橋本徹さんの最新コンピレイション、8月8日リリース!爽快感とロマンティシズムあふれる
『Urban-Resort FM 78.4』

(2013.08.01)

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サマー・カクテルを飲みながら味わいたくなるような音楽。

昨年夏の『Seaside FM 80.4』、今年4月にリリースされた『Twilight FM 79.4』に続く、橋本徹さんの最新コンピレイションは、題して『Urban-Resort FM 78.4』。今回のテーマである「アーバン・リゾート」という単語に、ちょっと洗練された大人の感覚を感じますよね。真っ白なリゾート・ホテル、リネンのドレス、濃い色のサングラス、プールサイドから見る夜景……。10代の頃、さまざまな音楽や映画を通じて憧れた世界。何かとイヴェントなども多い夏という季節のムードも手伝って、少し背伸びをするような、そして晴れた夏の朝の空気を吸い込むような――。

そんな何かが起こりそうな青春時代の気分を呼び起こしてくれるブロウ・モンキーズのセルフ・カヴァー①がコンピレイションのオープナー。ギターのコード・カッティングと蒼さを感じさせる歌声が聞こえてきた瞬間に、胸が高鳴ります。今作には④のベン・ワット・カヴァーなど、ネオアコ好きならずとも反応してしまうに違いない曲も多く収められています。①から、ドラマティックなピアノのイントロから疾走感と高揚感に満ちた展開が素晴らしいA・トレイン、必殺の②への流れはたまりませんね。心を掴まれる、という形容がぴったりだと思います。山下達郎ファンにもぜひ聴いてほしいです。続くエレメンツ・オブ・ライフのピースフルで爽やかなブラジリアン・ハウス③には、思わず身体が反応してしまいますね。僕はフリー・ソウル世代の人間なので、レコード棚の奥にあるニューヨリカン・ソウルの12インチを探したくなってしまいました(笑)。コンピレイションの前半部分は、そんな爽快な曲たちが並んでいます。こんな場面に似合うサマー・カクテルはと言えば、王道ですがモスコミュールでしょうか。ジンジャーエールとライムの爽やかさがぴったりだと思います。
 

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コンピの中盤、アダム・ダニングがクリス・デランノとエレガントなデュエットを聴かせる“海からのサンバ”⑥、マイケル・ジャクソンのエピックからのファースト・アルバムに収録されていたアーバン・クラシックのジャジーなカヴァー⑦は、どちらもシックなボッサ解釈に心奪われる仕上がり。生楽器のサウンドが心地よいアクセントになっています。『Urban-Resort FM 78.4』にはニール・ヤングの「Harvest Moon」を意外な形で、しかしとても魅力的にカヴァーした⑤など、ダビーな快感が気持ちよいエレクトロニックなアレンジの曲も収められているのですが、それらがアコースティックな曲と時には融け合いながら、時にはコントラストを生みながら一つの世界を作り出しているところに、橋本さんの選曲の妙を改めて感じざるを得ません。

4ヒーローのマーク・マックによるヴィジョネアーズの⑨から、『Seaside FM 80.4』でもたおやかな歌声を聞かせてくれていたパトリシア・マルクスのアーバン・ソウル⑩、潮の香りの似合うスモーキーな歌声が沁みる⑪、プラグ・リサーチから昨年リリースされた名盤『Just Visiting』からのデイモン・アーロンを迎えてのチルアウト・ナンバー⑫、クアドロンのココ・Oがメロウ・ドリーミンなヴォーカルをとる⑮あたりは、「僕の考えるアーバン」のイメージそのままです。甘美に揺れるエレピが連なるところも僕好みですね。黄昏ていく海を眺めながら、ミントの効いたモヒートが飲みたくなってきます。


左:Anthony Valadez / Just Visiting
右:Quadron / Avalanche
ライ~シャーデー的な2013年のアーバン感覚。

今年の上半期、大きな話題となったライ(Rhye)周辺の音源についても触れておかなくてはいけませんね。ライはマイク・ミロシュ(歌っているのは彼です)とロビン・ハンニバルの二人組ユニットなのですが、ラストの3曲はロビンの別プロジェクトや盟友たちがそれぞれ関係しています。先述した⑮は、ロビンとともにブーム・クラップ・バチェラーズに在籍したロニ・ヴィンダールのサウンド・メイキングが光っていて、歌はやはり彼とクアドロンを組むココ・O。クアドロンは先日リリースされたニュー・アルバム『Avalanche』も素晴らしかったので、ぜひ併せてお勧めしておきたいと思います。続くビーチ・ボーイズ『Pet Sounds』の名曲中の名曲が浮遊感に満ちたアレンジでリメイクされている⑯、これもロビンのユニット、オウス&ハンニバルの作品です。そしてフィリップ・オウスの、熱帯夜の中に溶けていくようなソウルフルな歌声が絶品の⑰で、ロマンティックなこのコンピは幕を閉じます。

ライはマイク・ミロシュのセンシュアルなヴォーカルのために、登場した当初「男シャーデー」という形容をよくされていましたが、友人にライを紹介するときにこの形容を使うと、みんなから「それ良さそうだね、聴いてみたい」という反応が返ってきました。また、先ほど紹介したクアドロン『Avalanche』のジャケットには、黒をバックにして白いドレス、そして黒髪と真っ赤な口紅が印象的なココ・Oの姿がありました。これを見た瞬間に、僕はすぐにシャーデー・アデュのことを連想しました。これらのことで、シャーデーがアーバン・ミュージックの定番としての人気を誇っていることを改めて痛感させられました。ライのサウンドは1992年の『Love Deluxe』あたりがモデルになっていると感じますが(官能的なジャケも共通性を持っています)、どれか一枚には絞りきれないので、これまでに出た6枚すべてのアルバムを推薦しておきます(ほぼ30年に及ぶキャリアの中で6枚しかリリースしていないというところにも、彼女たちの美学を感じますね)。さて、ライ~シャーデーを聴きながら飲みたいカクテルは何でしょうか。カンパリオレンジ? ピニャコラーダ? それともフローズンダイキリでしょうか? ……いや、ファジーネーブルです。なぜかと言うと、クアドロンの「Neverland」の歌詞に登場するんですね。冗談はともかく、『Urban-Resort FM 78.4』とここに挙げたアルバムで、アーバンな2013年の夏をお過ごしください。


左:Rhye / Woman
右:Sade / Love Deluxe

V.A.『Urban-Resort FM 78.4』
選曲・監修:橋本徹(SUBURBIA)
2013年8月8日(木)発売 2,400円
レーベル:アプレミディ・レコーズ

【Track List】
01. Digging Your Scene (Acoustic Version) / The Blow Monkeys
02. Baby Please / A Train
03. Most Beautiful / Elements Of Life
04. North Marine Drive / Manuel Bienvenu
05. Harvest Moon / Poolside
06. Samba From The Sea / Adam Dunning with Cris Delanno & David Feldman
07. Rock With You / Fabiana Passoni
08. It Takes Two / Dylan Mondegreen
09. Back In Time / Visioneers feat. Baron & Trac
10. Melody Of Love / Patricia Marx
11. Weight Of The World / Gabriel Tajeu
12. Walking Away / Anthony Valadez feat. Damon Aaron
13. Waiting In Vain / Halie Loren
14. Renee / Gianluca Lusi – Joel Holmes
15. Head Over Heels / Vindahl feat. Coco
16. Caroline No / Owusu & Hannibal
17. Goodnight / Philip Owusu