つい先日、録音に参加したベース奏者スタンリー・クラークのアルバム『スタンリー・クラーク・バンド・フィーチャリング 上原ひろみ』で、見事第53回グラミー賞を獲得した上原ひろみ。

一躍、日本国中の注目を集めたものの、本人はいたって謙虚。「これからも、目の前にあるライブに全集中力を注ぎ、日々頑張ります。」という受賞後のコメント通り、受賞後もこれまでと変わらず世界各地をツアーで飛び廻っています。

そんな上原から届けられた待望の新作が、今回ご紹介する『ヴォイス』。今回、自身の原点であるトリオに回帰。世界中をツアー（年間100日150公演以上！）するなかで上原がとらえた、人々のさまざまな感情のうねりや心の声を音で表現することをコンセプトに掲げ、トリオ編成で生み出す音楽の新たな可能性に挑戦しています。

上原をサポートするのは、デビュー当時からの付き合いとなるスーパー・セッション・ベーシストのアンソニー・ジャクソン、そしてTOTOの伝説的なドラマーのサイモン・フィリップス。キャリアもテクニックも最高峰にある大ベテランのふたりの胸を借りるというよりも、がっぷり四つでぶつかり、重なり合い、紡がれる音の渦は、ジャズ、ロック、そしてオーケストラの壮大な世界観さえも感じさせます。

インストゥルメンタルでありながら、どの曲も聴く度に多彩な情景や感情が湧きあがってくるナンバーばかり。ジャズを聴いたことがない方、「ジャズって難しい」という印象を持っている方にこそ、ぜひ聴いていただきたい作品です。

（文／斉藤嘉久　ユニバーサルミュージック）

『ヴォイス（VOICE）』

上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat.アンソニー・ジャクソン ＆サイモン・フィリップス

CD+DVD ＜初回限定盤＞ 3,000円 (税込み) UCCT-9015
＜通常盤＞ 2,500円 (税込み) UCCT-1227
レーベル：ユニバーサルミュージック

【Track List】
1. ヴォイス/Voice (9’13”)
2. フラッシュバック/Flashback (8’39”)
3. ナウ・オア・ネヴァー/Now or Never(6’16”)
4. テンプテーション/Temptation (7’51”)
5. ラビリンス/Labyrinth (7’40”)
6. デザイアー/Desire (7’16”)
7. ヘイズ/Haze (5’52”)
8. デルージョン/Delusion (7’43”)
9. ベートーヴェン：ピアノ・ソナタ 第8番《悲愴》第2楽章/Beethoven’s Piano Sonata No. 8, Pathetique (5’13”)

レコーディング・エンジニア: マイケル・ビショップ　　　　　
2010年11月8～11日ニュージャージー　Water Music Studioにて録音。