思い立ったらOpenTableでリザーブ! 10皿×10種のビオワイン
バカリ・ダ・ポルタ ポルテーゼ

(2010.10.19)

自称イタリア料理通の私は、イタリア料理は地方料理が面白いと思っています。一言でイタリア料理といっても北と南の料理は全く違っていて、その差は北海道料理と沖縄料理ぐらいあります。また、国境周辺の地方の料理は、外国料理の影響も受けているので特に面白い。たとえばオーストリアと国境を接するトレンティーノ・アルト・アディジェ州の料理には東欧料理の影響が見られますし、シチリアの料理は地中海の対岸のアフリカの影響で、イワシ&ウイキョウ&レーズンといった異色の素材の組み合わせが見られます。

さて前置きが長くなりましたが、シチリアの独特の素材の組み合わせを洗練されたスタイルで楽しませてくれるリストランテが、横浜にあります。そのリストランテ『サローネ2007』の月替わりの10,500円のディナーコースは前菜からデザートまで9品あり、どの品にも複雑な香りの調和があって、なぜかとてもワインが進みます。ちなみにこちらのワインは自然派なので、たくさん飲んでも翌日カラダが辛くなることがありません。それも素敵。もう少し安ければもっと頻繁に行きたい。……そんなことを思っていたら、より気軽な価格帯の系列店が渋谷にあることを(今更ながら)知りました。

それが『バカリ・ダ・ポルタポルテーゼ』。なんと3,500円のコースで10皿も楽しめてしまうという、驚異的なコストパフォーマンスのお店です。税金とコペルトを含めても4,200円! それだけに大人気でなかなか予約が取れず、レストラン予約サイト「OpenTable」で空席検索をして、やっと予約が取れました。

お店にうかがってみると、1皿ごとに相性の良い自然派ワインを出していただけるおまかせワインコースもあり、ワイン9種で4,200円、7種で3,500円、5種で2,500円(税別)。1杯あたりに換算すると500円以下ですネ。安い!! でも、食べ慣れている人は安さがかえって不安かもしれませんね。その値段でちゃんとしたモノ出してくれるんですか?と。ハイ、大丈夫です。10皿コース&9種ワインコースをいただいた私が太鼓判を押します。

【1皿目】 自家製リコッタとナッツのカンノーリ
【1杯目】 ロンバルディア州のスプマンテ「ヴィッラ フランチャコルタ」

10月のコースの一品目は、シチリアのお菓子「カンノーリ」をイメージし、カンノーリから甘みを抜いて代わりに塩気を足したというお料理でした。外側の生地のカリカリした食感と、リコッタチーズのコク、ナッティーなフレーバーが印象的です。スプマンテ「ヴィッラ フランチャコルタ」は黄桃に似た甘みのある香りとコクがあり、カンノーリとピッタリでした♪ 2皿目からのお料理は2ページ目にぜんぶ載せます!

 
この知る人ぞ知るシチリア系リストランテ『バカリ・ダ・ポルタポルテーゼ』。OpenTableのオンラインレストラン予約サービスを利用して、コストパフォーマンス満点のお食事を体験してくださいませ!

 
【2皿目】 モシャーメと茄子のソットオリオ
【2杯目】 ピエモンテ州、マテオ コレッジャの「ロエロ アルネイス」

モシャーメというのは鮮魚を塩とハーブでマリネした後スモークした、サルデニアの保存食。この日はブリのモシャーメでした。ソットオリオは低温の油で火を通す調理法、いわゆる「コンフィ」のことです。ブリと茄子、秋の味覚ですね。「ロエロ アルネイス」はマネージャーの辻さんが説明してくださった通り、グレープフルーツのような香りと苦みがあり、茄子の香りと同調して素敵なマッチングでした。

 

【3皿目】 3種の魚介のヴァポーレ
【3杯目】 ラツィオ州、モナステロ ヴィトルキアーノ「コエノビウム」

ハマグリ、マダイ、マダコの3種の魚介を蒸し、オレンジの香りを添えた温かな一品。「サローネ」でも出されているお料理ですが、サローネとバカリでは微妙に付け合わせが違います(サローネはポロ葱、バカリは白インゲン豆の煮込み)。これに合わせて出されたワインはローマのあるラツィオ州のヴィトルキアーノという村の修道院(イタリア語でモナステロ)で作られた「コエノビウム」。4種のブドウから作られた白ワインで、リンゴを思わせる甘酸っぱい果実味と酸味が、お料理のオレンジのフレーバーとよく合います。ちなみにコエノビウムとはラテン語で修道院という意味だそうです。

 

【4皿目】 スティンコとイタリア産栗のリゾット
【4杯目】 ヴァッレダオスタ州、オッティンのピノ ノワール

マネージャーの辻さんは、質問すると何でも答えてくれます。「スティンコって何ですか?」と尋ねれば、「豚のスネ肉の煮込みです」と即答。ワインの説明も丁寧で、聞けば聞くほど答えてくれます。この4杯目のワインはヴァッレダオスタ州の珍しいピノ・ノワールとのこと。

─ヴァッレダオスタといえば、スイスに近い山側のエリア、ですよね? 
「イタリアとフランスとスイスの国境に近い場所で、山と谷しかない州です」
─この地方のワインって東京であまり見たことがないですが、珍しいですよね?
「この地域のワインは運搬にコストがかかるため値段が高いものが多いんです。ピノ・ノワールは、イタリア語ではピノ・ネロというブドウ品種ですが、この造り手はフランスのピノ・ノワールを意識しているので、ピノ・ノワールと表記しています。でも飲んでみるとフランスのピノとはちょっと違う味がすると思います」。
─(飲んでみて)ホント! フランスのピノより甘みがある感じ……。ところでスティンコってなんでしたっけ…? あぁ、酔いが進んできたようです…。
「豚のスネ肉です」
─あっ、そうそう、そうでした! 話してばかりいないでいただきます!

 

【5皿目】 アーモンドのズッパ
【5杯目】 トレンティーノ・アルト・アディジェのポエール&サンドリのトラミネール アロマティコ

─辻さん、このワインの「トラミネール」って、「ゲヴュルツ・トラミネール」の「トラミネール」と一緒ですか?
「はい、ゲヴュルツと同じ品種です。甘みのあるクリアな酸味と、マスカットの香り、ウッディーな香りのあるワインです。スープのローストしたアーモンドの香ばしさとミントの香り、ミントと相性の良いマスカットの組み合わせを楽しんでください」。
─はい(そのように楽しませていただきます。既に私は酔っていますが、ワインはあと4種類出てくるのですよね)。お水もください。あ、ガス入りで。

 

【6皿目】 白身魚のアクアパッツァ
【6杯目】 ヴェネト州、ラ ビアンカーラのサッサイア

6皿目はアクアパッツァ。
「こちらは当店の定番でして、メダイ、アサリ、ブラックオリーブ、ケイパー、ドライトマトでお造りしたアクアパッツァです。ワインは2種のブドウを使い、10か月樽熟成させたもので、ボリューミーで濃厚な味わいですが、後にキレもあります」

このアクアパッツァが絶品で目が覚め、酔いから復活。魚の旨みの凝縮された熱いオリーブオイルもスープのように味わいつつ、この旨みとワインのボリューム感がよく合うわ〜と感心しました☆

 

【7皿目】 サーニェ アグロドルチェなポルペッティーニのソース
【7杯目】 ピエモンテ州、カ ラ ノーヴァのランゲ ネッビオーロ

─それにしても辻さん、ここのメニューって何故わかりにくい名前が多いんですか?
「お客様に『どういう意味ですか?』と聞いていただきたいからなんですが、なかなか聞いていただけないんですよね(笑)」
─サーニェってなんですか?
「サーニェは菱形にカットした手打ちパスタで、単数形はサーニャと言います。ラザーニャのサーニャです」
─なるほど〜!
「アグロドルチェというのは甘酸っぱいという意味で、ポルペッティーニは小さな肉団子のことです。甘酸っぱい小さな肉団子ということですね(笑)」
─うーん、日本語だと違う料理を想像してしまいますよね。
「ワインは『バルバレスコ』も造っている造り手のセカンドラインで、スグリを思わせる赤い実の甘酸っぱい香りと、生木っぽい香りがあります。どうぞ」
 この夜、通算7杯目にして、赤ワインとしては2杯目。そろそろ味が分からなくなりそうな頃合いでしたが、このワインは辻さんのコメント通りのハッキリした味。イタリアマダムのようなエレガントさもあって、アグロドルチェなパスタと相性抜群でした!

 

【8皿目】 豚ロースのロースト サルサ カルボナーデ
【8杯目】 ピエモンテ州、マテオ コレッジャのバルべーラ ダルバ

カルボナーデとはヴァッレダオスタ州の郷土料理で、端肉を使った赤ワイン煮込みのこと。この料理をソース状にしたものが「サルサ カルボナーデ」で、これを豚ロースのローストにかけたものが本日のメインです。ワインは辻さんのコメントを引用。「カシスのような甘い香りとチョコレートのようなビターな香りがあり、お料理の隠し味のレーズンと合うと思います」。

とにかく大変美味しくいただきました♪♪

 

【9皿目】 スパゲッティ ポモドーロ お好みの量で……
【9杯目】 エミリア・ロマーニャ州、イル ヴェイのヴァル ティドーネ ロッソ

最後のパスタは、好きな分量で注文できるシステムになっています。ワインは「BASTA」(ストップ)と言うまで注がれます。シンプルなトマトソースは無心に食べられる直球の美味しさで、少し冷やされた赤ワインは水のようにガブガブ飲めてしまえます(危険!)。この赤ワイン「ヴァルティドーネ」は、ワイン9種類コースを注文した人だけへのサービスだそうです。

 

【10皿目】 ドルチ ミスティ
【10杯目】 シチリア、フェッランデスのパッシート ディ パンテッレーリア

パンテッレーリアはシチリアの南西に浮かぶ小さな島。そこで造られた、ジビッボというブドウで造られたデザートワインと、パンナコッタ、ヘーゼルナッツのケーキ、自家製レーズンのラム酒漬けのジェラート。ワインは9種類のコースを頼んだのですが、実はサプライズのデザートワインも含め、計10種類楽しませてもらえるようになっています。こんな至福のエンディング、来る前は想像していませんでした。

これでお会計は9,000円弱。この質と量に対して、アンビリーバブルなお値打ち価格です。そしてさらにすごいと思ったのは、ワインを10杯飲んだ翌日、まったく二日酔いにならなかったこと。決して私のアルコール分解酵素が多いわけではないですから、飲んだワインの質が良かったということですネ。

行ってみようと思った方は、今すぐ!

 
バカリ・ダ・ポルタポルテーゼ

住所:渋谷区宇田川町36-6 ワールド宇田川ビル2F

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