「デコーダーズって聴いた？」、そう友人から尋ねられたのは、2012年の秋だっただろうか。彼は「Les Fleur」や「I Am The Black Gold Of The Sun」といった、かつてチャールズ・ステップニーという偉大な音楽家が作曲＆プロデュースし、「Lovin’ You」ヒット以前のミニー・リパートンが感動的に歌った楽曲の名を挙げ、それらをカヴァーしていることを教えてくれた。2曲が共に僕のフェイヴァリット・ソングであることを、友人はよく知っていたのだ。だがその後、いつものようにレコード・ショップにかけ込んでジャケットを手にすることは叶わなかった──それは残念ながらデコーダーズが、そもそも配信のみにリリースを特化したプロジェクトであったためだ。

左：Les Fleurs feat. Boston Fielder
右：I Am The Black Gold Of The Sun

普段の僕はアナログ・レコードとCDを再生機にのせ、音楽に親しんでいる。そんな中でここ数年頭を悩ませているのは、配信でしか購入することのできない音源の存在だ。圧倒的な利便性の中にアーティストとリスナー双方に様々なメリットがあることは理解しているし、僕自身も実際は移動中のリスニングやライブラリーの管理と選曲作業などにMP3というフォーマットが不可欠だと感じているものの、恥ずかしながら未だにダウンロードでデータを購入するシステムそのものにうまく馴染めていない。サウンドのクオリティ面ではCDを越える高音質での配信もスタートしてはいるが、肝心の再生プロセスにおいて身近な決定打が登場していないようにも思える。

「世界中でCDを熱心に買っているのはもはや日本人だけ」なんていう声がまことしやかに聞こえてくるが、少なくとも時代や国境、ジャンルの壁を越えて心に響く素晴らしい音楽は、CD、願わくばアナログ・レコードというフィジカルなメディアでまだまだ必要とされると信じたい。今回デコーダーズがデジタル・リリースを重ねてきた楽曲が『Lovers & Dub Classics』としてアプレミディ・レコーズより世界初CD化されたことは、それを静かに証明してみせたのではないだろうか。これからは夏が廻るたびに、ダブワイズに“デコード”されたアース・ウィンド＆ファイアの「Reasons」やミニー・リパートンの「Inside My Love」が、スピーカーから心地よい音色とヴォリュームで流れることに感謝したい。

※CDの詳しい解説はこちらを！

左：Reasons feat. Love-Logiq
右：Inside My Love feat. Sy Smith