ダニ&デボラ・グルジェル・クアルテート、『UM』 リリース&9月初来日みなを虜にするダニ・グルジェルが、
クアルテートで待望の初来日。

(2013.08.20)

若手音楽家がつぎつぎと頭角を現しているサンパウロの音楽シーン。
中でももっとも代表的なアーティストといえるダニ・グルジェルが待望の来日。
2008年「ノッソ」からずっと応援し続けてきた、
鎌倉『café vivement dimanche』の堀内隆志さんが、
ダニ&デボラ・グルジェル・クアルテートの魅力を紹介してくれました。
♦ 9/6,7,8 Live information
♠ 堀内隆志さんのダニ・グルジェル・スペシャルインタビュー

ダニ・グルジェルに惹かれる理由

ダニ・グルジェルはクリエイターだ。ミュージシャン、コンポーザー、プロデューサー、カメラマンと、彼女の肩書きは多い。ぼくがダニに惹かれているのは、彼女が関わっているクリエイティブな仕事の全てが自分の感性にフィットするからである。今も愛聴盤の2008年にリリースされたファースト・アルバム『ノッソ』を初めて聴いた時の驚きと喜びは今も克明に覚えている。

サンバ、ボサノヴァ、MPB、地方のリズムをブラジリアン・ジャズというフィルターを使い、サンパウロという大都会を想像しうるソフィスティケイ テッドな作品に仕上げた。一度聴いたら虜になってしまうダニ独特のチャーミングな歌声と、母デボラ・グルジェルをはじめバックを支える確かな演奏力と良質な楽曲。全体に通ずる優れたアレンジ・センス。『ノッソ』は私たちという意味だが、ここにはダニの創作への気持ちが込められている。かつてエリス・レジーナがそうだったようにダニは自分たちと同世代の才能を持った仲間たちとともに作曲や演奏を始めた。仲間たちも積極的に良い楽曲を共有した。

07年にダニが歌い始めたきっかけになったプロジェクト「ダニ・グルジェル・イ・ノヴォス・コンポジトーレス」から、若きアーティスト達が発見されデビューを飾っていったのだ。ダニのアルバムから広がるサンパウロのMPBシーンのピープルツリーは、現在進行形で広がり続けている。ダニの音楽を語るときに欠かすことのできないのが、デボラの存在である。ジンボトリオの主宰する音楽学校CLAMで11年間教え、ピアニスト、コンポーザー、アレンジャー、プロデューサーとしてジャズにまつわる様々な仕事をしてきた。11年末にダニが参加したソロアルバム『デボラ・グルジェル』が高い評価を得たのは記憶に新しい。デボラは自分のソロ活動と並行して、必ずダニのバックを務めてきた。ダニやデボラの作品を聴けば聴くほど彼女たちの魅力に惹き付けられ、生で演奏を聴きたい気持ちは、日々募る一方だった。

2012年USツアーで

ダニとデボラの2012年に行ったUSツアーを知ったのは、ダニのツイッター情報だった。ボストン、ニューヨーク、シアトルを巡るツアー。ブラジルに行かなければ観ることはできないと諦めていた大好きなアーティストがブラジルまでの半分までの距離まで来てライブを行うという。ファンを自認しているのだったら、これは重い腰を上げるときだ。

3都市の中で選んだのはシアトルだった。なぜシアトルだったのかというと、ちょうど3年前からはじめたコーヒーの焙煎が大きく関係している。コーヒーの世界的な流れから言うと、今の西海岸は外せない地域なのだ。シアトルはスターバックス発祥地で、多くのコーヒーショップが点在し、カフェインの消費量が全米一の街。シアトル系コーヒーショップからスペシャルティコーヒーを扱うサードウェイブのコーヒーショップまで、たくさんの店が点在し焙煎店がある。ディモンシュで使用しているシネッソというエスプレッソマシンもシアトルに本社があるというのもシアトルを選んだ理由のひとつだった。

ダニ&デボラのシアトルでのライブは、シアトル市内の2会場で行われた。その日程に合わせて行程を組み、朝から夕方までコーヒーショップ巡りをし、夜はダニたちのライブを2日に渡って楽しんだ。USツアーでの編成はダニ(vo)、デボラ(p)、チアゴ・ハベーロ(ds)にアメリカ人ベーシストを加えたカルテット編成。この編成ということは演奏できるレパートリーが限られてくるのはわかっていた。しかしオープニング曲の「エッサ・ナォン」が始まると小編成であることが信じられないくらいダイナミックな迫力に圧倒されのだった。ダニのスキャットが第四の楽器のようだった。これまでの代表曲はカルテット用に新たにアレンジされ、USツアー用に用意されたナンバーも披露された。それが『ウン』に収録されている「バラ・コン・バラ」と「フォホー・ブラジル」だった。2日間ともに素晴らしいライブだったのは言うまでもない。会場を後にし、旅の期間中消えることのなかったライブの余韻に浸りながら、考えたことは1つだった。この感動を日本のリスナーと共有したいということだった。


2012年シアトルでのライブ会場

ダニ・グルジェルと堀内隆志さんシアトルで初邂逅
クアルテート結成と新作『ウン』

シアトルで直接ダニの口から「これからはソロ名義ではなく、ダニ&デボラで活動していく」と聞かされていたので、ブラジルに帰国してからダニ&デボラ・グルジェル・クアルテートとしてアルバム制作に入ったと聞いて驚きはなかった。『ノッソ』『アゴーラ』『ヴィアドトゥス』というこれまでの作品には、背景に明確なストーリーがあるのに対して、『ウン』は純粋にダニとデボラ、チアゴのミュージシャンとしてやりたかったエッセンスが詰まっており、チアゴの提案で一発録りが行われた。ダニは自分の声を楽器のひとつとして表現した。よりスキャットを多用したのだ。MPBやブラジルの様々なリズムに、ジャズのハーモニーと即興性を取り入れたダイナミックな作品に仕上がった。デボラの抑揚のあるピアノ、チアゴの大胆で迫力あるドラム、デボラのソロ作品に参加しクアルテート入りしたシヂエル・ヴィレイラの安定感のあるベース。英語の曲やカヴァーは、これまでのプロジェクトにはなかった発想だ。やはり昨年のUSツアーが大きく影響を与えているようだ。「クワイエット・リトル・レディ」はデボラがUSツアー中に参加したチック・コリアのワークショップで、チックに付けてもらったニックネームに由縁している。また、これまでの作品同様に同世代の仲間たちとの共作した曲も収録している。まるでブラジルでのデモを予見したかのような市民目線での政府への不満が歌詞になっているファビオ・カドーレとの共作曲「チ・ヴィーラ」には、ダニはこんなコメントを添えている「何かを手に入れたい人は、夢を追わないといけません。努力もせずやりもしなかった人は、文句を言う資格はありません。」

ジャケット写真はカメラマンとしての顔を持つダニによるもの。ダニはカメラを覗くときもミュージシャンの感覚なのだそうだ。写真家としてミュージシャンと仕事をする時は、そのミュージシャンの音楽を写真という媒体を使ってイメージに変えているのだとか。

UM ONE
Dani & Debora Gurgel Quarteto

2013年8月14日(水)発売 2,500円(税別)
レーベル:Rambling RECORDS
【Track List】
1. 36-47
2. Matraca de Cordel
3. Bala Com Bala
4. Descompassamba
5. Not To Be Heard
6. Rock With You
7. Verso em No
8. Quiet Little Lady
9. Forro Brasil
10. Te Vira

待望の初来日公演について

9月の初来日に向けて、ダニに日本の印象を聞いてみた。「いつも日本のことは夢に見ていました。『ノッソ』をリリースしたときに、ブラジルのどこよりも早くオーダーをくれたのは大洋レコードでしたし、ブラジル以外のどこの国よりも一番日本で売れているから、いつかは絶対に日本に行かなきゃ!と思っていました。だから今回の来日公演はとっても楽しみ。ライブの少し前に日本を旅行する予定にしています。地方の生活や建物、歴史に興味があって、昔から守られているものを見に行って、そこでいかに数百年前から人々が考え暮らしてきたかということに触れることが、とても良い刺激を与えてくれると思っています。長野県の松本城や妻籠、馬籠に行って京都にも行く予定にしているのよ。」

今回の来日公演は3会場で行われる予定だ。9/6(金)サラヴァ東京ではbar buenos airesとのコラボレーション。ダニ自身アルゼンチン音楽は大好きで特にカルロス・アギーレが好きだという。チアゴはアカ・セカ・トリオのマリアノ・カンテーロと大の仲良しでツアーの時に互いのドラムセットを使っているそうだ。今回の来日公演でたっぷり演奏を味わうことができるのがサラヴァ東京公演になる。9/7(土)は東京JAZZのthe PLAZAに出演。出演する曜日は違えど、昨年のUSツアーでデボラがワークショップに参加したチック・コリアも東京JAZZに出演する。デボラはチックに連絡をしたようだ。JAZZファンがダニ達の演奏にどう反応するのかが楽しみだ。そして9/8(日)は鎌倉のカフェ・ヴィヴモン・ディモンシュにダニ&デボラ・グルジェル・クアルテートをお迎えする。シアトルで観たライブからちょうど一年後に、国内盤がリリースされ来日公演も実現できることになった。

最後にダニからのメッセージを。「一年前は、日本に行くことは遥か遠い夢のように思っていました。でもそれが、もうすぐ実現します。音楽を心から楽しんでくれる皆さんと会えることが本当に嬉しいです。日本に新しい友達を作るために行きます。ライブで会えることを楽しみにしています。」ダニ&デボラ・グルジェル・クアルテートのライブをぜひ体験してほしい。あの感動を共有しましょう。


【ダニ&デボラ・グルジェル・クアルテート Live information】
ダニ・グルジェル(vo)、デボラ・グルジェル(p) 、チアゴ・ハベーロ(ds) 、シヂエル・ヴィエイラ(b)
9月6日(金)Dani & Debora Quarteto
in bar buenos aires vol.27
19:00open 20:00start Adv. 5,000円Door. 5,500円(ともに1drink付)
音楽選曲:吉本宏、山本勇樹、河野洋志(bar buenos aires)
会場:SARAVAH東京(渋谷) 予約はこちらから
9月7日(土) 東京JAZZ the PLAZA
会場:東京フォーラム 地上広場
9月8日(日) Dani & Debora Gurgel Quarteto New Release Party
1部、2部入替制 1st 17:00open 17:30start / 2nd 19:30open 20:00start 各回5,000円 ( 1drink付)
会場・予約:café vivement dimanche Tel:0467(23)9952