Fukuoka RePublik: Vol.4
3.5 Thu.- 3.15 Sun. dakota suite & quentin sirjacq 
Japan Tour 2015
悲壮美のダコタ・スイート、光の表現者クエンティン・サージャック共演。

(2015.02.10)

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聴く人を心象風景の旅に誘うクエンティン・サージャックが再び日本へ。

クエンティン・サージャックの演奏に触れたとき、“光”を感じるのは、僕だけではないだろう。さざめく水面にきらめく光、かすかな風にゆらめく蝋燭の光、澄みきった空気の彼方にまたたく夜空の星の光、そっとあたためてくれる熾火(おきび)の光と、さまざまな姿に変化しながら、僕たちの心の中に描き出されてゆく。光の風景に彩られながら情感豊かに展開されるストーリーとそこに潜む感情は、実はクエンティンのものではなく、聴いている私たち自身の心の奥深くに潜む記憶と感情が投影されたものであることに気づき、ハッと驚くと同時に、今まで感じたことのない既視感が訪れる。

僕たちをこんな素晴らしい心象風景の旅に連れて行ってくれたクエンティン・サージャックが、再び来日する。今回の来日ツアーは、良質な音楽を届けてくれるレーベル「SCHOLE(スコーレ)」からリリースされたダコタ・スイートとの共作アルバム『there is calm to be done』の発表を記念するもの。実は、クエンティンが日本で知られ、前回の来日が実現するようになったのは、彼が2010年のダコタ・スイート来日ツアーにサポートメンバーとして共演していたことがきっかけだった。このユニットでの演奏に生で接したことがない僕にとって、今回再びダコタ・スイートとの共演ツアーが実現すること、そして長年のファンだったダコタ・スイートを福岡に迎えることができるのは夢のようだ。

クリス・フーソン(左)とクエンティン・サージャック
クリス・フーソン(左)とクエンティン・サージャック
 
悲壮美を奏でるクリス・フーソンと、光りの表現者クエンティン・サージャックの美しい共演。

これまで15作を越えるアルバムを発表しているダコタ・スイートだが、その中でクリス・フーソンは、一貫して抑制の利いたスローテンポのリズムとミニマリスティックなアレンジを施したスタイルにより、現代生活の過酷さや日常で抱く悲しみを表現してきた。悲壮感の奥深くに潜む美しさは、一方で静かで穏やかな時間を僕たちに与えてくれる。それは、彼の妻 ジョアンナへの深い愛情をよりどころにしているからだろう。これまでの作品の中で思い浮かべる情景はモノクロームばかりだったのだが、今回の新作『there is calm to be done』では、安らぎに満ちた光を見ることができる。それは、“光の表現者”クエンティン・サージャックという素晴らしい共作者を得たことと無関係ではないだろう。クエンティンは、優しさと思いやりにあふれた親しみやすい人柄で、周囲をリラックスさせてくれる。前回の来日時、初演の福岡では、公演前に自分で見つけた美容室で髪を切り、ふらりと立ち寄った古着屋で買ったハリス・ツイードのジャケットをステージで着用し、髪型とジャケットのどちらも彼にとてもよく似合っていたことが、微笑ましいエピソードとして記憶に残っている。クエンティンは、これまでもダコタ・スイートの数作品に参加してきたのだが、新作ではプライベートでも親友であるふたりの親密感が増し、ダコタ・スイートが描く情景がこれまでにない新たなものになっていることは、クエンティンの人柄も深く影響しているように思える。

Dakota Suite with Quentin Sirjacqのライブ(2014) Photo by Stephan Kaffa
Dakota Suite with Quentin Sirjacqのライブ(2014) Photo by Stephan Kaffa
 
映画『Bright Days Ahead』上映&小柳帝さんによるトーク。

今回のツアーに先立ち、とても興味深いイベントが用意されている。クエンティン・サージャックが全篇音楽を担当した映画のサウンドトラック・アルバム『Bright Days Ahead』によって、多くの方が彼の音楽に深く魅了され国内で広く知られるようになったと思う。彼の音楽は、交互に訪れる心のざわつきと喜び、そして恋する大人の心の機微を繊細に表現している。そしてこの映画の主演をつとめるのは、フランソワ・トリュフォー監督の最晩年のパートナーとして知られるフランスの大女優ファニー・アルダン。実は、この映画『Bright Days Ahead』(原題: Les beaux jours / 邦題: 麗しき日々)は国内では、劇場未公開でDVDのみ発売されている。福岡で、この作品の初上映を行い、映画評論家/フランス語翻訳家の小柳帝氏をホストに迎え、クエンティン・サージャック本人によるトークショーを開催する。「映画と映画音楽の関係性」「映画音楽制作の舞台裏」「フランス映画と映画音楽の現在・過去・未来について」など、これまでにないトークショーは、僕たちの好奇心をかきたてるものになるだろう。そして、このイベントに続くツアーで、ダコタ・スイートの内面にある悲壮美とクエンティンがピアノで静かに描き出す光の美しさを多くの方に堪能していただくことを願っている。

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【dakota suite & quentin sirjacq
Japan Tour 2015】
3/5(木)『Film & Music Show“Bright Days Ahead” Talk with Quentin Sirjacq』
映画『Bright Days Ahead』国内初の上映会&トークショー
出演:クエンティン・サージャック ホスト:小柳帝 会場:福岡パッパライライ
3/6(金)福岡公演 inパッパライライ
19:00 開場 / 20:00 開演 予約4,000円 / 当日4,500円
3/7(土)岡山公演 in 蔭凉寺
17:30 開場 / 18:00 開演 予約4,000円 / 当日4,500円
3/8(日)大阪公演 in 島之内教会
18:00 開場 / 18:30 開演 予約4,000円 / 当日4,500円
3/10(火)名古屋公演 in 5/R Hall & Gallery
19:00 開場 / 19:30 開演 予約4,000円 / 当日4,500円
3/12(金)横浜公演 in 大倉山記念館
19:00 開場 / 19:30 開演 予約4,000円 / 当日4,500円
3/14(土)東京公演 inサローネ・フォンタナ
16:00 開場 / 17:00 開演 予約4,000円 / 当日4,500円
3/15(日)東京公演 with bar buenos aires in サラヴァ東京
18:00 開場 / 19:00 開演 予約4,000円 / 当日4,500円
選曲 : 吉本宏、山本勇樹、河野洋志 予約: サラヴァ東京

 

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there is calm to be done
dakota suite & quentin sirjacq
2,200円(税別) レーベル:SCHOLE

【Track List】
01. this is my way of saying that I am sorry
02. flat seat
03. in the stillness of this night
04. committing to uncertainty
05. nu dat deze dag voorbij is
06. dronning maud land
07. ask the dusk
08. be my love
09. nothing is gone
10. the tears that bind us to this place
11. the world touches me too hard
12. there is calm to be done
13. I miss the dust
14. onzekerheid (bonus track)