from 大阪 – 7 - いよいよ、ミナミの街中で
ワインが産まれる?!

(2013.09.09)

朝陽に映える大阪産まれのデラウェア。独特の甘い香りを放ちます

大阪産まれ・大阪育ちのデラウェア

さすがにセミの鳴き声は静まってきたものの、まだまだ暑い日差しに覆われた大阪は柏原市にあるブドウ畑。棚仕立てのため湿度も高く、必要最低限の農薬しか用いない畑では、コオロギなどの夏の虫たちが嬉々として飛び交っていました。

大阪市内から車で30分ほどのところにあるブドウ畑へ朝8時半に集合、少しでも涼しいうちにと収穫が開始されました。ワインの原料となるデラウェアというブドウ品種は、マスカットベリーAやメルロ、シャルドネなどに比べて早熟で収穫時期が早いのが特徴。熟した房は淡い紫色を帯び、デラウェア独特の甘い香りを放ちます。

たわわに実ったブドウの房を触ってみると、しっかりと養分が宿った様を実感できます。さっそく一粒つまみ食い、じんわりとした甘みが広がり、次いで爽やかな酸味が感じられました。この酸味こそが、ワインにしたときにとっても大切な役割を果たすのです。味わいをキリッと引き締め、自然となにか食べたくなるような気にさせてくれるワインの酸味。いわゆる「良い年」とはブドウの糖度が十分にあがった状態を指しますが、おいしいワインはバランスが大事。酸味とどう付き合っていくかは、ワイン造りにおいて大きな要素といえるでしょう。

一房ごとにみな違う姿かたちをしています
一房ごとにみな違う姿かたちをしています
日差しに輝くブドウはうっとりするほど綺麗
日差しに輝くブドウはうっとりするほど綺麗
スタッフ総出、ボランティアの方々にも助けていただいた収穫

さてつまみ食いもそこそこに収穫を急がねばなりません。スタッフは業務の合間を縫って総出、そしてたくさんのボランティアの方々にも、お忙しいなか手伝っていただきました。飲食店の方、ワイン好きな一般の方、いずれはワイナリーを自分でやってみたいという方もいました。

ハサミを利き手に持ってブドウの房を次々と落としていきます。ここではあまり選果にこだわらず、目についたものをひたすら籠へ入れていけばいいのですが、実際には色も熟度も不揃いなブドウが多く、「このブドウがもしワインとなったらマズいのでは…」という気持ちから躊躇してしまうこともしばしば。しかし迷ったときは「食べておいしければ大丈夫」というのが原則なので、収穫が終わるころには結構な粒のブドウを食べてしまっていることに…。

ブドウも食べられるし最初こそ新鮮な気持ちで楽しい収穫作業ですが、2時間くらい続けていると体力も奪われだんだんと疲労が蓄積されてしまいます。しかも斜面に位置し棚の高さも腰をかがめなければならないほど。無理な体勢での作業を強いられ、気温も湿度も高いし、虫は近寄ってくるわで、なかなか大変な作業なんです。

それでもみんなで根気よく収穫していくと、徐々に目に見えて収穫箱がブドウで一杯になっていきます。「あともう少しでこの畑は終了するぞ!」ゴールが見えてくると俄然元気を取り戻し、最後のスパートをかけて収穫を終わらせました。

リズムよくハサミを入れる音が響きます
リズムよくハサミを入れる音が響きます
収穫されたブドウは街中にあるワイナリーへ
収穫されたブドウは街中にあるワイナリーへ
NHKの取材も入りました
NHKの取材も入りました
畑からトラックまで狭い道を運びます
畑からトラックまで狭い道を運びます
ブドウを街中の醸造所へ

もっとたくさんの人に、気軽にワインに親しんでもらうために。あえてミナミの街中に造った島之内フジマル醸造所へ、収穫したばかりのブドウをトラックで運び込みます。人が郊外へ移動するのではなく、ブドウに街中へ来てもらう。街へ買い物に来たついでに、あるいは仕事帰りに、気軽に立ち寄ることができる都市型ワイナリー。今までは2階のワイン食堂のみの営業でしたが、いよいよワインの原料であるブドウが到着しました。

運び込まれたブドウはさっそく選果にかけられます。一房一房手に取って良果のみを選り分ける作業はとても大切で、従事する方の表情も真剣そのもの。手塩にかけて育てられたブドウはどれも愛おしいものですが、美味しいワインを造るためにはここでしっかりと選別しなければなりません。

プシューッ。ゴゴゴゴゴーーーッ…。ブドウが投入された圧搾機が動き出す音に、正直身震いしました。いろんな紆余曲折を経て、ミナミの街中にオープンした都市型ワイナリー。一年を通じてブドウ畑でも様々な仕事がありました。そんな、ここまでの長い道のりが、まるでなんでもなかったかのようにあっさりと搾り出されてきたデラウェアのジュース。飛びっ切りの甘みとほろ苦さが入り混じった、それはそれは感慨深い液体でした。

この機械を用いてブドウジュースを搾汁
この機械を用いてブドウジュースを搾汁
1階の醸造所の様子を眺めながら2階でワインとお料理を
1階の醸造所の様子を眺めながら2階でワインとお料理を
ブドウからワインへ。たくさんの人を笑顔にする飲みもの

ブドウジュースは発酵槽へ送られ低温にて醗酵開始。ブクブクと気泡があがる様子をみると、「今まさにワインが産まれようとしている」ことを実感できます。ある酒蔵では「酒造りは子造り」と言われていましたが、なるほど生命が宿り育まれていく過程と、それを見守る人々の愛情に満ちた温かい眼差し。人間にもワインにもお酒にも、どこか共通するものがあるのかもしれません。

発酵を終えワインとなった2013年のデラウェアは、少し落ち着かせた後樽詰めされて2階のワイン食堂へ。今年できたての新酒・生樽ワインとしてテーブルに並びます。デラウェアを皮切りに様々なブドウの醸造が始まりました。この時期はほぼ毎日醸造所もフル回転し、眼下に発酵・熟成中のワインを眺めながら2階の食堂ではワインとお料理をお楽しみいただけます。

ワインをきっかけに人がつながり、会話がうまれ、笑顔がふえる。ワインは決して難しいものではなく、日々の暮らしを豊かにしてくれる楽しい飲みもの。そんなワインを造ったり、販売したり、飲んでいただくことでたくさんの人に喜んでもらえたら…。これ以上嬉しいことはありません。

ミナミの街中で産まれたワイン、どうぞごひいきに!!

とりあえず生ビール、というくらい生樽ワインもお気軽にどうぞ。
とりあえず生ビール、というくらい生樽ワインもお気軽にどうぞ。
岡シェフによる季節を意識したお料理も人気。河内鴨ラグーのタリアテッレ
岡シェフによるお料理も人気。河内鴨ラグーのタリアテッレ

島之内フジマル醸造所

ワインが身近にある街、島之内。これからどんなワインがここで産まれるのか楽しみです
ワインが身近にある街、島之内。これからどんなワインがここで産まれるのか楽しみです
TEL:06-4704-6666
住所:大阪市中央区島之内1-1-14 三和ビル1F
営業時間:13:00~22:00
定休日:水曜日
アクセス:地下鉄・松屋町駅から徒歩1分、長堀橋駅から徒歩5分