TOTOSK KITCHEN Vol. 5 コリアンダー(パクチー) コリアンダーでつくる
優しいスープと濃厚パクチーソース

(2012.08.22)
撮影/黒澤 義教
みなさん、こんにちは。
先日、モロッコ料理屋さんがラマダンでお休みでした。
夏の一カ月間、日の出から日没の間断食をするそうです。
オリンピック男子サッカー準々決勝で日本と対戦したエジプトの選手も大変だったことでしょう。
今回は、このラマダンにはかかせないというお腹にやさしい栄養満点スープをご紹介します。
夏真っ盛りで弱った胃にも最適!

♠コリアンダー料理に合わせたい「モダン・フォルクロリック・トリオの音楽」by 吉本 宏

世界中で愛されるクセのあるハーブ。

今回のスープで使うハーブは、150カ国以上で広く愛される国際派ハーブ(?)、コリアンダーです。コリアンダーはセリ科の一年草で、消化促進、整腸作用、食中毒予防効果があるとされます。エジプト時代から薬用や調味料として使われており、最古のスパイスの一つです。

コリアンダーの葉は、パクチー(タイ語)、チャイニーズパセリ(英語)、香菜(中国語)、ユーンスイ(広東語)、ザウムイ(ベトナム語)、シラントロ(スペイン語)、コエントロ(ポルトガル語)など、多くの名前を持っています。さすが国際派(?)。

用途が広く、栽培も簡単なことから世界中で愛されていますが、やはりエスニック料理は特別。タイのトムヤムクン、メキシコのサルサ、ベトナムのフォーや生春巻き、インドのカレーなど各国を代表する料理に欠かせないハーブです。

日本へは、ポルトガル人によって長崎に持ち込まれた後、京都を経て、1683年に小石川御薬園(現在、小石川植物園内)に伝えられたとのことです。江戸時代からあったというのに、日本人の食卓にのぼるほどメジャーになれなかったのは、あの香りのせいでしょうか。和名でカメムシソウ(!? )なんて呼ぶらしいので……。パクチー大好きな私としては、大葉と同じレベルでどこのお店にも並べていただきたいと切に願う今日この頃。

「コリアンダー」というと葉よりも乾燥した種子を連想する人も多いでしょう。その粉末はオレンジのような香りを漂わせるスパイスとして使われます。葉の香りとは全く違うのが面白いところです。葉をミルクに入れるのは想像しただけで恐ろしいのですが、種子はミルクや紅茶に入れて飲むと素敵です。

コリアンダーの葉(パクチー)の香りが苦手な人も多いようですが、食べ慣れると病みつきになってしまうはず。今回作るスープとソースもきっと病みつき間違い無し!です。
 

パクチーのスープ(ハリラスープ)


トマトのすりおろしを作る時、横半分にカットして、切り口をおろし金にあてるとうまく皮だけが残ります。

材料 4人分

パクチー(葉・茎 細かいみじん切り) 大さじ2
玉ねぎ(すりおろす) 1個
牛肉or鶏肉(一口大) 200g
レンズ豆 50g
ひよこ豆(一晩水に浸して薄皮をむく又は缶詰) 50g
米 50g
シナモンスティック 1本(またはシナモンパウダー小さじ1)
ショウガ(みじん切り) 1片
オリーブオイル 大さじ3
塩 小さじ2
こしょう 小さじ1/2

トマト (すりおろし皮を除く) 3個
トマトペースト 大さじ1
ブイヨン 1ℓ(市販のものをお湯に溶かして使ってもいい)
小麦粉 大さじ2(水大さじ4で溶く)

レモン お好みで

作り方
1. 大きめの鍋にオリーブオイルとショウガを入れ弱火で香りが出るまで炒め、すべての材料(トマトペースト/小麦粉をのぞく)を入れ、灰汁を取りながら豆が柔らかくなるまで煮る。
2. トマトペーストを入れ、水で溶かした小麦粉でとろみをつけて完成。お好みでレモンをしぼってお召し上がりください。

濃厚パクチーソース

材料 4人分

パクチー 1束
オリーブオイル 大さじ4
クミンパウダー 小さじ1/2
レモン(絞り汁) 小さじ2
塩 少々
こしょう 少々
 

作り方
全ての材料をフードプロセッサーに入れ、なめらかになるまで攪拌する。プロセッサーがない場合は、細かくみじん切りしたパクチーとその他材料を乳鉢で混ぜ合わせる。

パクチーを上手に使いこなして楽しい食卓。

今回は、ラマダンの時期によく食べられる栄養満点のハリラスープをご紹介しました。イスラム教の各家庭ではそれぞれ味が異なるそうです。豆や米も入っているので、腹もちも良いと思います。断食中のからっぽなお腹にいれるスープですから香辛料は強くありませんが、濃厚で栄養満点。このスープは心も満たしてくれそうなやさしい味わいです。朝食やブランチにおすすめです。

トマトのすりおろしを作る時、横半分にカットして、切り口をおろし金にあてるとうまく皮だけが残ります。大量に作る場合は、トマトを湯むきしミキサーで一気に攪拌しまう方が簡単です。

このスープは温かいうちに食べましょう。何度も火を入れたりして時間が経つとお米が水を吸ってリゾットみたいになりますがそこにパルメザンチーズをかけても、また美味しいです。お米の代わりに、マカロニにしてもOK! クスクスにかけても美味ですよ。

濃厚パクチーソースは、レモンが不思議とパクチーのクセのある香りを和らげてくれます。サラダのドレッシングにしても、パスタにからめても、オムレツにかけてもOK。試しにカボチャのクリームスープにかけてみたら、とってもおいしかったですよ。

みなさんも意外な組み合わせを見つけて、パクチーを普段使いしちゃいましょう!
 

● 9月22日(土・祝)音楽とTOTOSK KITCHENのイベントがあります。詳しくはこちら

過ぎゆく夏の音を奏でるモダン・フォルクロリック・トリオの音楽

コリアンダーの独特な香りの虜になると、もう後には戻れません。好ききらいは分かれても好きな人をとことん惹きつけてしまう、そんな個性的なアーティストのようなハーブです。

アルゼンチンの民族音楽的なサウンドを聴かせる“モダン・フォルクロリック・トリオ”のAmpuero Bustelo Livadiotisの3人組は、様々な打楽器や弦楽器を巧みに組み合わせてとても個性的な音楽を演奏しています。

朝もやの中に静かに音が広がるようなタブラやウドゥというパーカッションにバンブーフルート、アコースティック・ギターの弦の響きが涼しい「Padma」や、アフリカの民族楽器カリンバ(親指ピアノ)の瞑想的な音色が澄んだ水のような透明感を感じさせる「Descanso」など、彼らのサウンドはいったん虜になるとちょっと抜け出せない心地よさがあり、アルゼンチン音楽にとどまらない独自の音の世界をもっています。アルバム・ジャケットの写真も様々なお面を組み合わせた個性的なデザインで、こちらも一度見ると忘れられません。

今回のソースのようにコリアンダーの葉(パクチー)をクミンと合わせてみるとまた新たな魅力に出会い驚きます。そう、音楽においてもパーカションなどの打楽器はハーブやスパイスの役割を持っているといえますね。

文/吉本 宏

Triangulo Tribu Trio / Ampuero Bustelo Livadiotis

【イベントのお知らせ】

bar espresso × TOTOSK KITCHEN

9月22日(土・祝)18:00〜23:00

この連載で音楽コラムを執筆している吉本宏さんがDJをするイベント『bar espresso』に、TOTOSK KITCHEN中野エリさんが作る「2種のハーブソースとフムスのプレート」が登場します。エリさんがお店で自らサービスしてくれるので、レシピのコツを聞きたい人は、ぜひこの機会にエリさんを訪ねてくださいね。

場所:『Bar Music』(渋谷区道玄坂 1-6-7-5F)*BRUTUS No.720 で紹介されました。
ミュージックチャージ300円/ドリンク700円〜