メランコリックなピアノが
私たちをしあわせにする。

(2011.11.08)

イタリアの芸術都市マントヴァの遅咲きのピアニスト。

「作品に対して言葉なんていらないときもある。私は自分の音楽をただ共有したいだけだ。そこには感情とイメージが生まれるから」と、イタリアのマントヴァのピアニスト、ファブリツィオ・パテルリーニはきょうもインターネット上に新しい作品を発表しています。

現在、彼が取り組んでいるプロジェクト「Autumn Stories」は彼がもっとも愛する秋というメランコリックな季節から生まれる感情を込めた新曲を毎週1曲ずつ、3カ月に渡って発表していくというもの。それらは彼のSoundCloudからフリーでダウンロードすることが可能で、さらにクリエイティヴ・コモンズのライセンスが付与されているため、このプロジェクトの楽曲は自由に配布し、共有できます。

現在38歳のファブリツィオ・パテルリーニは6歳よりピアノをはじめ、1990年代にはロックやジャズ・バンドで活動していましたが、作曲をはじめたのは90年代のおわりごろで、ソロ・デビューは2007年という遅咲きのピアニスト。上記のとおり、SNSなどを利用して近年積極的にみずからの表現を発信していますが、日本ではなぜか全く無名の存在でした。モダン・クラシカル、ネオ・クラシカル、あるいはポスト・クラシカルという名のジャンル(お好きな名称をお使いください)が日本人の感覚にフィットしているのは、ここ数年、そういった音楽を紹介しつづけてきたディストリビューター/レーベルとしての実感ですが、だからこそファブリツィオ・パテルリーニのピアノをより多くの方々に知ってもらいたいという思いから、今回彼の作品をリリースすることにしたのです。

幻の逸品が再発。

日本デビューとなる本作は、『Fragments Found』という2010年リリースの3rdアルバムと、『Viandanze』という2009年リリースの2ndアルバムをセットにした日本独自盤。オーストラリアのグラフィック・チームWe Are Synapseによる印象的なイラストレーションがとても愛らしいです。『Fragments Found』の方は元々デジタル・オンリー・リリースだったので、今回初CD化、また『Viandanze』の方はCDでも出ていましたがすでに廃盤だったので今回が待望の再発となります。

パテルリーニのピアノは、インプロヴィゼーションによる『Fragments Found』であろうと、コンポジションである『Viandanze』であろうと、いずれもシンプルなメロディーのなかに深い叙情性と物語性が宿っています。この世界のなかに美しいものを見つけること。「メランコリックなピアノが私たちをしあわせにする」というのは彼が掲げていることばですが、深まる秋を 共にする音楽にはうってつけな、繊細で美しいソロ・ピアノ作品です。きっと聴くもののこころのなかにゆりかごを作り出すでしょう。

 

Fabrizio Paterlini
(ファブリツィオ・パテルリーニ)
2011年11月6日発売
2,300円(税込) PDIP-6520
レーベル:p*dis


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