ほろ酔い倶楽部 - 5 - 「リサのワインセミナーに参加した」@マンダリンオリエンタル??反応したアナタはプロですか??

(2010.01.07)

年末に日本橋のマンダリンオリエンタルで行われたリサ・ペロッティ・ブラウンさんのワインセミナーに参加してきました。いわゆるティスティングの会です。
リサ・ペロッティ・ブラウンさんはワインを世界で初めて点数にして表現したアメリカのロバート・パーカーさんのグループの一員で、主にアジア圏での代理人をされています。アメリカ生まれで現在はシンガポール在住。ロバート・パーカーさんは一人で全部飲んでいたわけじゃかったのですね。チームには何人かのワインのプロがいるようです。
リサさんは写真のとおり妙齢の美女。そしてやはり肝臓が強そうです。

美しいリサ・ペロッティ・ブラウンさん

まず「そもそもティステイングとは何か」「テイスティングとは何を味わうのか」というリサさんの話からスタート。ワインの客観的な評価のしかたとはどういうものか。彼女たちはソムリエとはまったく違う立場から、ワインの仕入れや価格と味とのバランスといったことを追求しているのです。
その観点は10以上に細分化されます。

①品質の見極め
②ワインの品質の指標
③欠陥について
④成熟度
⑤強弱と凝縮感
⑥バランス
⑦アロマとフレーバー
⑧複雑性
⑨フィニッシュ
⑩その他
・熟成能力、産地の特徴、コストパフォーマンス、食事との兼ね合い、独自性

みなさん真剣に試飲しています

たとえば作り手にとってもっとも難しいといわれる⑥のバランス。すべての要素が調和しつつ、それぞれが高めあっている状態を「良し」とするのだそうです。そしてその最高の状態を表現する言葉として「SEEMLESS」(=つなぎ目がない)という言葉を使うのだとか。この言葉を知ってるだけで、ちょっと使ってみたくなります。でもそのためには本当にバランスのいいワインに出会わなくちゃですが。

この日ティスティングしたのはシャルドネを主体とした白ワイン5本、ピノノワール主体の赤ワイン5本、かベルネソーヴィニヨン主体の赤ワイン5本です。
白の1本目はHenri Bourgeois Sancerre2007.
上品な青っぽい酸味の中にひらひらと手招きするような花の香り。後味にうっすらと石灰のような余韻があります。少し置くとグレープフルーツのような柑橘の味が立ちます。
…というのは私の解説で、リサさんの解説は次の通り。
「ソーヴィニヨン・ブランは収穫の時期により味が変わります。作り手がどういうワインをつくりたいかでいつ収穫するかを決めます。ハーブ、ピーマンのような香りは早摘みの証拠。発酵によりグレープフルーツ、パッションフルーツのような香りが加わります。最初のインパクトに比べて余韻が長く、非常によい状態のワインです」
… 勉強になります。

 

 

白ワインのなかで非常に美味しかったのは3本目のOlivier Leflaive Puligny Montrachet2006.
リサさんは「シルキー」と表現していました。私のまだまだ浅い経験から感じるに、よいモンラッシェはアミノ酸系の旨みのような味が広がる気がします。これ1本で肉まで食べられる白ですね。

写真はクリックで拡大します。
白ワイン

 

 

ピノノワールの赤ワインで大変美味しかったのは1本目。Frederic Magnien Morey ST Denis 1er cru Blanchards2002.リサさんも「香水のような香り。バニラ、すみれ、ブラックべりー、チョコレート…と、複雑な層がしっかりある。ブルゴーニュのよさが出ています」と絶賛。
この後、イタリアのピノノワールが最後に出てきましたが、同じぶどうの品種でも国によってまたカラーが違うのだなと驚きました。イタリアのピノノワールはフランス・ブルゴーニュのそれに比べて男性的で硬い感じがします。

ピノノワール

 

 

カベルネソーヴィニヨンの5本はあえてボルドーを1本も入れず、テイスティング。
1本目のIl Borro2005はトスカーナ。リサさんいわく2005年のボルドーと比較するとこちらのほうが今十分飲める味わいなんだそう。「構造がはっきり見える」という表現をされていました。
イタリアのワインだからかどうか、なんとなくエスプレッソの匂いがする、と思ったら、リサさんもそうおっしゃっていました。

カベルネソーヴィニヨン

 

 

 

さてさて15種類、口にふくむだけのティスティングでもかなり疲れるのですが、リサさんは1日50~100種類ティスティングすることも珍しくないそう。記者団から「1日に100種類ティスティングして同じ基準で判断できるのですか?」という質問が飛ぶと「白黒ははっきりしない。50種類が限界だともいえるし、それ以上わかるときもあって、日によって違う。ボルドーを樽からティスティングしたりするともっと少なくなります。白は簡単ですが、甘口のワインは疲れます。プロとしてその日の限界を感じたら止めることにしています」と正直なコメントでありました。

ロバート・パーカー・チームはただ恣意的に点数をつけるのではなく、その裏側にはワインを「売る」という目的があるのです。「点数ってどうよ」と言うのは簡単ですが、やはり指標は必要なのかもしれません。特に今のアジアにとっては生半可なセラーの名前の一人歩きよりはよっぽど消費者に親切な気がします。

私もこれからは「89点と92点の3点の差はなんやねん」と意地悪なことを言わず、3点の差に何かを感じ取りたいと思いました。

 

写真はクリックで拡大します。
ワインの点数を出すためには細かな基準が設定されていた。今回主宰した株式会社ミレジムでは、85点以上のワインを輸入している。
リサ・ぺロッティ・ブラウンさん、ミレジム社長のアーネスト・シンガーさんと、筆者。壇上に駆け寄って果敢にも記念撮影。
ワインを論じるリサさんはとても真剣。個人的には今ピノノワールを多く自宅でティスティングしていることが多いそう。

筆者プロフィール

森 綾(もり・あや)

大阪市生まれ。現在『ミセス』『婦人公論』『朝日新聞』などにレギュラー執筆しつつ、ミシュランで1つ星をとった串カツとワインの元祖な店『六覚燈銀座店』のPRも手伝う。ある雑誌の取材でボルドー・サンテミリオンを取材した際、丘のてっぺんの教会で『神様、私は一生美味しいワインが飲めますように』とお祈りしてしまったばっかりに、すべての運がそこに集約されているという人生(笑)。著名人インタビューは1,000人を超え、近著は9冊目となる『キティの涙』(集英社)。恋愛や結婚に関するエッセイも多く『マルイチ』(マガジンハウス)は離婚をポジティブにとらえる時代の先駆けとなった。Yahoo! ブログ『森綾のおとなあやや日記EX』はうまいもの満載とのうわさ。