ワインと音楽をつなぐ『BEAU PAYSAGE Pinot Noir 2015』CDブック。

(2015.11.29)

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ワインと音楽をつなぐ新しいコンピレーションCDブックが誕生。これは山梨県津金で自然なワインを造る『ボーペイサージュ』のピノノワールをイメージして、bar buenos airesの吉本宏さんが選曲をしたコンピレーションアルバムで、ブックには『ボーペイサージュ』岡本英史さんによる書き下ろしの文章が掲載されています。このCDブックは、岡本さんが始めた「バタフライ・プロジェクト」のサポートのためにつくられたものです。

ピノノワールから聴こえる音楽。 

そのワインを初めて飲んだときに感じたのは、奥ゆかしく可憐なイメージでした。淡く透ける色合いのボーペイサージュのピノノワールを口にふくむと、優しい香りが広がり、その土地の自然を凝縮したような繊細な味わいが広がります。

ボーペイサージュ津金の畑
ボーペイサージュ津金の畑

ボーペイサージュは、1999年に岡本英史さんが山梨県の北杜市の津金で始めたワイナリーで、その土地の自然をそのまま写したワインを造りたいと、畑では農薬などを使わず、収穫や仕込みなどもすべて手造りの方法で行っています。そんな岡本さんにとってピノノワールというぶどうは特別な品種だといいます。今回のCD『BEAU PAYSAGE Pinot Noir 2015』は、岡本さんの造る優しく透明感のあるピノノワールをイメージして楽曲を選びました。

ピノノワールは単一で仕込まれることが多いことからピアノに喩えられることがあります。オープニングに迎えたのは、ウクライナのキエフ・アコースティック・トリオのピアニスト、パブロ・シェペタによるソロ・ピアノです。この曲は、2011年のボーペイサージュ・ピノノワールがイメージのもとになっています。その年のぶどうは台風の影響もありアルコール度数が上がりにくく、とても淡い味わいに仕上がりました。しかし岡本さんは、その味わいを「薄墨桜」に喩え、津金の土地の自然や気候をそのまま写したものを造りたいということを話してくれました。パブロの弾く奥ゆかしく優しいピアノはチャーミングなピノノワールの表情を確かに映していると思います。

続くアルゼンチンのオラシオ・ブルゴスのギターが持つ透明感は、光をかざすと淡く透けるワインの色合いに重ね合わせることができます。さらに、イタリアのダニエレ・ディ・ボナヴェンチュラのバンドネオンの音は、ぶどう畑を吹き抜ける風を感じさせ、ドイツのトヴィアス・ヴィルデンのギターのひんやりとした音色は、ワインが時を経て熟成をする静かなワイン・カーヴで響くように聴こえてきます。このようにしてワインと音楽の連想ゲームは続きます。ボーペイサージュのワインに感じる優しさは、オーストラリアのピアニスト、トニー・グールドが娘のイルカに捧げた可憐なピアノのワルツにも表れているのではないでしょうか。岡本さんがぶどうに込める気持ちは、子供を思う親の気持ちにも通じるものがあります。

Moment / Kiev Acoustic Trio
Moment / Kiev Acoustic Trio

Celebracion / Horacio Burgos
Celebracion / Horacio Burgos

A Pass to Open Air / Tobias Wilden
A Pass to Open Air / Tobias Wilden

The Lucky Ones / Tony Gould
The Lucky Ones / Tony Gould
 
小さな蝶の羽ばたきから広がってほしい「バタフライ・プロジェクト」。

このCDは、岡本さんがかつて自分がワインの仕込みのときに使った原料に疑問を持ったことをきっかけに始めた「バタフライ・プロジェクト」の活動の支援のためにつくられました。「バタフライ・プロジェクト」とは、その食べ物が「誰が、どういう考えで、どのようにつくられたのか」を、誰でも簡単に分かるようにしようという活動です。

ボーペイサージュの畑を何度か訪れ、これまでの驚くほどの試行錯誤を繰り返したワイン造りの話を聞くと、なぜ彼のワインが多くの人を魅了するのかが分かります。じっくりと言葉を探しながら自分のワイン造りについての想いを誠実に語る岡本さんの話からは、すべてが実体験から生まれた哲学であることが伝わり、ワインは自然がつくるものであると同時に、やはり人が造るものだということに気づかされました。

岡本さんの造る繊細で優しいワインや、素材の味を引き出した素朴な味わいの料理、ゆっくりと熟成したチーズや優しい灯りなど、自然に寄り添ってつくり上げられたものは、体に心地よくすっと入り込んできます。音楽も同じく聴き続けるうちにじんわりと沁み入り、長く聴き続けられるものがあります。こうした派手さはないものの、ゆっくりとその良さに気づいていくものというのは、いつまでも暮らしの中に寄り添っていけることでしょう。

吉田牧場のチーズ
吉田牧場のチーズ

今回のCDブックの中には、それぞれの分野で同じような考えで仕事をされている方のコラムを読むことができます。このCDブックがワインと音楽だけでなく、さまざまな分野で活動をする人たちをつなぐ橋渡しになり、多くの人に食についてあらためて関心をもっていただき、自分の暮らしにとってほんとうに大切なものは何かということを見つめ直すきっかけになってくれればいいと思います。“バタフライ・エフェクト”という言葉があるように、小さな蝶の羽ばたきが、いつしかハリケーンのように大きな力を持つことを願っています。

V.A.『BEAU PAYSAGE Pinot Noir 2015』
選曲:吉本宏
2015年11月29日発売 2,700円(税別) rm001
レーベル : resonance music

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【Track List】
01. Night Song / Kiev Acoustic Trio
02. La Fuente / Horacio Burgos
03. Waiting for Her / Jean-Louis Rassinfosse Jean-Philippe Collard-Neven
04. Orizzonte / Daniele di Bonaventura Vertere String Quartet
05. Zamba Para Carolina / Juan Carlos Ingaramo
06. Tulum / Klaus Mueller
07. Daybreak / Tobias Wilden
08. Alfie / Joanna Eden Trio
09. Nocturne / Søren Bebe Trio
10. Luiza / Brazilian Trio
11. Reflexão / Duo Taufic
12. Mini Waltz for Iluka Annie / Tony Gould
13. Landscape With A Fairy / Aspidistrafly
14. 3 Februari / Musette
15. Canción de Cuna Costera / Carlos Aguirre

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