スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド2013、スキヤキトーキョー2013ワールドグルーヴを浴びながら
心まで踊る晩夏の“スキヤキ”

(2013.08.09)

人影まばらな田んぼ真ん中で盛り上がった第一回。

毎年8月、富山県南砺市で行われるスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドは今年で23回目。第一回の出演者は一組だけ。アフリカ・ブルンジ共和国の「ドラマーズ・オブ・ブルンジ」でした。その記念すべき第一回で、東京からアーティストをアテンドするという幸運を得た私は、メイン会場の「ヘリオス」を見て仰天!田んぼの真ん中にドドーンとそそり立っていたのです(実際は違うのですがそう見えるほどダイナミックな違和感があったのです)。周辺には人影もなく、「ここでアフリカン・パーカッションを演奏して観客は来るのだろうか…」というのが率直な印象でした。

そんな心配をよそに、スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドが旗印として掲げている「異文化交流」と「市民参加型」を武器に、多角的にブルンジを紹介し盛り上げ、初回のスキヤキを大成功させました。その後はブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ、カルリーニョス・ブラウン、ドゥドゥ・ニジャエ・ローズ・パーカッション・オーケストラらのビッグネームを始め海外アーティストだけでも今までに150組以上が参加する国内外で名を轟かすフェスへと成長していったのです。

スキヤキから始まった世界との交流が、実を結び始めている。

富山スキヤキのキーワードは「異文化交流」。アーティストから直接学ぶ演奏や踊りのワークショップ、シンポジウム、写真展、料理教室などを積極的に開催。一粒で二度三度四度おいしいその内容は、期間中会場にいるだけで自然に心地よい異文化の風に包まれます。今では本会期前には、巡回コンサートや市民対象の長期滞在型ワークショップを市内外で数多く開催するなど市民とアーティストがともにステージ演奏を目指した舞台作品を創り上げるユニークな交流活動をも定着させています。

こういったアーティストの国・文化を多面的に紹介していく姿勢はより深く積極的に異文化に興味を持ってもらうことに繋がり、スキヤキにとても深い意義をもたらしました。またプログラムから運営まで、やる気があれば誰でも参加しフェスを作り上げていくことができるボランティアスタッフによる実行委員会方式は、地域みんなの力を集結させるモチベーションに繋がっています。

そんな活動から多くの市民楽団が生まれているのも驚きです。スティールドラムの「スキヤキ・スティール・オーケストラ」、小学校スティールドラムクラブの「気分はカリビアン」、打楽器グループ「サラマレクム!」、小中学生韓国打楽器グループ「サムルノリ・シグ!」、親指ピアノの「スキヤキ親指ポロリンズ」などなど。しかもそれらは一過性ではなく年間を通して活動するグループとして音楽文化の創造・発信を実現しているところが素晴らしいのです。

スキヤキトーキョーの誕生。

数年前からは、アーティストとの交流部分により厚みをを持たせるべく、海外のアーティストにも直接熱い思いを伝えるため、プロモーターを介さず直接交渉によって日本へ招聘するスタイルを確立しました。そうして実現した長期滞在の効果はアーティスト間交流にも積極性を生み、2010年はアフリカ・韓国・日本のアーティストで結成したスペシャルユニット「スキアフリカ “スキヤキ・オールスターズ”」が誕生。しかもなんと誕生しただけでなく、日本、韓国での公演を経てアフリカ4カ国ツアーを敢行・成功させるという仰天の結果を生み出しました。

順調に進化を続けるスキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドですが、一方で、海外からやってくるアーティストの単体のライヴを本家スキヤキ以外で行う機会が少なくなり、また「富山県南砺市まで行けない。でもライヴが観たい!」という声が大きくなり後押しとなったため、海外アーティストのライヴパフォーマンスにフォーカスし東京らしいスパイスを効かせる兄弟企画として2年前にスキヤキトーキョーは生まれました。

スキヤキトーキョー第一回は3公演。ニジェールの砂漠のブルースシンガー“オマラ・モクタル・ボンビーノ”と藤本一馬の対バン公演で幕を開け、美しく神秘的なインドの女性声楽家“カウシキ・チャクラバルティ・デシカン”公演はスタンディングオベイションの嵐、そして北アフリカ・アルジェリアのグナワ・ディフュージョンの元リーダー(グナワ・ディフュージョンはなんとその後復活)“アマジーグ・カデブ”は在日アルジェリア人が多数押し寄せ、アルジェリアの国旗を振りながら踊りまくるという代官山がアルジェリア化する盛り上がりを見せました。

2回目の昨年は、復活したグナワ・ディフュージョンとGOMA & The Jungle Rhythm Sectionの奇跡の対バン公演、世界的に大人気の若手シタール奏者“プルバヤン・チャッタルジー”単独公演、コロンビアの“ペルネット”をフィーチャーしたバモス・コロンビアとのコラボレートパーティーという三者三様の企画でワールドグルーヴを紹介しました。

スキヤキトーキョー2013

そして今年も注目の3公演、渋谷WWWで3daysです。1日目は“LEGEND OF ZIMBABWE, NEW AFRICAN LANDSCAPES”。ジンバブウェの、いやアフリカンミュージックのレジェンド“オリヴァー・ムトゥクジ”が自身のバンドとともに奇跡の初来日。世界的なワールドミュージックブームの際も踊らされることなく母国ジンバブウェを中心に活動を続けて来たオリヴァー・ムトゥクジが、60歳を越えて初めて日本にやってきます。これは事件です! 事件を目撃してください!

この日は本家富山スキヤキのレジデンスプログラムで生まれる、ヴェルナー・プンティガム(オーストリア)、マチュメ・ザンゴ(モザンビーク)&サカキマンゴー(鹿児島)のスペシャルバンドも登場します。


オリヴァー・ムトゥクジ(ジンバブウェ)

ヴェルナー・プンティガム(オーストリア)、マチュメ・ザンゴ(モザンビーク)

サカキマンゴー(鹿児島)

2日目は“ETHIOPIA: BRIGHTNESS, DELICACY AND POWER”と題しアフリカ・エチオピアに注目。弾けるような疾走感とうねるようなエチオ・グルーヴで話題沸騰のバンド“ユーカンダンツ”が初来日。ヴォーカルのアスナケ・ゲブレイエスの変幻自在でコブシたっぷりの声にオルタナ・ロック系ガレージ/パンク/ジャズが複雑に絡み合いアグレッシブでラウドなエチオピアン・クランチ・ミュージックにヤラレちゃってください。

迎え撃つのは高木正勝。6月に開催された国際会議「アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)」のパートナ事業としてエチオピアを訪問・取材し創り上げた新作映像作品“うたがき”をフィーチャーした初ライヴを披露します。聴覚と視覚で新感覚のエチオピアの魅力を感じて欲しい一夜です。


ユーカンダンツ(エチオピア)

高木正勝
そして3日目は”WILDNESS, INTELLIGENCE AND GENEROSITY OF SOUTH AMERICA”。昨年リリースしたアルバム「So」で衝撃を与えたブラジル・ミナスの底知れぬ才能“アントニオ・ロウレイロ”が登場します。東京公演のみ芳垣安洋(dr)+鈴木正人(b)+佐藤芳明(accordion)が強烈にサポート。まさにスペシャル、東京だけでのセッションが実現します。

対するは、表情豊かな歌声と野性味溢れるリズムが魅力の、南米だけでなく世界でリスペクトされているアルゼンチンの女性パーカッショニスト&シンガーの“マリアナ・バラフ”です。ロウレイロとマリアナのセッション、なんてうれしいハプニングもあるかも知れません。

いまや東京でも様々なワールドグルーヴを一度の機会で観られることは希有です。普段こういう音楽や文化に触れる機会のない方にも興味本位で気軽にいらしていただきたいです。直感で感じてください。そこからあらたな感性の扉が開くことをお約束します。


アントニオ・ロウレイロ(ブラジル)

マリアナ・バラフ(アルゼンチン)

スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド2013
8/23(金) 24(土) 25(日)
会場:福野文化創造センターヘリオス 富山県南砺市やかた100 

スキヤキトーキョー2013
8/27(火) 28(水) 29(木)
会場:渋谷WWW