ほろ酔い倶楽部 - 14 - 『シャトー・メルシャン』で日本ワインの未来を予感。

(2010.09.16)

『メルシャン勝沼ワイナリー』(山梨県)が、ワイナリー名を『シャトー・メルシャン』に改めて、9月1日、リニューアルオープンした。猛暑が続き、過去113年間で最高の暑さを記録したと気象庁が発表したその日に、勝沼の地を訪ねた。

気象庁が日本の平均気温について、統計を開始したのが1898年。それよりも前の1877年、シャトー・メルシャンのルーツである日本初のワイン会社「大日本山梨葡萄酒会社」が、すでに誕生していた。130余年にわたり日本のワインの歴史と共に歩んできたメルシャンが、日本ワインをもっと身近に知って楽しんでもらいたいと、「日本ワイン情報発信基地」を10億円かけて完成させた。「ワイナリーエリア」(ビジターセンターとセラーや醸造設備)と、「ワインミュージアムエリア」(ワイン資料館とテイスティングや軽食が楽しめるワインギャラリー)に分けて、訪れる人たちに「メルシャンワールド」を思う存分楽しんでもらうという構想だ。

ワイナリー訪問の最大の楽しみは、そこで造られたワインをその土地の空気と一緒に味わえることだ。新設されたテイスティングカウンターでは、20種類以上のワインが楽しめるのが嬉しい。また、「ワイナリーツアー」では、ワインがどの様な方法で造られるのか、その生い立ちについて直接造り手に聞く事ができる醍醐味も味わえる。日本で生まれたワインをより身近に感じ、驚きや発見もたくさん味わえるにちがいない。照りつける太陽の光のせいか、ワインギャラリーから見渡す山の裾野に広がるぶどう畑は、ナパのロバート・モンダヴィ・ワイナリーの光景とどこか似ていた。1966年に設立し、ナパで初めてワイナリーツアーを手がけたのが、ロバート・モンダヴィだ。今も世界中の人びとを魅了し続けていて、私もファンの一人だ。ファンが通い続け、いつまでも愛され続けるワイナリーを目指して欲しいと願う。

「ミュージアムエリア」の左がワインギャラリー、右がワイン資料館。 

2010年度から導入される「甲州ぶどう原産地呼称制度」のこと、又、ワインツーリズムの拠点としてのメルシャンへの熱い想いについて、田辺市長(甲州市)が祝辞を述べられた。日本ワインのパイオニアとしてのメルシャンの未来に、甲州市からも大きな期待が寄せられた日となった。

メルシャンの親善大使として1年前に『メルシャン ワインアンバサダー』に就任した押切もえさんが、「甲州」ワインについて語った。「勝沼甲州2009」が注がれたグラスをスワーリングする姿もエレガントで、テイスティングコメントも、「香りは青リンゴや和の柑橘系。すっきりしているが、ふくよかな余韻がある」と、甲州種の特徴を大いにメディアにアピールした。

甲州ワインについて熱く語る『メルシャン ワインアンバサダー』の押切もえさん。
1,570円とは、リーズナブル。特に和食系の焼き系魚とのマリアージュは、最高なのだとか。

もえちゃんが語った甲州ワインの「ふくよかさ」は、貯蔵タンクの中で澱と接触させて仕込む、シュールリー製法のなせる技だ。この技法を取り入れたことで、日本の固有品種である「甲州」は、一気に世界的に注目される品種になった。特に近年和食ブームが起きているロンドンでの注目度は大変高いのだとか。メルシャンのワインは国際ワインコンクールにおいても華々しい受賞歴が数えきれないほどあるが、日本の甲州種に限って言えば、「甲州子樽仕込み1998」が、2000年に国際ワインコンペティションで金賞を受賞したのを皮切りに、甲州種の躍進が続き、今年7月「Japan Wine Competition2010」においても「甲州子樽仕込み2009」が金賞を勝ち取った。

メルシャンのワインの受賞歴はこちらから。⇒ http://chateaumercian.com/about/award/

「ワイナリーエリア」内ビジターセンターの地下にある、白を基調とした清潔感あふれるワインセラーで、オープニングパーティーが行われた。まずは「勝沼のあわ」で乾杯だ。甲州種100%で造られたこのスパークリングはきめ細かな泡立ちで、瓶内二次発酵されていない分、爽快感がきわだつ仕上がりだ。値段は1,850円とお手頃で、年間生産量は16,000本。昨年度の日本のワインコンクールにおいて金賞を受賞した。日本を代表するお値打ちスパークだ。

左)メルシャン執行役員・大久保 哲朗さん、中央)シニアソムリエ・のりか 右)メルシャン執行理事・竹内 誠さん。

「Japan Wine Competition(日本ワインコンクール)2010」で入賞した輝かしいワインの数々が振る舞われた。
「シャトー・メルシャン 甲州子樽仕込み2009」金賞。
「シャトー・メルシャン メルロー桔梗が原2006」金賞。
「シャトー・メルシャン 甲州鳥居平2006」銀賞と最優秀カテゴリー賞など。

その中で、個人的に大注目したワインに出逢った。その名は、「シャトー・メルシャン マリコ・ソービニョン・ブラン2006」。フランス・ロワール地方のソービニョン・ブランを彷彿とさせてくれるこのワインが、日本で造られていることに感動した矢先、ワイン評論家で弁護士の山本博氏が、「マリコ(椀子)の畑に行ったが、とにかく畑の立地が素晴らしいんだよ。」と教えてくれた。マリコヴィンヤードは長野県の上田市にあり、メルシャンが自社管理している畑で、最高品質のワインを追求しているのだそうだ。この畑から生まれるワインから当分目が離せない!

山本博氏と一緒に。

「ワイナリーエリア」にある製造設備が新設された。高くそびえるピカピカに光った発酵用のステンレスタンク群は、メルシャンワインの品質のさらなる向上に向けた情熱と意気込みそのものだ。ここでは徹底的な温度管理がコンピュータによって行われ、何か異常があれば、コンピュータが教えてくれる。今日の様な猛暑日であってもタンク内の温度が一定に保たれて、最適な環境で発酵が進められるシステムだ。そんなハイテク技術とはうらはらに、ロバート・モンダヴィが提唱した「グラヴィティー・フロー」という昔から使われている技法を、ここに取り入れた。例えば収穫したブドウを、ポンプを使わずに、フォークリフトで重力を生かして直接タンクに入れることにより、ブドウへのダメージが最小限に抑えられる。この様に、ぶどうや果汁を丁寧に扱うことにより、「調和のとれた上品な味わい」を表現できるワイン造りが可能になる。

ステンレスタンクが並ぶ「ワイナリーエリア」を見学。

ワインギャラリーでは、お得な「テイスティングセット」を試したい。「甲州飲み比べセット3種類」が250円。「グランドテイスティング」はシャトー・メルシャンの最高峰である、城の平カベルネソービニョン、桔梗が原メルロー、北信シャルドネの3種類が1,000円でテイスティングできる。後者はどれも国際ワインコンクールで数々の受賞歴を誇るワイン、これはお得だ!

「日本のワインでしか表現できない個性の追求と、上品な味わいが愛され親しまれること」を目指すメルシャンにとって、エレガントでどこか日本的な清楚な印象がある押切もえは、メルシャンのブランドイメージにぴったりな人だと思った。ワインにあまり馴染みのない人たちに、もっともっとワインが身近な存在になる提案や情報をたくさん発信していってね。もえちゃん、応援してます!

『メルシャン ワインアンバサダー』のもえちゃんとのりか、勝沼のぶどう畑のどこにでも目にする
「束杭」と言われる棒を林立させた「ぶどう棚のオブジェ」をバックに。

シャトー・メルシャン
http://www.chateaumercian.com
山梨県東山梨郡勝沼町下岩崎1425-1
Tel. 0553-44-1011
9:30~16:30
火休

*JR東京駅〜塩山駅、約1時間半、そこからタクシーで約10分、シャトー・メルシャンに到着。
*10月2、3、9、10、11日『シャトー・メルシャン ハーベスト・フェスティバル2010』開催。