カリフォルニア・ローヌ品種に注目!
地中海生まれの秘宝「グルナッシュ」の魅力
(2016.08.03)
原産地スペイン北東部のアラゴン洲では、「ガルナッチャ」として親しまれ、その名の由来は、朱色に輝く美しい宝石「ガーネット」とも伝えられている。一方 イタリアでは、「カンノナウ」と呼ばれ、世界各地で様々な呼び名を持つユニークな品種グルナッシュ。ロゼ、白(グルナッシュ・ブラン)赤(グルナッシュ・ノワール)そしてグルナッシュ・グリ(突然変異種)と多様な顔を持ち、食事との相性も絶妙なフード・フレンドリーな品種だ。近年アメリカを始め世界で注目を浴びている「グルナッシュ」の魅力を紐解いてみた。
《南のピノ・ノワール?! グルナッシュ》
南ローヌのシャトー・ヌフ・デュ・パプは、グルナッシュ・ブレンドの最高峰ワインとして世界的に知られるが、品種の明記がないフランス産ゆえ、このワインがグルナッシュ主体であると知る人が少ないのが残念だ。
長年、ブレンドの補助・ロゼ用として知られてきたが、近年、100%単一品種やグルナッシュのブレンド比率が高い良質なワインが脚光を浴び始めた。
この品種をこよなく愛する名手が手がけると、チャーミングな赤果実の香りや味わいと共にスパイスとアーシーなニュアンスが楽しめ、しなやかなタンニンと心地よい酸のバランスが絶妙なワインに仕上がる。
「南のピノ・ノワール」との呼び声も高く「新たなグルナッシュ時代の到来」に期待が寄せられている。
《カリフォルニア・ローヌ品種の黄金郷 シエラ・フットヒルズ》
一攫千金を夢みて世界各地からの移民であふれた「ゴールドラッシュ」とアメリカのワイン文化発祥の地 としても知られる。
また、サンフランシスコのアメリカン・フットボールのチーム名「49ers」は、「ゴールド移民大移動」の年1949より名付けられ、チームカラーの赤(赤土)とゴールドからもこの地の歴史を読み取れる。
世界屈指のワイン醸造学部を有すUC Davis校にも近く、ジンファンデル、ローヌ品種をはじめ多様な品種が育つ産地に生まれ変わっている。
西部開拓時代の映画のワンシーンを彷彿とさせ、今なお古き良き時代のアメリカの街並と開拓者精神(パイオニア・スピリット)を残す趣のある産地だ。
オーガニック栽培&ローヌ品種のパイオニア
《シダーヴィル・ヴィンヤード Cedarville Vineyard》シエラフットヒルズ〜エルドラド〜
シエラ・フットヒルズで最初に良質なグルナッシュ・クローン(シャトー・ボーキャステル/グルナッシュ・ノワールA)を植樹したパイオニア・スピリットあふれる造り手が、シダーヴィルのジョナサン・ラカス&スーザン・マーカス夫妻だ。
ワイナリー名のシダーヴィルとは、ゴールドラッシュ時代に栄華を極めた街の名。この地に脈々と流れるパイオニア・スピリットへの敬意と自分達の思いを重ねあわせているのだろう。
ローヌ品種に最適な地と巡りあうまで旅を続け、人里離れたこの地にワイナリーを構えた理由を聞くと、「南仏の様にミネラル豊かな花崗岩土壌を持つこの地に大きなポテンシャルを感じたんだよ! 25年前、自ら畑の開墾に挑み、僕たちの自己資金で思い描くワイナリー建設をするのに適した土地だったしね!」と当時を振り返りながら熱く語ってくれた。
ナパヴァレーを始めとする数々のワイナリーで醸造経験をつみ、10年間は、シリコンヴァレーのサラリーマン努めで資金調達に励んだという。今なお畑の開墾〜栽培〜醸造そして販売までを全て二人でまかなう数少ない造り手夫妻だ。
《造り手夫妻とグルナッシュ・ノワールの素顔》
本来、グルナッシュは「センス・オブ・プレイス」〜産地の特徴や気候〜を豊かに表現し、栽培方法やワイン造りに非常に敏感で繊細な品種。
ジョナサン・ラカス氏曰く、「栽培にとても手がかかる品種だけれど、収量をおさえた丁寧な栽培とワイン造りをすれば、それはそれは、素晴らしいワインになるんだよ!」
「太陽を好み乾燥に強いけれど、ギュッと実の詰まった大きな房は、カビや病原菌には非常に敏感。成熟中に果実の糖度があがりやすく、アルコール度が高めにしあがるけれど、それもグルナッシュの特徴だからね! シダーヴィルでは、骨格をもたせアルコール感を和らげるため、シラーをブレンドして仕上げるんだよ!」とのこと。
色も淡く、ぶどうが熟しすぎると色がぬけてしまうため収穫のタイミングの見極めや日々の畑の丁寧な手入れがとても大切なようだ。
「映画『サイドウェイズ』でピノ・ノワール人気が高まるまでは、色の淡いワインにみんな冷ややかだったね!あの映画のお陰で、色の淡いグルナッシュが非難されることもなくなったよ!」と笑いながら語ってくれた。訪問客には時間をおしまず、造り手自ら笑顔とジョークでご自慢の畑を案内し、試飲へと導いてくれる。そんな彼らの暖かい人間性とワインへの真摯な思いが、 生産量わずか150ケースのグルナッシュにとてもよく表現されている。美しく朱色に輝く透明感ある色合い、赤い果実やスパイスの香りが豊かで、奥深くチャーミングな味わいと心地よい酸とのバランスが絶妙。エレガントな仕上がりで食事、心、体に寄り添う優しいワインだ。
シダーヴィルのワインの収量は、1エーカーあたり2−3トン。最高級ワイン並みの品質とオーガニック栽培への拘りの丁寧な畑仕事で生まれるブドウは、近年、カルトワイン生産者への供給もふえている。センス・オブ・プレイス(土地の表情)を最大限に引き出す丁寧なオーガニックのぶどう栽培を続け、この土地とそのスピリットを大切に守り続けようとする真摯な姿勢に心うたれた。
《インターナショナル・グルナッシュデー 9月16日 》
今年で第7回目を迎える「インターナショナル・グルナッシュデー」は、9月の第3金曜日、9月16日。世界中の愛好家やワインプロフェッショナルが「グルナッシュの魅力を分かち合って楽しもう!」と機運が高まっている。
グルナッシュ・アソシエーションがSNSを通じて全世界に呼びかけ、参加レストランや愛好家のプライベート・パーテイーのスポットを登録すると、ワールドマップにピンが立ち世界発信される。
世界地図 ⇨ http://bit.ly/1PtNXm4
エントリー ⇨ http://bit.ly/29t5648
日本でもグルナッシュを楽しむ特別企画やワイン会をプランし、SNSを通して世界の愛好家と交流を楽しんでみてはいかがだろうか? 地中海生まれのグルナッシュの穏やかな太陽の優しさを心と体で感じてみるのも面白いワインの楽しみ方になるだろう。