祝復活「国産クマモト・オイスター」!
「くにさきOYSTER」との食べ比べ。
(2016.08.02)
東京銀座の「牡蠣Bar」にて、「ちっちゃい牡蠣を愛でる会」というなんとも可愛らしいイベント名の試食会が行われました。
「クマモト・オイスター」という言葉を聞いたこと、ありますか? クリーミーで濃厚な小ぶりの牡蠣。牡蠣の消費大国であるアメリカで、ブランド高級牡蠣として生産され、人気を博しています。日本でも「逆輸入」される形で、オイスターバー等でその希少性が楽しまれていたところ、熊本県が開発に取り組み、このたび約50年ぶりに「国産クマモト・オイスター」が復活しました。
クマモト・オイスターの種名は「シカメガキ」。シカメガキは、大分県国東市でも近年開発が進められ「くにさきOYSTER」のブランド名で、人気を集めています。
今回のイベントでは、それら九州産の二種を食べ比べ。参加者は、牡蠣に並々ならぬ敬愛と愛情をもったメディア関係者約20人。小さいながらも味わい深く、生食に向いた二種の牡蠣に、熱視線が注がれ、熱い議論が繰り広げられました。
生産者の方々から、開発秘話や現場の声も伺えました。
まずは、クマモト・オイスター。戦後、GHQ(連合国軍総司令部)の要請で、熊本からアメリカに向けて、種牡蠣の輸出が行われました。昭和22年から昭和33年の期間に実施された対米輸出は、最盛期には「種牡蠣出荷専用貨車」を設け、船便を挟んで、シアトルまで輸送するほどの規模でした。マガキに混ぜ輸出されたシカメガキは、アメリカで特に高い評価を得て、「KUMAMOTO」としてブランド化。現地で高級牡蠣として生産され続けているものの、熊本県内では、海苔の養殖に押され、一度は生産が消滅した幻の牡蠣なのでした。
しかし、平成17年から、熊本県が復活生産に向けて、取り組みを開始。DNAレベルでの野生親貝の判別から始まり、稚貝ができるまで8年。関係者の不断の努力が実り、現在は稚貝を100万個生産するレベルにまで達しているそうです。年間出荷量は約4,000〜1万個と、まだまだ滅多にお目にかかれないクマモト・オイスターではありますが、安定生産・供給に向け、新しい養殖技術の導入など、日夜研究が進められています。
次に、くにさきOYSTER。国東市と地元漁協とヤンマーが、三者共同で開発しています。「農業機械で有名なヤンマーがなぜ牡蠣養殖を?」という疑問が湧いてきますが、社内には海洋事業部門があり、その中に水産事業も含まれるとのこと。クルマエビ養殖場の跡地有効利用を、地元の漁業者から打診され、シカメガキの養殖を開始、平成25年に出荷デビューしたそうです。
海水の浄化技術に、付着物の少ない養殖方法。テクノロジーカンパニーならではの、新しい牡蠣養殖の技が光ります。
生食の牡蠣は、さっぱりと頂きたい夏のグルメでもあります。キンキンに冷えたロック焼酎との相性も、バッチリでした。
会場である「牡蠣Bar」店主の泉祥子氏による牡蠣開けの実演も、注目ポイントでした。手際よく、且つ牡蠣の心臓を傷つけないように丁寧に次々と開ける技は、牡蠣の味を左右する重要な工程です。
スペシャルトークとして、在米の起業家であり熊本出身の外村仁氏による「クマモト・オイスターほか小さい牡蠣に関するアメリカ現地情報」も。マーケットでの販売の様子など、臨場感あるアメリカでの人気っぷりに、「日本国内でも、国産の小さい牡蠣の味を、広く楽しめる機会が増えたらいいのになぁ」と考えさせられました。
ちなみに、この会は、熊本地震の復興イベントとしての意味合いも込められています。被害の大きかった熊本県・大分県の「新たな特産品」として注力されている牡蠣。牡蠣を含めた地域の一次産品を買うことが、応援につながります。
シカメガキの旬は、初夏から夏にかけて。皆さんの街のお店にも展開されていないか、注目されてみてはいかがでしょうか。