Bon Vivant! - 4 - アルデッシュの天使Part2。ジル・アゾーニの畑と醸造のこと。

(2010.06.30)

今回は、ジルの畑や醸造についてお話していきます。
まずは、畑から。

自宅からほど近い場所に6ha50の畑が点在し、


Viognier(ヴィオニエ)
Roussanne(ルーサンヌ)
Marsanne(マルサンヌ)
Muscat(ムスカ)


Syrah(シラー)
Merlot(メルロー)
Cabernet sauvignon(カベルネ・ソーヴィニョン)
Alicante(アリカント)

が植えられています。

樹齢40年のシラーの畑にある古い井戸。

樹齢は、およそ40年のものが多く、
その他にはジルが子供たちと植えた4年目のムスカやマルサンヌが
大切に育てられています。

ムスカやマルサンヌの畑にあるQuartz(クォーツ・花崗岩)。

また、ブドウの樹が枯れたところにはMarcotte(マルコット)を行い、
新たな樹を育てています。

マルコット。伸ばした枝を土中に埋め、根付いた後(約3年後)に枝を切り離し、新たな樹を育てる手法。

もちろん、畑には農薬などの化学物質を散布することなく、
除草作業も畑によっては鍬を使い、
草が多く茂っている畑では、トラクターに重い耕具を付けて
手作業で除草しています。
 

鍬を使っての除草。樹齢4年の畑にて。
除草後のすっきりした畑。(トラクターでの除草作業はこちらをどうぞ

場所によっては大きな石ばかりの畑もありますが、
それでも手作業によって除草は行われます。

アリカントの畑。昔ここは川だったそうです。

除草剤を撒けば、簡単に済むことですが、
ジルはそれを良しとしません。
ワイン造りを始めた当初に、化学物質を施した経験があるからこそ、
その大きな間違いを否定できるのです。

除草剤を始めとする多くの化学物質を撒くことで、
土中の虫や微生物は死んでしまいます。
そして、地力は衰え、畑は生命力を無くしていくのです。

畑の中に居る虫や微生物は、
私達の目の届かないところで
豊かな土地を造り上げてくれているのに。

畑に咲く小さな花。

しかし、
そこに気付かない多くの畑を持つ生産者は
痩せた土地に新たに化学肥料を施し、
一時的な地力の回復に満足しています。

近隣の20,30haの畑を維持する生産者は、
大量の化学物質と機械を使用し、畑作業を簡単に済ませ、
より多くのブドウを実らせ、
地元の協同組合に安い単価でブドウを売る、
というシステムの中でブドウを生産しています。

そして、
協同組合はそのブドウから大量の安価なワインを生産しています。

このような心ない仕事からできたワインは
一体どんな味わいなのでしょうか。

そんな生産者とその畑についてジルはこう表現しています。

「Comme prisonnier」(まるで囚われ人だ)

化学物質をシステマティックに畑に施す彼らは、
自ら考え、行動することを放棄しているのかもしれません。

 

さて、
現在、ジルの畑のブドウの樹はすくすくと成長し、人の背の高さほど。
よってFil de fer(フィル・ドゥ・フェール・鉄線)を上げて
枝が強風などで折れないように固定する作業を行っています。

鉄線作業中(5月末)。

もちろん、手作業で枝やブドウが折れないように丁寧に。
毎回、作業を終える毎に畑がきれいになっているのを見ると
なんとも清々しい気分になります。

しかし、先日、
隣の生産者の畑でその作業を機械で行っているのを発見し驚きました。
もちろん鉄線を上げるのも機械が行いますが、
鉄線を留める金具も機械で行っています。

もちろん、ブドウの樹のことを考えていないので、
枝が折れたり、枝や葉が絡んで痛々しい姿に。
 

隣の畑の機械で作業された樹。
ジルの畑の樹。

ジルの畑のブドウの樹は幸せだなぁと感じさせられた出来事でした。

実がなり始めたヴィオニエ。

ところで、この辺りでは猪が出るため、その被害は深刻なものです。
既に、4年目の若い樹が猪に食べられてしまいました。
 

根こそぎ食べられた若い樹。
一番右の列が猪被害の多かった箇所。

現在は電気網で猪を防御していますが、
無事にブドウを収穫できることを祈るばかりです。

余談ですが、
すぐ隣の化学物質を使用した畑では猪被害は無いそうです。
やはり、猪も美味しいものには鼻が利くのかもしれません。

醸造についても、
化学物質の添加や特別な技術を行いません。
そして、ワインの状態を見極め、瓶詰めを行っています。

収穫時には、畑のブドウから感じることをそのまま醸造に活かし、
ブドウの美味しさを最大限に表現しています。
よって毎年違う醸造でそれぞれの年を表したワインを造っています。

2009年の赤ワインの瓶詰め作業。

2009年は、ブドウの状態はとても素晴らしかったようですが、
醸造については、なかなか難しい年だったようです。
赤ワインの飲み頃は後3年ほど経ってから、とのこと。
そのため、ワイン中のガスの残し方や
澱引きをせずに直接タンクから瓶詰めするなど考えているようです。

山羊が描かれたエチケット。Fable(ファーブル)2007年。アルデッシュは山羊のチーズの宝庫です。

ところで、
ジルのエチケット貼りの機械ですが、
エチケット1枚1枚に糊を付けるという
とても手間のかかる愛らしい機械です。
常に確認してあげないと、糊まみれになるこの機械。
なんだかフランスらしさを感じずにはいられません。

約20年以上経つエチケット貼りの機械。

今の季節、アルデッシュは太陽いっぱいの素晴らしい季節です。
ジルの仲間やお客様がいつもジルを訪ねにやってきます。

庭にある菩提樹の下で。

しかし、今年はいつもと違って雨が多かったよう。
造り手たちはブドウが病気にならないかとても心配していたようですが、
ジルの畑にはまだ病気がみられません。
それもこの季節、この地方におなじみのミストラル(強い北風)が
畑を乾かし、病気を防いでくれていることも一つの要因のようです。

太陽があり、
雲があり、
雨が降り、
風が吹く。

そして、大地に恵みをもたらす自然に対して
人間は何が出来るのでしょうか。

私はもう少し、
自然派ワインを通して

「自然の中で生きること」

の素晴らしさを感じながら、
皆さんにそのことを少しでもお届けできれば、と思います。

シラーの畑から。

 

Gille AZZONI

Mas de la Bégude
Les Salleles
07170 St-Maurice-d’Ibie
Tel:33(0)4 75 94 70 10