TOTOSK KITCHEN Vol. 13 ルッコラルッコラでつくる
グリーンヴィシソワーズとソース

(2013.04.22)
写真/黒澤義教
みなさん、こんにちは。
もうすぐ新茶が出回る季節です。
立春から八十八夜待った5月2日ごろに摘んだお茶が一番おいしいとされ、
これを飲むと無病で長生きすると言い伝えられているそうです。
そんな新茶の爽やかなグリーンを連想するハーブ「ルッコラ」を使った
特有の風味を感じる普段と少し違ったヴィシソワーズと
ピスタチオたっぷりのルッコラソースを作ってみたいと思います。

♠ルッコラ料理に合わせたい「スローフードにかえろう!」by 吉本 宏

クレオパトラの美の秘訣はルッコラ?

ルッコラは地中海沿岸原産とされるアブラナ科の一年草で、−10℃まで耐えられるタフなやつです。栽培が簡単で一年中手に入りやすいことから、あまり旬を感じないハーブですが、もともと地中海の温暖な気候に適したハーブなので、日本ではこれからの季節が一番おいしいのではないかと思っています。

ルッコラはイタリア名、英名ではロケット、和名はキバナスズシロ(黄色い大根)と呼ばれています。花は十字の形をしていて大根の花にそっくりです。

1980年代後半のイタリア料理のブームで、ティラミスなどと一緒にルッコラが日本で広く知られるようになってきました。サラダやピザのトッピングでアクセントとして入っているとおいしいですね。

ルッコラには葉が丸いルッコラ・コルティヴァータ(栽培種)と、より香りが強いタンポポの葉のようにギザギザしているルッコラ・セルバチコ(野生種)があります。噛むとほろ苦く、煎ったゴマのような風味とクレソンに似た辛味があります。この辛味は大根やからしに含まれる成分と同じだそうです。サラダなど生食に向いていますが、クセが気になるときは、加熱して辛みと苦みを和らげると食べやすくなります。

ルッコラはとっても栄養価が高く、ビタミンCはほうれん草の4倍、カルシウムはピーマンの30倍、鉄分はモロヘイヤくらいあるのだとか。毎日の食事のどこかにルッコラをプラスするだけで栄養価グンとアップ! 食欲が無いときはルッコラをかじればいいんじゃないの(!?)と思ってみたり…。

古代ローマ時代にすでに食用ハーブとして栽培され『エルーカ』と呼ばれ、世界三大美女のひとりクレオパトラが、美しさを保つために好んで食べていたといわれています。ルッコラをたくさん食べて三大美女に仲間入りしなきゃ。


左が、ルッコラ・セルバチコ、右がルッコラ・コルティヴァータ

グリーンヴィシソワーズ


好みの量の牛乳でとろみを調節する。豆乳でもOK

材料4人分
ルッコラ 100g(根を切り、ざく切り)
たまねぎ250g(繊維に逆らいスライス)
じゃがいも 200g(皮を剥いてスライスして水にさらす)
キャベツ 200g(2㎝角くらいにざく切り)
水 500mℓ
コンソメキューブ 2個
オールスパイスorナツメグ少々
塩・こしょう適宜
牛乳 200ml(お好みの濃度に調節して下さい)
生クリーム 100ml

作り方
1.大きな鍋にたまねぎ、じゃがいも、キャベツ、コンソメ、水、塩少々入れ煮立つまで中火で煮る。
2.煮立ってきたら蓋をし、弱火で20分くらい、じゃがいもがくずれるまで煮る。
3.ルッコラを入れ30秒ほどしたら火を止め粗熱をとり温かいうちにミキサーにかける。
4.3をボールに移し、冷たい牛乳と生クリームを加え、ナツメグ、塩、こしょうで味を整える。

ソース

材料4人分

ルッコラ 80g(葉のみ)
ピスタチオ 50g(塩味付きでも○、殻から出す)
パルメザンチーズ 40g
レモン 半分(絞り汁)
オリーブオイル 100ml
塩・こしょう 適宜

作り方
1. ルッコラの葉のみをさっと湯がき(5秒程度)、水で冷やす。
2. 水で冷やした後、絞って水気を切る。
3. 材料すべてミキサーに入れ好みのなめらかさになるまで攪拌する。
4. 塩、こしょうで味を整える。

ルッコラを育てて花ごとどうぞ

ルッコラは、育てるのが簡単なハーブです。種を蒔いて2、3日で発芽し、1、2カ月して葉が10㎝くらいになったら収穫できます。種蒔きにちょうどいいこの季節、プランタで気軽に育ててみませんか? ただし虫さんにとってもおいしいハーブなので、穴あきになる前に収穫してくださいね。

ベランダで育てたルッコラに花が咲いたら、エディブルフラワーとして食べられます。サラダに花を添えると食卓が華やかになりそう。ただし、花が咲ききってしまうと肝心の葉が固くなってしまうので気をつけてくださいね。またルッコラはあまり日持ちしません。茎の部分を水につけながら冷蔵庫で保存して2日間で使いきっちゃいましょう! 

今回、ルッコラの葉の部分のみ使用していますが、茎の部分は捨てずにサラダやおひたしに使って下さい。茎にはルッコラの風味と苦み、辛みが凝縮されています。

ヴィシソワーズスープは、これから暑くなってくる季節にぴったりなスープです。作り方は簡単なのに、ちょっとよそいきの上品なあじわいです。このスープは冷蔵庫に入れて保存すれば3日間は楽しめるので、おもてなしの準備を早めにしておくことができます。

ソースにはピスタチオが入っていて、エビ(ゆでても炒めても)と合わせるとおいしさが引き立ちます。また直接天然酵母などのどっしりしたパンに塗って食べてもおいしいので、アペリティフのお供にぴったり。ちょっと濃いめの白ワインやロゼワインと一緒に、テラスやピクニックなどお外ごはんにもぜひ。


グリーンヴィシソワーズ

ルッコラとピスタチオのソース

スローフードにかえろう!

先日、家の近くのカウンターだけの小さなオステリアで夕方の早い時間から食事をしていると、前菜に添えらたルッコラに小さな花のつぼみがついていました。ルッコラの花を食べるのは初めてでしたが、あのルッコラ特有のゴマのような風味とさわやかな苦みが口の中に広がりました。

そして、そのお店で流れていた音楽が、2001年に僕が選曲/監修をしたイタリアの60~70年代の軽やかな映画音楽を集めた『BACK TO SLOW FOOD』だったのです。エレガントなピアノのジャズや爽快なボサノヴァなど、まさにこんなオステリアでかかっているというイメージで選曲したコンピレーションCDなのですが、そのお店の雰囲気やイタリア料理のもつ素材を生かした味わいに気持ちよく曲が溶け込んでいてうれしくなりました。

当時のイタリアでは、たくさんの恋愛コメディや、お色気映画などがつくられていました。そこに添えられたバラエティーに富んだ音楽を聴いていると、イタリア人の大らかな生活ぶりも垣間見れて、ゆったりとした気分にさせてくれます。ピエロ・ピッチオーニやエンニオ・モリコーネ、そして先ごろ95歳で亡くなったマエストロのアルマンド・トロヴァヨーリの曲を聴きながら、午後早い時間からパテなどをつまみながらワインを飲むのはなんとも幸せな時間でした。

トトスクキッチンがこんなカウンターだけの小さなお店を開いたら……などと想像しながら白ワインを口にすると、北イタリアのキリッと冷えたスケルリのヴィトフスカの酸味がのどを気持ちよく潤してくれました。

文/吉本 宏

Various Artists / BACK TO SLOW FOOD