旨くないものを口にするほど人生は長くない - 5 - 今年も盛り上がっています!  カリフォルニアワインの「バイザグラス」。

(2010.05.19)

まもなく米国に行くというのに、目下、足しげく通っているのが、カリフォルニアワインの「バイザグラス」のお店。「バイザグラス」というのは、レストランなどの料飲店で、ボトル単位でなく、グラス単位でワインをサービスすることで、既にこの楽しみを知っているワインラバーも多い筈。

今や、バイザグラスキャンペーンは、ヨーロッパからニューワールドまでのワイン生産国ごと、リースリングなどブドウ品種ごと、ロゼなどのワインのタイプごとに年中どこかで展開されていると言っても良いかも。だけど、毎年4月~5月のカリフォルニアの時には、どうにも「今年も何件か行き倒すぞ」、という気持ちがフツフツと湧いてくるのよね。春めく陽気に誘われて……かと思っていたけど、このあいだ友人に「なぜカリフォルニア?」と聞かれて、よく考えてみたら、他にも理由があったみたい。

『カリフォルニアワインバイザグラス』は15年以上も続いているキャンペーンだけに、このシステムを上手に活用している要領を得た参加店が多いです。飲み比べができるバリエーションを揃えるとか、普段よりちょっとお得な料金設定という、“この時だから感”は、ポイント高し。いつもより多い種類をオーダーすることに躊躇しないし、キャンペーン実施時期に来た甲斐があった!!という満足感が得られます。それと、常に新顔がいるのがいい。

家飲みも外飲みも好きな私ですが、『Hanako』掲載の店を片っ端から食べ歩くほどの若さもなく、ついつい通う店も固定してきた今日この頃。新規店開拓にも、 このページは使えます。初めての店にトライアルで行く時、もし気に入らなかったら、最初の一杯で帰れる敷居の低さが欲しいもの。

ボトル1本オーダーしてしまったら、飲み切るまで席を立てない貧乏性の私なんかには特にね。とはいえ、こうしたプロモーションに参加する店は、往々にしてワインサービスに対する意識が高いので、参加店一覧表の店名リンクからホームページまで入って、自分の好みに合いそうなのを吟味すれば、ハズす危険性も低いです。

そんな新規開拓精神を胸に初訪問したお店を、いくつか紹介しましょう。

 

NAPA

店名から判るとおり、ナパを中心にカリフォルニアワインが殆どだけど、価格もブドウ品種も幅広いラインナップで、目移りしてしまうワインリスト。女ふたりでゆっくり楽しむディナーに、1本だけを選ぶなんてできません。
 

ピンツィモーニオと「ホニッグ・ソーヴィニヨン・ブラン」。15種類の野菜をオリーブオイルと共に味わう。ソーヴィニヨン・ブラン特有の清しさの中にナパらしい柑橘系のフルーティネス。生野菜のみずみずしさと相性ぴったり。
豚の頬肉塩漬けピッツァと「クライン・ピノ・グリ」及び「カレラ・ピノ・ノワール・セントラル・コースト・キュヴェ・V」イタリア人はひとりで1枚のピザを平らげるけど、いろいろなものを少しずつ楽しみたい日本人に、その食べ方は、ちょっとね……。

 

碑文谷テラス

特筆すべきは、日替わりで3種のワインを組み合わせた徳用セット。別々にオーダーするより安く、ちゃんと1杯分の分量がある!「だったら料理も3種類は頼まなくてはね 、ブランチだけど」と、まんまと罠に嵌ってしまうのも、また楽し。この日は、スパークとリースリングとメルロのセットでした。

宮崎県産フルーツトマトとA.O.C.シャロレのシェーブルチーズと「グロリア・フェラー・ロイヤル・キュヴェ・ブリュット」 休日ブランチのスタートは、何はともあれ泡でしょう。暖めたオリーブオイルに浮かぶシェーブルは、ふんわり優しいお味で、素直な味のスパークリングが寄り添うことで、ますます素敵な一品に。フルーツトマトは甘みのあるヨーグルトソースと共にいただくと、オフ・ドライのリースリングも合わせてみたくなります。

 

執事喫茶 Swallowtail

執事喫茶なるものがあることは、つい最近知りました。テレビで見るような、愛のビームと共にオムライスをサービスするアキバのメイド喫茶のようなものを想像して入店したら、かなり違っておりまして・・・。バイザグラスのワインは、女性中心の来店客に焦点を絞って甘口中心にラインナップしているものの、ボトルのワインリストは様々なタイプを高級レンジまでしっかり品揃え。そして、ディナーコースの中に含まれる紅茶の選択肢は、通常のレストランではあり得ない幅広さで、農園別に選べるほどの本格派。いやはや勉強不足でございました。

 

バーニャカウダと「セバスチャーニ・シンフォニー」。春野菜の盛り合わせに、タプナード、ゴボウディップ、ローズソルトを添えて。カリフォルニア特有の品種、シンフォニーは、マスカットの香りが顕著。適度な酸味もあり、意外とさらりと飲める甘口なので、デザートワインとしてだけではなく、オードブルからイケちゃいます。こんな組み合わせ、ちょっと勇気が要るところを、60mlからオーダーできるシステムが背中を押してくれます。
岩中豚ロース肉のソテー、シャリアピンソースと「ボンテッラ・マクナブ・ランチ」。豚ロースだったら白、と言いたくなるところ、シャリアピンということで、敢えてこのワインを選択。ダークチェリー系の濃厚な赤い果実の香りと2002年ヴィンテージの熟成感、甘みを感じさせるソフトな口当たりは、ソースの中の玉ねぎの甘みと調和します。
アプリコットタルト、アプリコットアイス、マスカルポーネと「ノヴェッラ・レイヨン・ド・ソレイユ 2008」
ワインに備わったアプリコットの風味がタルトとアイスにマッチ。先のシンフォニーに比べ、はちみつのような甘みとボリューム感があり、アングレーズソースとのバランスが程よいです。デザートワインがあることで、そのあとに頂く紅茶の美味しさも倍増。

初めて行くお店で、普段とは少し違う方向性のペアリングも、ちょっと入れよう、というmyテーマを持ってバイザグラスに臨んでいる今年。ワイン飲みが3人も集まれば、「我々の飲む量から考えたら、ボトルでオーダーした方が良いよね」と流れになるのが常。そんな時は、みんなの好みも考え、このあたりが落とし所かなぁ、というチョイスをしがちです。

でもバイザグラスは、自己責任で、どこまでもチャレンジャーになれる醍醐味がありますよね。この機会に、飲んだことのないワイン、好みとはちょっと違うワイン、ひとつの料理に複数のワイン、マイセオリーと異なるフードペアリング、などなど、思いつくまま楽しんでみてはいかがでしょう?お店の発掘にもなりますよ。