ワルメンシェフ、拳杉槙一さんの
『アドニス・テーブル』へ!

(2011.10.21)

ワルなルックスと、繊細な料理。
その落差にドキドキ。

テレビ番組『スタードラフト会議』(日テレ)で紹介されて以来、人気を博しているワルメンシェフこと、拳杉槙一さん。テレビ・雑誌などで拝見する拳杉シェフは、サングラスをかけモデルかと見まごうワイルドなルックス。およそ手に包丁を持ってお料理などするようには見えない風貌なのに(失礼!)、彼が創るフランス料理は味が本格的という評判を耳にしこれは自分で見て、味を確かめてみたい! ということで青山にあるレストランに伺いました。

拳杉シェフのお店『ADONIS TABLE(アドニステーブル)』はプライベート・レストランで一日ランチ1組、ディナー1組しかお客をとらないシステム。また、既存のメニューというのも存在しないため電話で予約した時点で、料理の好き嫌いをお伝えし、料理の皿数に合わせてシェフが旬の食材をメインに使った料理を考案するというスタイルを取っています。お客様の数を限定する代わりに、それぞれの要望に沿ったオリジナルな食事が楽しめるというわけです。また、プライベート・レストランのためお店の住所は予約をした時点でお店からお伝えする形をとっており、看板などいっさい出していないため隠れ家レストランにお邪魔するような高揚感が味わえます。
 
 

レストランに入ると、可愛らしくデコレートされた空間がまず目に入ります。明るい白がメインの店内に優しい色あいのカーテン、お花、ガラスでできた装飾品などが店内を華やかに演出していて、とてもエレガントな内装なのに、どこかほっとするような空間になっています。

いざ、テーブルに案内されると近隣している正面のキッチンから拳杉シェフが「こんにちは!」とにこやかな笑顔でお出迎え。キッチンとテーブルの距離が近くてお料理をしているきびきびした姿がしっかり見え、いやがおうにもテンションは上がります。


『ADNIS TABLE』この日の料理

・食感が楽しい生ハムとイチジク、パルメジャーノとブラックペッパーのパイ

・シャティーニのスープ、トリュフの香り。

・牛肉のグリル、インカのめざめピューレ付き

・チョコレートケーキ

・シェフのスペシャリテ
 赤肉メロン・ポートワイン風味
 鴨のローティ、ソースポルト
 サーモンミキュイ、ソースエピナ

食事の前に、店内にいらっしゃる美人ソムリエ、松村由美子さんがお料理にあうワインを選んで下さいました。『ADONIS TABLE』ではフランス料理にあう様々なフランスワインを豊富に取り揃えており、専門知識豊富なソムリエさんと相談しながらチョイスができるためワイン通にも喜んでもらえるそうです。


秋にぴったりの口当たり
シャティーニのスープに感動。

シャティーニ(濃厚なフランス産の栗)のスープ、トリュフの香り。シャティーニというのはフランス産の栗のこと。飲む前からトリュフの芳香が鼻をくすぐります。ひと口飲むと栗の甘さがふわっと口に広がり、こってりした濃厚なクリームスープは少し肌寒くなってきた秋の夜によく合います。フランス産の栗を使うところにも拳杉シェフの素材へのこだわりを感じ取れます。少しお値段が張るけれども、例えばうずら1つにしても空輸のもの、オマールエビはブルターニュ産の最高級なものを使うそうです。

震災前までは仙台の有機野菜をずっと使っていたそうで、拳杉シェフ曰く「野菜の発色が全然違うんです。とにかく!」。お料理のお皿を飾る葉ひとつをも厳選するというほどのこだわりよう。また、野菜の種類も多種多様なものを使うようにしているとのこと。野菜に限らず食材の多様性にこだわるが故に、おのずと自身の料理の幅が広がっていくそうです。残念ながら震災の被害で先述の仙台で買いつけていた農家の野菜は流されてしまい、その方のためのチャリティー・ディナーも主催されたとか。コワモテ拳杉シェフの意外な(といっては失礼ですが!)優しい人柄が垣間見れたエピソードでした。

メインはオトコマエな牛肉のグリル。

この日のメインは牛肉。インカのめざめピューレがアートのようにお皿を豪快に飾っています。

拳杉シェフがお料理で一番拘るところはズバリ「火加減」。「肉も魚も火入れに一番こだわる」そうです。牛肉は鹿児島産黒毛和牛でランクは最高級のA5を使用。その豪華な食材を外側をカリカリに、そして中は赤身が残る絶妙なレア加減で、口に含むとお肉のやわらかさと外側のカリカリ感のコントラストが楽しめます。また、ペッパーのピリっとしたスパイスが味全体を引き締めています。拳杉シェフが腕によりをかけた黄色のピューレは、「インカのめざめ」という品種の最高級のじゃがいもを燻製してから、裏ごししてピューレにしたというとても手間がかかっているもの。ひと口食べたとき、燻製の濃厚な香り立つ味から一瞬じゃがいもとは解らなかったほど! こちらの力強い味のピューレは食通の男性も唸る逸品だとか。

ふわふわ感がたまらないチョコレートケーキ。

ラストのデザートはふわふわな食感のチョコレートケーキ。甘いものに目がないという拳杉シェフ、デザートまでしっかりお客様を魅せる術を知り尽くしています。

あまりの美味しさに「これどうやったらこんなフワフワに作れるんですか?」と聞いたところ、「これはね…」と気さくに教えてくれようとしたのですが、話している途中で企業秘密だということに気づき、慌ててはにかみながら「ひみつ!」とはぐらかされてしまいました。クールなのにちょっぴり天然でおちゃめな所もあるシェフ、女性ファンはこういうギャップにときめいてしまうのかも知れません。


拳杉槙一シェフにインタビュー

素晴らしいお料理をたっぷり堪能した後、一息いれた拳杉シェフにお話を色々をお伺いしました。

 
■拳杉槙一 プロフィール

(こすぎ・しんいち)1971年生まれ 東京都出身。 料理人になったきっかけは「子供の頃、料理をしたら、皆が笑顔になったから」。和食・洋食・中華・出張料理、と幅広く経験を積み、フランス料理の道へ。『タテルヨシノ』を経て2010 年、青山に自身の料理サロン『ADONIS TABLE』をオープン。美意識を磨くためファッションブティックやインテリアショップでかわいい物やオシャレな物を常にチェック。花屋もよく見て回るが、花のブーケがサラダに見えてしょうがない、とか。休日は極真空手の練習を友人としたり、筋肉トレーニングに励み、腹筋が割れているか常にチェックしている。


『美と食の融合』を目指す
プライベート・レストラン。

― 幼少の頃は夢はなんでしたか?

「小さい頃から料理が好きでした。母親が病弱だったため料理は決まって出前か家政婦さんが作ったものだったんです。ただ、家政婦さんが作った料理の味がイマイチで……(苦笑)。自分で作ってみようと小学生の頃に自己流で料理を始めました。僕の作った料理を母親が美容室に行った時においしいと話してて、そのウワサが広まって中学生のころにはあちこち呼ばれて出張して料理を作るようにまでなりました。自分が作った料理を食べて、人が喜ぶ顔を見るのが一番嬉しかったですね。その頃から料理への道を意識し始めていたのかも知れません。」

― 料理人になったのはいつ頃ですか? また『ADONIS TABLE』をオープンするに至るまでの経緯も教えてください。

「18歳の頃からですので、かれこれ22年経ちました。最初は和洋中すべてやっていたんですが、段々フランス料理に特化していったんです。そして『タテルヨシノ』で修行しました。そこで『料理のひと皿に魂を入れる!』を実践している現場を目の当たりにし、衝撃を受けたと同時にすごく勉強になりました。ただ、一日中厨房にいるため、食べてくれるお客様の顔が見れず、声も聞けない状況だったので、だんだんとお客様の声が直接聞きたいという願望が強くなっていったんです。それで、お客様と対面式でお料理がしたいという夢が出てきまして。自分が出す料理に対してのお客様の反応を見たくてそれがきっかけで昨秋『ADONIS TABLE』をオープンしました。」

―『ADONIS TABLE』は会員制のプライベート・レストランですがこういった形式にしたのはなぜですか?

「自分がお店を開くにあたって、お料理だけでなくワインや食卓すべてを含めて美しく演出したいという考えがまずあったんですね。お客様とのコミュニケーションを大切にしつつ、『美と食の融合』を目指してたくて。そうなるとサロンのような形式のほうが好きなように演出できるかな、と。僕の父親がファッション・デザイナーというのもあって昔から色彩や美に関しては人一番こだわりは強いと思います。料理の色にもすごく気を使いますし、お皿でも従来のレストランだと食器洗い機に入らないような大きいお皿や繊細なお皿もうちだとふんだんに使えるんです。

あと、この空間だとレストランほどかしこまらず、かといって家ほど気を抜かずに融通が効くところも気に入っています。居心地のよい空間で、お客様のご要望に応じてテーブル・コーディネートもオプションでやっているので、ちょっとした集いやパーティーなどにもぜひ利用してほしいですね。この間はハワイアンテイストが大好きな人たちが集まったんですが、ウクレレを持ってきて弾いたりと和気あいあいとしてて楽しそうでしたよ。そういったテーマを決めてサロン会のように使ってくれても面白いですよね。」

料理の味見をした後は腹筋の嵐!?
スタイルを維持。

― 美へのこだわりがよく伝わってきました。ところでシェフご自身すごくほっそりしていてかっこいいのですが、プロポーション維持で気をつけていることはありますか? またとてもお洒落なシェフですがファッションなどでこだわりはありますか?

「食事に関していえば僕はお肉(特に赤身)をすごく食べるんです。びっくりするくらい! 野菜、野菜、肉、肉、肉、野菜、野菜……という具合に。逆にご飯の量は少なめです。あと、デザートは別腹ですね(笑)。甘いもの大好きです。プロポーションの維持ですが、10年前から極真空手をやっていてジムにも通っています。たとえばクリームソースの味見をした後は腹筋の嵐とか!(笑)まぁ、それは冗談としても、僕的に自分のお腹がつかめるほど出てしまうのはありえないですね。もうね、切り落としたくなっちゃう!(笑)。ファッションは体の線がきれいに出るものを好んで着ます。よく細いですね~と言われるんですが、夏にタンクトップを着ると筋肉があるのでがっしりして見えるんで驚かれたりもしますね。」

― 最後に、シェフの今後の夢を教えてください。

「夢は『おしゃれなダイニング・ライフの伝道師』になることです。義務でお料理をするのではなくて、楽しくおしゃれに料理をするライフスタイルごと発信していきたいです。また、テーブルセッティングやお皿にもこだわる楽しみを伝える手段として、食材や料理器具、食器メーカーと協力してキッチンライフを提供できたら楽しいかな、と思います。プライベート・レストランの他にも料理教室を開催しているんです。人と繋がることが好きなので今後もっとクラスを増やして行きたいと思っています。男性の参加者も多数いるので男女問わずぜひ料理が好きな人に来てほしいです。」

お洒落なダイニング・ライフの伝道師を目指して。

硬派でちょいワルな印象とはうらはらに言葉をひとつひとつ選び、丁寧かつ気さくに質問に答えてくれた姿がとても印象的でした。それと同時にストイックなまでの美意識がお料理の細部にまで反映されていることに感動すら覚えました。料理を食べてくれる人の笑顔が見たい —– 拳杉シェフが幼少の頃に感じた喜びは、今でも変わらずしっかりとシェフ自身を突き動かす原動力となっています。経験に裏付けされた本格フレンチを今度どのような高みにまで持っていくのか、そしておしゃれなダイニング・ライフの伝道師としての今後の活躍がますます楽しみになってきました。みなさんも拳杉シェフが演出する素敵な食の空間に足を運んでみて、魅力満載のフレンチをシェフのキャラクターと供に味わってみてはいかがですか?

 

ADONIS TABLE

Tel: 03-6427-3728
住所は東京都青山。詳細はご予約の際にお伝えいたします。
11:00 ~ 21:00 (ラストオーダー) 予約制
火休

プライベートレストラン・プラン(1日昼1組、夜1組)
旬の素材を使ったシェフのおまかせコース
ランチコース お一人様4000円~
ディナーコース お一人様8000円~
ワイン会、パーティプランあり。

ADONIS TABLE
拳杉槙一オフィシャルブログ