音楽&映像ユニットakisai『colors』リリース&ライヴ。四季を彩る風景を思いおこさせる
「akisai」のデビュー作品。

(2014.03.28)
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あきさい、秋彩、akisai

「あきさい」。その言葉を最初に耳にしたのは、この作品をリリースしたレーベルSCHOLE の音楽プロデューサーで音楽家でもある小瀬村晶さんとのお話の中でした。「あきさい、今度うちからアルバム出すんですよ」。

後にそれはアルファベットで綴られるユニット名だと知ることになるのですが、そのとき「あきさい」という言葉から思い浮かんだのは「秋」と「彩」という漢字であり、それらが連想させる季節と色を思わせる言葉の組み合わせ、そして響きでした。

日常にそっと寄り添うような音楽を届けてくれるSCHOLEの音楽は、巡る季節や情景と共にある音楽だと常日頃から感じている僕は、その名前を聞いただけで、なんともSCHOLEらしい名前だな、と思いました。

その後、「akisai」という正しい表記を知り、彼らの音に触れた今も、「秋」「彩」と最初に浮かんだ漢字がもたらすイメージは、あながち的外れでもなかったように感じています。

小川のせせらぎやそよぐ風、桜の花が川面に舞い落ち流れていく様子、空の青さや生き生きとした葉の緑、木々の間で煌めく陽の光、車窓からの眺め、流れていく景色、ゆっくりと形を変えながら移動していく雲、冬を前に色づく木々、白いキャンバスに描かれた色とりどりの模様やその濃淡、筆のタッチ、パレットの上や筆洗の水面で混ざる絵の具の色…。

流れるように奏でられるギターの旋律が緩やかな動きを、散りばめられた電子音が淡いトーンから鮮やかな原色までさまざまな色味を、そこはかとなく漂う和情緒が四季折々の風景を彷彿とさせるからでしょうか。

akisaiの音楽を聴いていると、さまざまな光景、そして色が目に浮かびます。思い出す、とか、気づかされる、といった表現のほうがいいかもしれません。

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音楽と映像のユニット「akisai」。

akisaiは音楽担当の鈴木要と映像担当の中家紘一によるユニット/プロジェクト。とあるブランドの展示会用の音楽と映像をそれぞれ担当したのをきっかけに、自分とは異なる分野の掛け合いに面白味と可能性を見いだしユニットを結成。その後ライヴ活動もスタートしたそう。

鈴木さんが作る音にインスピレーションを受け中家さんが映像を作ったり、また、それとは逆に中家さんが作る映像をイメージして鈴木さんが音作りをしたり。そんなふうにしてakisaiの音楽は生まれているそうです。

このあたりの制作過程やアルバムの解説は、現在SCHOLEが配布中のフリーペーパー「リトルレターpt.6」にもインタビューとして掲載されています。クラシックやジャズ、フュージョン、プログレ、ポストロック、ポップスなど、さまざまな音楽的要素をバックボーンに持つそのサウンドは、生楽器に加え、リズムや曲の彩りに電子音を多用しながらも、極めてオーガニックな味わい。

いわゆるJ-POPやROCKとは異なり、歌のないインストゥルメンタル作品なので、エレクトロニカやアンビエントといったカテゴリーで紹介されることも多くなりそうですが、そういうジャンルに普段馴染みがない方でも心地よく身を委ねることができる、優しく温かみのあるメロディアスなサウンドです。

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ライヴで本来のakisaiを知ってほしい。

音を聴きながらあらためてジャケットを見返してみると、デザインを手掛けたSCHOLEのアート・ディレクター、菊地慎さんのセンスも秀逸であることがわかります。akisaiの音楽性を見事に表現したそのジャケットが、今度はまたその作品の魅力を引き立てています。

リリース作品の音楽性はもちろん、ジャケットのアートワークやウェブサイト、フリーペーパーやライヴ告知のフライヤーに至るまで、洗練されたセンスとこだわり、音楽への並々ならぬ愛情、そしてひと手間かけた丁寧さを持っています。レーベル発のあらゆる創作物において“SCHOLEが提案する豊かな日常”が表現されているわけですね。設立から7周年を迎え、これまでのリリースや活動で培ってきたレーベルのカラーを保ちながらも昨年リリースした[.que]の作品のように、これまでにはなかった、しかし親和性のあるカラーを取り込み、新しい風も感じさせてくれるSCHOLEレーベル。これからのリリースや活動がますます楽しみな存在です。

さて、今回CDというフォーマットでリリースされたakisaiのアルバムは「音」にフォーカスした作品であり、映像は収録されていないのですが、即興性も取り入れた音と映像の掛け合いの妙、つまりはakisaiの真骨頂を体験できるライヴの場があります。akisaiの1stアルバムリリースを記念し、4月5日に開催されるSCHOLEのレーベル・ショーケースです。

近年、演奏者もしくはDJ×VJというスタイルのライヴは珍しくないのですが、akisaiのように「音楽と映像が融合した空間作り」を前提とし、ユニットとして表現しているアーティストは意外に少なく、制作段階からコミュニケーションを重ね、お互いの持ち味をよく知っているからこその緻密で濃密なコラボレーションは、完成度や到達点においてやはり他とは一線を画しているように感じます。

akisaiの完全型に触れ、SCHOLEレーベルの今を知る絶好の機会。ぜひ足を運んでみてください。

akisai – colors release anniversary
SCHOLE SHOWCASE 2014 Spring 東京公演

日時 : 4月5日(土) OPEN : 19:00 START : 19:30
会場 : Super Deluxe (六本木)

Colors
akisai
2014年3月23日発売 2,200円(税別) SCH-034
レーベル:SCHOLE

【Track List】

1. line
2. idearythmical
3. synchrotonica
4. theory
5. biotopia
6. yumecasy
7. phase
8. memoment
9. flow
10. eternitica

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Quiet Moments