TOTOSK KITCHEN Vol. 12 エストラゴンエストラゴンでつくる
柑橘スープとクリームソース

(2013.03.25)
写真/黒澤義教
みなさん、こんにちは。春です。
桜がこんなにも早く咲いてしまうとお花見のタイミングが難しいですね。
それにしても今年の花粉はすごかったですね。昨年の6倍だったとか。
憂鬱な日々をお過ごしだった方が多かったのではないでしょうか。
花粉症になると粘膜が荒れるので、消化器官や呼吸器官などの粘膜を
丈夫にしてくれる緑黄色野菜や柑橘類を多く摂取するといいそうです。
そこで今回は免疫力アップの効果があるといわれるビタミンAとCが豊富なハーブ
「エストラゴン」とオレンジを組み合わせよう、と考えました。
エストラゴン! 名前も強そう。
エストラゴンを使ったソースと、そのソースを調味料として使った
オレンジのスープでおいしく元気になりましょう。

♠エストラゴン料理に合わせたい「ナイーム・アモールの音楽」by 吉本 宏

よもぎの一種、高貴な香りのエストラゴン。

エストラゴンは、キク科の多年草で日本のよもぎの一種です。葉は細長く先がとがっていて、濃い黄緑色で光沢があります。エストラゴンはフランス名で、英語ではタラゴンと呼ばれます。エストラゴンは小さなドラゴンを意味するそうです(やっぱり強そう!)。もとはアラビア語のタルクーンに由来し、爬虫類や蛇、犬に噛まれたときの毒消しに使われていたという説と蛇がとぐろを巻いているように見えるところから、という説があるそうです。

フランス産(フレンチ・タラゴン)とロシア産(ロシアン・タラゴン)があって、より風味の強いフレンチ・タラゴンが料理に使われています。

エストラゴンは、エスタゴールと呼ばれるアニスに似た甘い香り成分を持ち、この成分が高貴な香りを醸し出します。熱に弱いので生で使うとよいそうです。このデリケートで高貴な香りは、肉や魚の臭みを和らげたり、バターやクリームの脂肪分をスッキリさせる効果があります。そのため今回のスープは、クリームが入っているとは思えないようなスッキリとした味わいになっています。「エストラゴン」ってよく聞くけど、どんな風味だっけという方は、ぜひこのレシピを試して、この香りを体験してだきたいと思います。


エストラゴン(フレンチ・タラゴン)

柑橘スープ


オレンジの皮をむき実だけ取り出す

材料4人分
たまねぎ 1個(1cmのみじん切り)
セロリ 1本(1cmのみじん切り)
マッシュルーム 12個くらい(石突きを取って半分に切る)
じゃがいも 大3個(8等分)※今回は「さやか」
グリンピース 60g
オレンジ 1個(皮を剥き、実だけを取り出し一口大にカット)
ホワイトアスパラガス 3本(皮を厚めに剥き、1センチにカット)
鶏もも肉 250g
オリーブオイル 大さじ4
クリームソース 適量(作り方は下記)
コンソメキューブ 1個
塩 小さじ1/2
こしょう 適宜
水 1.2ℓ
飾り用エストラゴン お好みの量(みじん切り)

作り方
1.大きな鍋にオリーブオイルを入れ、たまねぎとセロリをしんなりするまで炒める。
2.さらにマッシュルーム、じゃがいも、ホワイトアスパラガス、鶏肉をいれ5分ほど炒める。
3.水、コンソメ、グリンピースを入れ、アクを取りながら、じゃがいもが柔らかくなるまで約25分煮る。
4.最後にオレンジとクリームソース150mlを入れ、ひと煮立ちしたら塩、こしょうで味を整える。器に盛り、飾り用のエストラゴンをのせる。

クリームソース

材料4人分
材料A
エストラゴン 大さじ1(みじん切り)
お好きなハーブ 大さじ1(みじん切り)※今回はチャービルとイタリアンパセリ
生クリーム 150ml
バター 50g
塩 小さじ1/2
こしょう 適宜

材料B
白ワイン200ml
エシャロット 1個分/50g(みじん切り)
ブーケガルニ 1個
ブイヨン 1個
水 200ml

作り方
1.材料Bを小鍋に入れ、中火で1/3になるまで煮詰める。
2.ブーケガルニを取り出し、弱火にして材料Aを入れまろやかになるまで混ぜる。
3.火を止め、ハーブ類をいれ軽くかきまぜて完成。

ハーブバターを常備しておもてなし上手。

今回のソースにハーブ類のみじん切りを使いましたが、フランス語でハーブ系スパイスのみじん切りのことを「フィーヌゼルブ(Fines Herbes)」と言います。日本で言う薬味といったところです。イタリアンパセリ、チャービル、チャイブ、エストラゴンなどのハーブをみじん切りにしてソースやドレッシングに混ぜて使います。またマフィンやクッキーに混ぜて使ったりします。また、オムレツに混ぜて焼くと卵の生臭さがなくなります。

このクリームソースをさらに簡単に作るには、ハーブバターをつくっておくといいでしょう。常温のバター200gにフィーヌゼルブ大さじ10とレモン汁大さじ1を混ぜこんで、パラフィン紙かラップに包んで冷凍しておくだけです。

ハーブバターを準備しておけば、急な来客に役立ちます。パンに塗るだけでもおいしく、野菜をソテーしたりパスタにからめたり、とくに焼き魚にのせるとあっという間にレストランの味をつくれます。もちろん、クリームソースも同じように使えますので、フリーザーに常備して、ぜひおもてなし上手に。


クリームソース

柑橘スープ

野性味の中に高貴さを秘めたナイーム・アモールの音楽

フランス語で「小さな竜」を意味するエストラゴンは、その高貴な香りの奥に野性味を秘めた色香を感じさせるハーブです。カルダモンやアニスにも通じる秘薬のような香りは、ドレスアップに合わせて楽しむ大人の香水のようです。パリ18区で育ち、16年前にアメリカのアリゾナ州のツーソンに移り住んだシンガー・ソングライターのナイーム・アモールは、反対に野性味の中に高貴さを秘めた、エストラゴンの個性を鏡に映したのようなアーティストです。

砂漠の街に住むフランス人が、ブラジルのボサノバ・テイストの音楽を演奏する、そう聞くだけで彼の音楽のユニークさが想像できるでしょう。オープニングの「クレオール」から、ビンテージのアンプで鳴らすようなギターの音色が、遠い記憶を呼び覚ますトリガーとなってリスナーを南の楽園へと誘います。清々しいファルセットや口笛は、青い大空の広がる架空のリゾート地に連れだされるようなエキゾティックな爽快感にあふれています。そのダンディーな歌声は、ときにセルジュ・ゲンズブールやアンリ・サルバドールの面影を感じさせますが、ワイルドにふるまってみても、どこか育ちのよさを感じさせるところが彼の音楽の魅力でもあります。異文化が結びつくところからは、かならず新たなものが生まれてきます。エトランジェである彼の異邦人的な感覚が、ジャンルや国籍を感じさせない彼独自の音楽を形作っています。

おいしい柑橘スープのあとは、彼の音楽を聴きながら、フカフカのソファに身をゆだねてペルノのソーダ割りを飲んでみるのも一興です。

文/吉本 宏

Naim Amor / Dansons