from 大阪 – 11 – 大阪でもじわじわと浸透してます!
日本ワインが飲める店・大阪キタ編

(2013.12.27)

日本のブドウから造る日本のワイン

「え?日本でワインなんて造ってるの?」
「どうせお土産用のあま~いワインでしょ?」
一昔前まではこんな声が多かった日本のワイン。たしかにそういうワインもありましたし、またきちんと造られたワインがあっても、まとまった情報として発信されておらず、結果的に一部の愛好家の間でだけ消費されている、というのが実情でした。

しかし時代が進むにつれ各分野でいろんなことが動き始めます。ワイナリーでは若いうちからワインに親しみ、海外の産地などでも研鑽をつんだ造り手たちに世代交代。「ワインは特別な飲みもの」という気負いもなく、自分たちが美味しいと思うワインを、学んできた技術や経験をいかしながら造り始めました。

そしてそんな動きを詳細にレポートしてくださったワインジャーナリストの方々。料理雑誌や専門誌など限られた媒体にとどまらず、ネットやSNSを通じていろんな情報が“日本語で”“早く”“正確に”伝わるようになったのです。

そうすると日本ワインに興味をもちはじめる酒販店や飲食店の方々が増えてきます。おいしいお料理の食材に気を使うのと同じように、ワインの原材料にも関心をもつのは自然な流れ。それまでの、海外産ブドウから造った濃縮果汁やバルクワインを仕入れ、日本で醸造さえすれば名乗ることができた「国産ワイン」ではなく、日本の土壌から生まれたブドウだけを使った「日本ワイン」。ワインは本来原材料であるブドウが育まれた、その土地の風土を反映する飲みものという考えから、日本のワイン産地について議論が活発化し始めました。

東京に集まる日本のワイン
…っと、前置きが長くなりましたね。そんなじわじわきている日本ワインですが、冷静に見てみるとまだまだ東京を中心とした首都圏での一部の動き、というのが現状かもしれません。山梨や長野、東北などワイン産地からのアクセスもよく、人もモノも情報も集中する東京。つい先日も「風土が醸す日本のチーズとワイン」というシンポジウムが東京大学で開催されるなど、造り手・流通・ジャーナリスト・消費者を巻き込んだイベントには事欠きません。

しかしこの流れは確実に、ここ大阪にも押し寄せてきています。すでに京都では日本ワインがだいぶ市民権を得ているとか…。

というわけで、日本ワインが飲めるお店、まずは大阪キタ編から!今後も大阪ミナミ編、京都や神戸のお店もご紹介できればと思います。

北新地で気軽に楽しめる日本のワイン
黄昏どきにはまだ早い午後4時過ぎ。関西一の歓楽街・北新地はまだ営業前の静けさに包まれていたのですが、北新地の一角にある「北新地バル」にはあかりが灯り、すでに常連さんがワイングラスを傾けていました。
 
二年半ほど前にオープンしたこちらのお店、開店当初よりワインは日本のものだけを、と徹底していました。手頃なワインばかりをずっと使い続けるのでもなく、高価なレアものを追い求めるのでもなく。ほぼ一人でシェフもこなす高間さんは休日にはワイナリーを訪れるなど勉強熱心。

「あれこれ飲んでいるうちに日本ワインが好きになりました。もっともっといろんなワインをお客様に紹介していきたい。日本ワインの美味しさを伝えたい。」北新地にあって、手頃な価格で日本ワインをグラスでいろいろ楽しめる得難いお店。ワイナリー関係者が大阪に出張した際は必ず立ち寄る、というのもうなずけます。

温かい雰囲気に包まれた小さなお店
温かい雰囲気に包まれた小さなお店
調理からワインサービスまでこなす高間さん
調理からワインサービスまでこなす高間さん
燻製盛合せにワインがよくあいます
燻製盛合せにワインがよくあいます
この日は熊本ワインの赤。新しいワインが次々と
この日は熊本ワインの赤。新しいワインが次々と
阪急三番街。会社帰りにサクッと日本のワイン

家路を急ぐ通勤客であふれかえる、JR大阪駅と阪急梅田駅の間にある阪急三番街。ラーメン屋さんやファーストフード店が立ち並ぶ一角に、国産ビア&ワイン酒場「molto!!」があります。

細長いお店に入ってすぐ目につくのは、国産クラフトビールが注がれる4つのタップ。スタンディングでクラフトビールを飲みながら他愛もない話をしたり、テレビに映るサッカー中継をぼんやりと眺めたり。ワインはすべて日本ワイン、この日は中央葡萄酒のグリド甲州とともに、ボリートと呼ばれるイタリア風おでんを。くたくたに煮込まれた大阪の田辺大根と京都の聖護院かぶらは出汁の旨みをたっぷりと含み、それはもう甲州ワインにぴったりハマる美味しさでした。

クラフトビールも樽が空いたら違う銘柄へ
クラフトビールも樽が空いたら違う銘柄へ
ダシが染みたボリートに甲州、泣かせる組合せ
ダシが染みたボリートに甲州、泣かせる組合せ
土佐堀のほとりで夜毎盛り上がる日本のワイン

梅田周辺の繁華街からは少し離れて、土佐堀通りを西へ進みなにわ筋を越えたところ。周りには何もないひっそりとしたエリアですが、深夜2時までお客さんの笑い声が絶えないお店「土佐堀オリーブ」でも日本ワインが楽しめます。

店主の平口さんは靭公園向かいにある羽山料理店の出身。こちらはガツンと豪快に肉料理が楽しめるビストロでしたが、土佐堀オリーブではほっこりと優しい家庭料理にあうワインとして日本ワインをセレクト。「毎日でも飲んでいたいワインと、毎日食べても飽きないお料理」を求めて、深夜遅くまでお客さんで賑わいます。

気軽に楽しめる定番ワインから、数百本しか生産されていないお宝アイテムまで。びっしりと書き込まれたワインリストからはワインに対する愛情がひしひしと感じられました。

フランスやイタリアのワインも。ほっこり優しい
フランスやイタリアのワインも。ほっこり優しい
日本のワイナリーにもたくさん訪問しています
日本のワイナリーにもたくさん訪問しています
入る前にワクワクするお店の入口調理スタッフと会話が弾むカウンター席
左:入る前にワクワクするお店の入口
右:調理スタッフと会話が弾むカウンター席
それぞれにコメントつきのワインリストワイン愛がひしひしと感じられます
左:それぞれにコメントつきのワインリスト
右:ワイン愛がひしひしと感じられます
造り手の顔が見える日本のワイン

今回ご紹介したお店はそれぞれ個性こそ違いますが、共通していることがひとつあります。それはワインに対してあくまで自然体だということ。もちろん「日本ワインを揃える」というお店のコンセプトは明確なのですが、それはワインありきのものではなく、お店の雰囲気や料理から選んだら、自然と日本のワインにたどり着いた、そういった気負わない感覚が伝わってくるんです。

そして日本のワインが飲めるお店で何よりも面白いのが“造り手の顔が見えること”。

「○○ワイナリーの人は自分のワインの話になるとものすごくアツくなるんですよ。ほんっとに好きなんですねえ。」
「△△ワインの人はよー飲みはるし、よーしゃべりはりますわ。ワインも雄弁やね。」

造り手の人となりが伝わるようなエピソードを聞きながら飲むワイン。ワインを飲んで気に入ったとき、どんな人が造っているのか会いに行けばすぐ分かる。細かいウンチクを聞きながら難しい顔をして飲むより、どんなに楽しいことでしょうか。

大阪にも6つのワイナリーがあり、ますます身近に感じられるようになってきた日本ワイン。とくに2013年4月には大阪市内の街中、島之内にフジマル醸造所がオープンし、ワイン食堂を併設した都市型ワイナリーとして様々なメディアにも紹介していただきました。

10月にはフジマル醸造所で仕込んだワインを新酒として初めてリリース。今後も“街のワイナリー”として、大阪らしく親しみやすいワインを造っていきたいと思っています。

日常の食卓で、街場の飲食店で。これからますます面白くなっていく日本のワイン、大阪でも気軽に楽しんでいってください!

『フジマル醸造所・ワイン食堂』については「日本ワインが飲める店 大阪ミナミ編」で詳しくご紹介させていただきます。

2階のワイン食堂から見おろした1階の醸造
2階のワイン食堂から見おろした1階の醸造
器具類はコンパクトに。見学も可能です
器具類はコンパクトに。見学も可能です

北新地バル
大阪市北区曾根崎新地1-5-12 Tel.06-6341-5010
営業時間:15:00~24:00 定休日:日曜日・祝日
JR北新地駅より徒歩2分 JR大阪駅、地下鉄西梅田駅より徒歩5分
四ツ橋筋から北新地本通りを入ってはじめの交差点。コンビニ「ポプラ」の目の前。
年末年始の営業予定:12月31日まで営業、1月6日から

国産ビア&ワイン酒場molto!!
大阪市北区芝田1-1-3 阪急3番街南館 1F Tel.06-6374-3067
営業時間:12:00~14:00 (L.O.13:00) 17:00~翌0:30(L.O.23:30) 定休日:不定休(阪急3番街に準ずる)
阪急線梅田駅 徒歩1分 地下鉄御堂筋線梅田駅 徒歩2分
JR大阪駅 徒歩3分 地下鉄谷町線東梅田駅 徒歩5分
年末年始の営業予定:12月30日まで営業、1月2日から

土佐堀オリーブ
大阪市西区土佐堀2-1-12-B1 Tel.06-6450-8182
営業時間:18:00~26:00 (L.O.)定休日:火曜日
地下鉄各線「肥後橋」駅、「中之島」駅から徒歩10分
店内禁煙。クレジットカードは使えません。
年末年始の営業予定:12月28日まで営業、1月2日から