Bon Vivant! - 5 - アルデッシュの天使 Part3。「ル・マゼル」と「ドメーヌ・アンドレア・カレク」について。

(2010.09.13)

今回も引き続き、アルデッシュ地方の素晴らしい造り手「Le Mazel(ル・マゼル)」の
Gérald OUSTRIC(ジェラルド・ウスリック)と
Domaine Andréa CALEK(ドメーヌ・アンドレア・カレク)についてお話していきます。

では、ル・マゼルのジェラルド・ウスリックから。

ル・マゼルは、ジェラルドと妹のJocelyne(ジョスリーヌ)との家族経営です。
ジェラルドが畑と醸造、ジョスリーヌが事務全般を行い、
そして、お父様もまだまだ元気に畑仕事をされています。

お父様の代から、地元の協同組合にブドウを売っていましたが、
ジェラルドが引き継いでしばらく経った1998年から、
自分達で自然派ワインを造ることとなります。
畑は1995年から有機農法を行っています。(1999年に有機認定取得)

ル・マゼルの瓶詰め作業をお手伝いした際に、
ジェラルドに自然派ワインを造ることとなった動機について、
それとなく尋ねてみると、

「自分が美味しいと思えるワインが無かったし、
ブドウを売っている協同組合が作ったワインが美味しくなかったから、
自分で(自然派ワインを)造ろうと決意したんだ。」

と、彼らしい率直な答えが返ってきました。

確かに、自分が懸命に育てたブドウが他のブドウと一緒にされ、
美味しくないワインになるのなら、自ら美味しいワインを造りたいと思うのは
必然なのかもしれません。

今回は残念ながら畑仕事はお手伝いすることはできませんでしたが、
醸造所のすぐ側にある畑は、いつも手入れの行き届いた気持ちのいい畑です。
夏期作業時には朝早くからトラクターで畑に向かう彼の姿を何度も見かけました。

畑は現在19haあり、
Viognier(ヴィオニエ)、Chardonnay(シャルドネ)、Syrah(シラー)、Grenache Noir(グルナッシュ・ノワール)、Carignant(カリニャン)、 Cabernet Sauvignon(カベルネ・ソーヴィニヨン)、Merlot(メルロ)、Porton(ポルトン)といった品種が栽培されています。
 

Valvignères(ヴァルヴィニエール)にあるシラーとカリニャンの畑(5月下旬)。
カリニャンのブドウの赤ちゃん(5月下旬)。
シラー(5月下旬)。
石灰分を多く含んだ土壌の畑には雑草がよく茂っています。

ル・マゼルの醸造所は重力による作業を考慮した仕組みとなっており、
ポンプを極力使用することなく、ワインに負担をかけない造りとなっています。
また、低温発酵による醸造のため、それぞれのタンクは温度調整可能であり、
約15度前後に設定しています。
 

温度調節が出来るイノックスタンク。3番のタンクの上は、ポンプを通せるよう壁が開いておりワインに負担を掛けることのない、重力を利用した仕組みになっています。
昔ながらの木製の圧搾機。手作業でゆっくり時間をかけてブドウの実を破砕します。

それは、特に赤ワインに関してですが、
フルーティで軽やかなワインに仕上げたいためとのこと。
低温発酵でじっくりとワインを熟成させることにより、
ブドウの味わいを楽しめる美味しいワインが生まれます。

静かに樽で寝かされたワインは、ゆっくり時間をかけて熟成させていきます。

もちろん醸造の際、特に技術的なことは行わず化学物質も使用していません。

様々な造り手の素晴らしい自然派ワインを口にする度に感じることですが、
ワインの美味しさの秘訣はやはり、

「ブドウのみを発酵させる」
ということに尽きるのではないでしょうか。

そして、ル・マゼルの醸造所に訪れる度に、いつも感じることは、
ワインを買いに求める人に限らず、
地元の造り手も自然と集まる居心地の良い空間、ということ。

それは、やはりジェラルドの人徳から来るものなのでしょう。
誰かが困ったことがあったら、すぐに手を差し伸べ、
その問題を共に解決してくれる彼を見ているとそう感じずにはいられません。

ヴァルヴィニエールにあるレストラン『La Tour Cassée(ラ・トゥール・カッセ)』には、地元の造り手がいつも集まります(左からアンドレア、美味しい料理を作ってくれるClaire(クレール)、ジェラルド。

そして、もう一人の造り手、「ドメーヌ・アンドレア・カレク」。
チェコ出身のアンドレア・カレクはジェラルドとの出会いによって、
この地で自分のワインを造ることを決めます。
すでに、フランスにてワイン造りを行っていた彼が
この地に決めた理由は、ル・マゼルの畑のブドウの美味しさだったそうです。
 

Saint-Philippe(サン・フィリップ)にあるシラーの畑(5月下旬)。
シラーのブドウの赤ちゃん(5月下旬)。

2006年、ル・マゼルの畑の一部を購入し、現在5haを所有しています。
品種は Chardonnay(シャルドネ)、Viognier(ヴィオニエ)、Syrah(シラー)、Grenache Noir(グルナッシュ・ノワール)、Merlot(メルロ)の計5種。
もちろん畑、醸造にも化学物質は使用していません。
 

ヴァルヴィニエールのシャルドネの開花(6月上旬)。
シャルドネの状態を確認中のアンドレア(6月上旬)。

畑で作業する彼は、
日頃の陽気なキャラクターとは別の一面を垣間見させてくれます。

丁寧かつ繊細な仕事ぶりはもちろん醸造にも表れ、
彼の赤ワイン「Chatons de Garde(シャトン・ドゥ・ギャルド)」は同じ畑の同じ品種のシラーを、
同日に収穫し、様々な種類の樽にて熟成させたワインです。
 

すくすくと成長するシラー(5月下旬)。
樹齢50年のグルナッシュ・ノワール(5月下旬)。
花が咲き始めたグルナッシュ・ノワール(6月上旬)。
畑に自生する植物。

アッサンブラージュの前に、シラーの樽を試飲させてもらいましたが、
見事にすべて違う香りと味わいに脱帽しました。

彼の探究心と丁寧な仕事ぶりから生まれるワインに今後も目が離せません。

ところで、彼らの畑のあるヴァルヴィニエール(Valvignères)には、
ローマ時代からブドウ畑が存在し、
Valは谷を、vignèresはブドウ畑を意味しています。
その名の通り、周りは山に囲まれ、ブドウ畑が一面に広がった美しい景色の村です。
彼らのワインの美味しさは、
ひょっとするとローマ時代からの時間の流れを表しているのかもしれません。

そして、今まさに、ブドウ収穫の真っ最中です。
素晴らしいブドウの出来に、2010年のワインへの期待が膨らむばかりです。

アンドレアとジェラルド。ル・マゼルの醸造所にて。

Le Mazel(ル・マゼル)
Gérald et Jocelyne Oustric
Gaec du Mazel 07400 Valvigneres
Tel: +33(0)4 75 52 51 02

Andréa Calek(アンドレア・カレク)
Le village 07400 Valvignères
Tel: +33(0)6 79 71 25 72