Another Quiet Corner Vol. 35『Night and Day』“昼も夜も”クワイエット・コーナーが選ぶ音楽を。

(2014.09.12)
夜も昼も、いつでもどこでも。

クワイエット・コーナーが手掛ける新しいコンピレーションが発売されました。コール・ポーターが書いた古いジャズ・スタンダード「Night and Day」をテーマに掲げて、信頼する音楽レーベルのミューザックの音源を集めた2枚組です。夜も昼も、いつでもどこでも優しく寄り添ってくれるような音楽を選びました。

2012年にミューザックから『Come Rain or Come Shine』というコンピレーションを作りしました。そのいきさつは以前、このコラムで書きました。『Come Rain or Come Shine』は、僕もレーベルのオーナーの福井さんも、とてもよい手ごたえを感じていて、完成したときには「いつか必ず続編を」と約束したほどです。それから2年、約束通り2作目のコンピレーション制作に取り掛かることになりました。まずはテーマ決めです。前作はスタンダードの「Come Rain or Come Shine」をもとに、“雨”と“晴れ”でそれぞれ選曲を行ったので、今回もリスナーにコンセプトが伝わりやすいように、かつ2枚組というフォーマットにも合わせやすいようにと、ふたりでアイデアを出し合い始めるやいなや「Night and Day」に決まりました。なぜなら「Night and Day」は、ふたりが大好きなスタンダード曲のひとつで、“夜”と“昼”というシチュエーションで分けることができるというこの上ない1曲だったからです。打ち合わせのときに福井さんが「『Night and Day』といえば、エヴリシング・バット・ザ・ガールのカヴァーをずっと長らく愛聴していましたよ。だからこの曲は僕にとって特別なんです」と語ってくれたのが印象的でした。一方僕は、ちょうど音楽に夢中になったころ、セルジオ・メンデス&ブラジル66のカヴァーをはじめて聴いて、この曲の魅力にはまりました。

素晴らしいアルバムコレクションから1曲ずつチョイス、新録もプラス。

テーマが決まったら、あとは選曲です。“ナイト・サイド”には、ダイアナ・パントンの「Moonlight Serenade」やステファン・グラッペリの「Stardust」といった、夜に合う静かなバラードやメロウな手触りの曲を選び、“デイ・サイド”には、レフトオーヴァー・ドリームスの「I’ll Take Romance」やトゥトゥ・プワネの「Just About Everything」といった、昼に合うスウィンギーなジャズ・ヴォーカルや心地よいボサノヴァの曲を選びました。また前作の発売から2年が経ったということで、その間にミューザックから発売された作品からもコンセプトにふさわしい曲を選んでいます。ブラジリアン・シャーデーの異名をもつイヴィー・メンデスの「Yellow」や、来日公演も素晴らしかったグラジーナ・アウグスチク&ポリーニョ・ガルシアのビートルズ・カヴァー「We Can Work It Out」、ソフトロック・マニアの間でも話題のベス・ソレンティーノのカート・ベッチャー・カヴァー集から「I Just Want To Be Your Friends」など。選曲をしながら、改めてミューザックの音楽センスに共感をおぼえました。

  • ダイアナ・パントン
    ダイアナ・パントン
  • ベス・ソレンティーノ
    ベス・ソレンティーノ
  • グラジーナ・アウグスチク&ポリーニョ・ガルシア
    グラジーナ・アウグスチク&ポリーニョ・ガルシア

そして今回、コンパイルするにあたりもうひと工夫欲しい考え、福井さんに独占収録の提案をしたのです。それがジャネット・サイデルとリンカーン・ブライニーが歌う「Night and Day」のカヴァーです。福井さんからジャネットとリンカーンに、今回のコンピの趣旨を伝えてもらい、ジャネットは“ナイト・サイド”、リンカーンは“デイ・サイド”に合うように特別にアレンジしてカヴァーしてもらうことになりました。その後、届けられた音源を聴いてとても驚きました。まさしくこのコンピにぴったりのカヴァーになっていたからです。ジャネットはまるで夜のバーで歌っているような艶やかな雰囲気で、リンカーンはウェストコーストの涼しい風を感じさせるような爽やかな雰囲気でした。さすがです、この2人にオファーして間違いはありませんでした。

  • リンカーン・ブライニー
    リンカーン・ブライニー
  • ジャネット・サイデル
    ジャネット・サイデル

最後にジャケットについて。デザインは前作を踏襲するかたちで、両面ジャケットに仕上げました。“ナイト・サイド”にはベッドでぐっすり眠る男の子、“デイ・サイド”には元気におつかいをする女の子の写真をそれぞれに使っています。その日の気分や時間に合わせて選んで飾っていただけます。個人的なプレゼントとしても喜ばれるのではないでしょうか。ブックレットには収録曲が入ったオリジナル・アルバムのジャケットを掲載していますので、もし気に入った曲が見つかったら、アルバムもぜひ聴いてみてください。ここでは1曲だけを選んでいますが、どのアルバムも単体ですばらしいものばかりです。

完成した作品を手にして感慨もひとしおな気分に浸っていたら、早くも福井さんから「ぜひ続編をやりましょう」と連絡が。どうやらすでに新しいアイデアがひらめいたようです。まずはみなさんの手に『Night and Day』が届くことを願っています。

『Night and Day』V.A.
2014年9月12日発売 2,500円(税込) レーベル:MUZAK

【Night Side】

01. Night and Day / Janet Seidel *独占録音
02. Moonlight Serenade / Diana Panton
03. Violets For Your Furs / Lincoln Briney
04. Still Crazy After All These Years / Ann Burton
05. Stardust / Stéphane Grappelli
06. Just Friends / Priscilla Paris
07. When I Fall In Love / Tete Montoliu
08. Yellow / Ive Mendes
09. That Old Feeling / Paulinho Garcia
10. I Have Thiught Of You / Sacha
11. Meaning Of Love / Karin Krog
12. Tomorrow’s Son / Steve Khun
13. God Only Knows / Langley Schools Music Project
14. When Sonny Gets Blue / Ed Bickert
15. Easy Living / Laurie Allyn
16. Blossom / Blossom Dearie
17. Moments of Anna’s Life / David Gazarov Trio
18. Yesterday’s Wine / Earl Okin

【Day side】

01. I Wonder / Miss Abrams And The Strawberry Point 4th Grade Class
02. That’s All / Diana Panton
03. I’ll Take Romance / Leftover Dreams
04. We Can Work It Out / Grazyna Auguscik & Paulinho Garcia
05. My Romance / Phaedra
06. Little Boy Child / Lisa Wahlandt
07. Joyful November / Tijian Jost Trio
08. Just About Everything / Tutu Puoane
09. I’m Shadowing You / Janet Seidel
10. On a Clear Day You Can See Forever / Irene Kral
11. Says My Heart / Jackie & Roy
12. The Rrass Is Greener / Pete Jolly
13. Thies Side Of Paradise / Nancy Harrow
14. Armando’s Bossa / Cal Tjader
15. One Brick At A Time / Cy Coleman Trio
16. I Just Want To Be Your Friends / BETH SORRENTINO
17. There Will Never Be Abother you / Bany Gibson & Bucky Pizzarelli
18. Going Home / Albert Ayler
19. Night and Day / Lincoln Briney *独占録音

2012.09.03 Another Quiet Corner vol.14
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