日本とイタリアの食文化の融合実験。
七味唐辛子オリーブオイル&オリーブ漬け。

(2010.07.22)

七味唐辛子入りのオリーブオイルをご存じだろうか。ひと言で言うと、イタリアのエキストラ・バージン・オリーブオイルに、七味唐辛子を加えた辛味オイルである。実はこの商品、数年前からテスト的に販売されていたものだが、今回、それに加えて、七味オイルを使ったオリーブ漬けも登場。ふたつ揃ったところで、本格的な展開が始まることとなった。この商品の最大の特徴は、イタリアと日本の伝統食材の融合ということ。オリーブオイルやオリーブ漬けといったら、最もイタリアらしいもののひとつである。それが日本の七味唐辛子と出会ったというのが、なんとも珍しい。それにしても、どうしてこんなものが生まれたのだろうか。

この七味オイルは、トスカーナのオリーブ農園・デルポンテと善光寺の七味唐辛子の老舗・八幡屋礒五郎とのコラボ商品である。生産はデルポンテが担当。日本から七味唐辛子を輸入し、農園内で調合している。デルポンテは、トスカーナの温泉保養地、モンテ・カティーニ・テルメに近い丘陵地帯にある。畑は標高200~600メートルにあり、高原気候のため害虫が少なく、ほぼオーガニックに近い農法でオリーブ栽培を行っている。トスカーナのオリーブオイルは、生産量は多くないが、品質の評価が高い。ワイナリーなどが競って、恐ろしいまでに香る、ワインより高価なオイルを生産しているのだ。デルポンテもまた。高品質オリーブオイルを生産する品質志向の生産者だ。

沈殿する七味唐辛子。最初はキレイなグリーンのオイルが徐々にオレンジ色に染まっていく

一方、八幡屋礒五郎は、長野の善光寺の門前で200年以上続く老舗の七味唐辛子メーカーだ。七味唐辛子は、いまさら説明するまでもないが、唐辛子の他、胡麻や麻の実、陳皮(ミカンの皮)など、全部で7種類の素材が組み合わされた調味料で、東京・浅草のやげん堀、京都・清水寺門前の七味家と、この八幡屋礒五郎が三大七味ブランドと言われている。中でも、八幡屋礒五郎の七味は、辛味を出すための唐辛子、辛味と香り両方を併せ持つ山椒、生姜、風味と香りのよい麻の実、胡麻、陳皮、紫蘇の七つを混ぜ合わせ、他の七味に比べて、辛味も香りも強いのが特徴だという。

この七味オイルの立役者は、デルポンテ社を1993年に創業したアレキサンダー・フォン・エルポンス氏である。氏は、ミュンヘン大学大学院時代に哲学と日本学を学び、日本への留学経験もある。日本文化を愛し、なんと農園の中に露天風呂まで作る日本びいきだ。夕日を浴びるトスカーナの丘を眺めながら、露天風呂に浸かって考えたのがこの七味オイルというわけだ。

製法はシンプルだ。250ミリリットルに対して、まず7グラムの七味を入れ、そこにエキストラ・ヴァージンオイルを注ぎ込む。イタリアに昔からある唐辛子入りのオリーブオイルは辛味第一で、高品質なオリーブオイルは使わないものだが、この七味オイルは、オイルの香りと七味唐辛子の香りを同じレベルで調和させるために、新鮮なオイルを使用するのが特徴だ。香りも辛味も、両方生かすことを狙っている。オイルを入れた瞬間、色は付いていないが、時間の経過とともに、最終的にきれいなオレンジ色になる。デルポンテ社では、自社のオリーブオイルの特徴でもあるフレッシュ&フルーティな香りと八幡屋礒五郎調合による香りと辛さの七味唐辛子の風味を損なうことなく、バランスのよい香味オイルに仕上がったと言っている。

南イタリアの伝統レシピを元に制作したオリーブ漬け。ピリッとした辛味が、ワイン、ビールのほか、焼酎、シングルモルトとも相性よし。

一方、オリーブ漬けだが、これは、七味オイルに胡麻とニンニクを加えて漬け込んだオリーブだ。ちょっと以外だったのが、種なしだということ。オリーブを石で叩き割って種を出したものを辛味オイルで漬け込むという南イタリアの伝統的な食べ方に則っている。実は、我々の周辺でも、食卓に出したときの見栄えを考えると、種ありがいいという意見が多かったが、デルポンテでは、イタリアの青空市場で量り売り販売されるオリーブのカジュアルさを重視、瓶詰めオリーブの保存食的な位置付けではなく、酒のつまみとして一晩に食べきるスタイルの商品として仕上げた。よって、写真栄えしない商品になってしまっているが、味の追求という意味での完成度はたしかに上がっている。こうしたプランニングには、文化のローカリゼーションを専門とするミラノ在住のビジネス・プランナー、安西洋之氏が関わっている。

緑に囲まれたデルポンテ農園内の住居。
和風にこだわった露天風呂。入浴時の目線と眺望を計算した本格的な設計。
ほぼ無農薬栽培のオリーブ。
幻の豚といわれるチンタ・セネージを飼育。生ハムも自家生産。
野菜はもちろん自家製。農園では自給自足に近い生活を送っている。
農園の周囲にはトスカーナの丘陵地帯が広がっている。
阪急コミュニケーションズ刊 1890円

また、この農園を舞台にして制作された本があるのでそれにふれておきたい。イタリア料理研究家の池田律子氏と、ミラノ在住の美術作家、廣瀬智央氏共著による『旅して見つけたイタリアの保存食レシピ』(阪急コミュニケーションズ刊)だ。彼らも、この農園におよそ1カ月間滞在し、やはり毎晩、露天風呂に浸かりながら、オイル漬け、酢漬け、塩漬け、燻製、シロップや、ジャムなど、イタリアの保存食と、それらを使った料理を作り、撮影した。著書はその記録である。

 

七味唐辛子オリーブオイル&オリーブ漬け
 

デルポンテ×八幡屋礒五郎
七味唐辛子エキストラ・バージン・オリーブオイル 
100ミリリットル入り
参考価格 1,200円
ギフトボックス入りの250ミリリットルボトルも販売中
デルポンテ×八幡屋礒五郎
七味唐辛子入りオリーブ・オリーブオイル漬け
250グラム クリアケース入り
参考価格 980円

 

 

商品は、アマゾン他で販売中。
問い合わせ先:デルポンテ