらにアメリカのアンビエント・ユニット、スターズ・オブ・ザ・リッドのアダム・ウィルツィーとのプロジェクト、ア・ウイングド・ヴィクト リー・フォー・ザ・サルンのデビュー作もリリースするなど、その活躍はとどまるところをしりませんでした(そのおかげで来日ツアーの再編成が遅れてしまったわけですが……)。ピアノは彼にとって最初に手にした楽器ですが、唯一の楽器というわけではありません。クラシック音楽を専門的に学んだ音楽家ではないという事実は少し意外ですが、ずっとインディー・ロック・バンドのギタリスト/キーボーディストとしてキャリアを重ねてきた彼にはピアノ音楽はとても私的で親密なものであり、最初のソロ作品をリリースするときはためらいをおぼえたと言います。学校での教育を受けた経験がないことが逆に創造性の面で型にはまらないで良い作用をもたらすことを自覚した彼の音楽は、メロディーが持つ強さという、ポップ・ミュージックのバックグラウンドからクラシック音楽にアプローチしているため、彼の音楽の柔らかなぬくもりはとても独特で親しみやすいものです。

絵画のように音楽を奏でる

ダスティン・オハロランは「音に色を感じる」共感覚者だそうです。彼の作曲のアプローチはちょうど画家がキャンヴァスに色やテクスチャーを加え、配置していくのと似ており、共感覚が自らの表現により自由を与えることに寄与しているのだと彼は語っています。彼の音楽が色彩豊かで華やかだと感じられるのはもしかしたらそのせいなのかもしれませんね。すでに夏が去り、街の色が変わっていく9月末、初めて日本の地を踏むダスティン・オハロランのピアノはどのような色を奏でるでしょうか。会場として選ばれたのは代々木上原のMUSICASA、神戸の旧グッゲンハイム邸、そして永福町のsonorium。いずれもこれ以上のない美しい会場です。共感覚者だと言われているロシアの画家カンディンスキーの作品を見たオハロランが「まるでオーケストラのよう」だと感じたように、わたしたちの目には彼の「音」がどのように「見える」のか、まだまだ先のことですが想像するだけで心がおどります。

 

Dustin O’Halloran Japan Tour 2012

2012年9月26日(水)18:30開場 / 19:00開演
会場:代々木上原 MUSICASA
料金:予約 4,000円 / 当日 4,500円 ※120名限定

2012年9月29日(土)18:30開場 / 19:00開演
会場:神戸 旧グッゲンハイム邸

料金:予約 3,500円 / 当日 4,000円 ※50名限定

2012年9月30日(日)18:00開場 / 18:30開演
会場:永福町 sonorium

料金:予約 4,000円 / 当日 4,500円 ※80名様限定


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