ワイン・ムービーいまワインに何が起こっているか? 『世界一美しいボルドーの秘密』

(2014.09.16)

映画『世界一美しいボルドーの秘密』 © 2012 Lion Rock Films Pty Limited

ワインブームは新興国にも浸透、特に中国ではボルドーの人気が沸騰しているという。ボルドーワインの繁栄と苦悩を描いた、久々のワイン・ドキュメンタリー映画。
 
ワイン産業のドキュメンタリー

2004年に公開された『モンドヴィーノ』(Mondovino)以来の久々のワインのドキュメンタリー映画だ。『モンドヴィーノ』は、ワインの世界規模の商業化とそれに反対する人たちを取材した内容だったが、それから10年、この作品は、ワインの商業化の行き着いた現在の姿を描いている。この映画、『モンドヴィーノ』との企画の関連性はまったくないが、ワインの商業化というのはワインの一大テーマである。原題は『Red Obsession』(赤い執念)、Redはワインであり、中国を表している。

シャトー・パルメCEO・トマ・デュロー
シャトー・パルメCEO・トマ・デュロー
 
ヴィンテージワインは誰の口に入るのか?

ボルドーワインの繁栄の裏には、刻々と変化する世界市場とグローバル経済とが密接に結びついている。そして今、ボルドーは、大きな危機に直面している。欧米の伝統的な顧客は減少し、中国を筆頭とする新興国の富豪によって、ボルドーは凄まじい価値まで押し上げられている。2013年に赤ワインの消費量が世界一となり、“すべて”を手に入れようとする中国の需要に対し、果たして伝統あるボルドーのシャトーたちは、この状況にどのように立ち向かうのか。

世界的なワインコレクター、ピーター・ツェン。中国の大人のおもちゃ製造会社のオーナー
世界的なワインコレクター、ピーター・ツェン。中国の大人のおもちゃ製造会社のオーナー
 
ボルドーの歴史と伝統を感じながら、ワインを考える

何世紀にもわたり、富と権力の象徴として、マリー・アントワネットなどにも愛されたボルドーワイン。1855年のパリ万国博覧会では、ナポレオン3世によって、初めて公式にワインが“格付け”された。第一級に選ばれた4つのシャトー(ラフィット、マルゴー、ラトゥール、オー・ブリオン)と、1973年に昇格したムートン・ロートシルトは“5大シャトー”と称され、ボルドーは世界での地位を確立した。そして、最上級の品質と誇りを維持し続けているボルドーは、今もなお著名人やセレブたちを魅了する存在である。

この作品には、代表的なワイナリーはもちろん、著名な生産者、また、ロバート・パーカーを始めとするワインジャーナリスト、世界的なワイン収集家の他、ワイナリーを所有するフランシス・F・コッポラ監督なども出演。現在のワイン産業の最前線を生の映像で見ることができる。テーマ設定よりなにより、ワインファンにはそれが最大の魅力だろう。ナレーションは、ラッセル・クロウが務めている。

シャトー・コス・デストゥルネルの熟成庫
シャトー・コス・デストゥルネルの熟成庫
中国でも特別な人気を誇る、シャトー・ラフィット
中国でも特別な人気を誇る、シャトー・ラフィット

シャトー・ラトゥールの畑
シャトー・ラトゥールの畑

シャトー・ラトゥールの熟成庫
シャトー・ラトゥールの熟成庫

シャトー・マルゴー
シャトー・マルゴー

シャトー・パルメ
シャトー・パルメ
北京の北80キロにある模造シャトー、シャトー・シャンギュ
北京の北80キロにある模造シャトー、シャトー・シャンギュ
ボルドーのプリムールイベントのディナー
ボルドーのプリムールイベントのディナー
 
『世界一美しいボルドーの秘密』
2014年9月27日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町 他全国順次公開

監督:デヴィッド·ローチ、ワーウィック·ロス
製作:ワーウィック・ロス
製作総指揮:ロバート・コー 
撮影:スティーヴ・アーノルド、リー・プルブロック
ナレーション:ラッセル・クロウ
登場人物:ロバート・パーカー、オズ・クラーク、フランシス・F・コッポラほか
字幕:吉田裕子
配給:アット エンタテインメント
原題:RED OBSESSION
2013 / 豪・中国・フランス・イギリス・香港 / 英語 / 78分
© 2012 Lion Rock Films Pty Limited

この記事は、ワインカルチャーを語るWEBマガジン「Wine & Story」から記事提供を受けて掲載しています