ブルゴーニュ注目ワイナリー – 3 – キュヴリエ・デ・オスピス・ド・ボーヌ
その年の評価を決める競売ワイン

(2014.05.01)
カーヴには引き渡し前の樽が並んでいる
カーヴには引き渡し前の樽が並んでいる
畑ごとの個性をそのままに

オスピス・ド・ボーヌの競売では、その年出来たばかりのワインが競売にかけられる。そのワインの出来が、そのヴィンテージのブルゴーニュ全体の評価を決定づけると言われている。そのワインを造っているのが、こちら。そのワインを知るには、まずオスピス・ド・ボーヌの特殊性を理解せねばならない。オスピス・ド・ボーヌは、信者から寄進されたブドウ畑でワインを造っている。寄進した人の畑ごとにワインを造り、特級とか1級とは名乗らず、村名あるいは畑名に、寄進した人の名前を付けている。たとえば、マドレーヌ・コリニャンさんが寄進したマジ・シャンベルタンの畑のワインは、「マジ・シャンベルタン・キュヴェ・マドレーヌ・コリニャン」となり、畑の格付けは表示されず、その下に落札した人の名前がクレジットされて出荷される。現在、オスピス・ド・ボーヌは、61ヘクタールを所有し、赤31、白13、計44種類のワイン、779樽を造っている。畑はすべてグラン・クリュあるいはプルミエ・クリュの格付けだ。

ワイン造りの指揮を執るのは、ローラン・マッセさん。元々はドメーヌ・ベルターニャの醸造責任者を務めていた実力者だ。彼のワイン造りの哲学は「自分の好きな、エレガントでフィネスのあるワイン」。まず畑では、1995年から農薬を使用せず、自然の生態バランスを考えた栽培を導入。収穫後は、果汁の段階から頻繁にテイスティングを繰り返し、味、状態によって、そのワインに最適な対応をすることを心がけている。1994年に現在の施設に移ってからは、赤はステンレスの発酵タンクで15~20日間の発酵。十分な抽出のためにピザージュをする。ルモンタージュはしない。アルコール発酵が終わると、228リットルのブルゴーニュ樽の新樽に入れる。落札されたワインは樽での引き渡しになり、毎年樽を購入するので、必然的に新樽100%となる。キュヴェごとに醸造し、生産量も決まっているので、ステンレスタンクは専用のもの、樽も産地や木の種類、焼きもキュヴェにあわせて用意するという。マッセさんは、オスピス・ド・ボーヌのワイン造りは「メディアからの注目度も高いし、自分をしっかり持って、なにものにも負けない気持ちで取り組んでいる」と語った。

マッセさんにオスピス・ド・ボーヌに入った経緯を聞いたら「オスピスに声をかけられたら断れないよ」とひとこと
マッセさんにオスピス・ド・ボーヌに入った経緯を聞いたら「オスピスに声をかけられたら断れないよ」とひとこと

ワイナリーが競売の前のテイスティング会場にもなる
ワイナリーが競売の前のテイスティング会場にもなる
キュヴェごとに専用サイズのステンレスタンクが用意されている
キュヴェごとに専用サイズのステンレスタンクが用意されている
オスピス・ド・ボーヌが保有するムルソー・プルミエ・クリュ・ポリュゾの畑
オスピス・ド・ボーヌが保有するムルソー・プルミエ・クリュ・ポリュゾの畑
Cuverie des Hospices de Beaune
この記事は、ワインカルチャーを語るWEBマガジン「Wine & Story」から記事提供を受けて掲載しています