フード、ワイン、大自然の魅力いっぱいカナダ、オンタリオへ!3ライター omiyage 89がガイドする オンタリオ・ワインの旅

(2012.04.06)

カナダの中でも、いま注目のデスティネーション、それはオンタリオ州です。
その第一の理由は、食の充実。ギリシャ、イタリア、中国、ポルトガルなど
100以上の国をルーツにもつ人たちが、それぞれの伝統的な食文化を守っているのです。
世界的に評価の高いアイスワインの産地、
さらにナイアガラの滝など豊かな自然。
さまざまな魅力をもつオンタリオ州を、
5回にわたってリポートします。

ナイアガラ半島

ここ数年、カナダ・ワインは急成長を遂げています。カナダ全体の葡萄の約8割がオンタリオ州で生産されており、国内に約400あるワイナリーのうち140がオンタリオ州にあります。さて、ワインの旅のナビゲーターを務めるのは、私、ワインと食のライターのomiyage89。ヨーロッパのワイン産地は訪問経験があるものの、北米は初めて(南米はチリに行ったことあり)。

オンタリオ州のワイン品質管理同盟VQA(Vintners Quality Alliance)は、ワイン産地を、北から<プリンス・エドワード・カウンティ>、<ナイアガラ半島>、<エリー湖北岸>、<ピーリー・アイランド>の4つのアペレーション(指定ワイン産地)に分け、厳しい基準を満たしたワインだけに、ロゴマーク入りのキャップシールをつけて品質保証をしています。ちなみに葡萄は100%オンタリオ州産、特定の葡萄畑の名前を付ける場合は、100%その畑の葡萄を使用しなければなりません。

最も古い産地は、1860年代にすでに商業的に成功していたというピーリー・アイランドとエリー湖北岸。カナダで最も温暖なため、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどの黒葡萄品種がよく育ち、比較的フルボディなワインに仕上がります。一方、この10年で急成長し、2007年に正式にアペレーションに指定されたのがプリンス・エドワード・カウンティ。もともと果樹栽培が盛んだったこの土地のポテンシャルに注目した人たちが移り住んでワインを造り始めたそう。石灰岩の層のある土壌は、フランスのブルゴーニュによく似ていて、ピノ・ノワールの名手が多いのも特徴です。

そしてナイアガラ半島は、ナイアガラ・フォールズの形成にも貢献したナイアガラ・エスカープメント[断層]が、オンタリオ湖からの風を湖畔に循環させ夏と冬の寒暖の差を生むことから、ワイン造りに最適な気候が生まれるのです。多彩な品種が造られていますが、特筆すべきはアイスワイン。昨今では、ドイツ・オーストリアに次ぐ産地としても注目されています。

3つのワイナリーを訪ねて。

今回は、ナイアガラ半島の3つのワイナリーを訪ねました。
  

イニスキリン・ワインズ

まずは、カナダのワインの知名度を一躍有名にした1975年創業のイニスキリン・ワインズ。世界最大のワイン&スピリッツ見本市であるのヴィネクスポ1991で、並み居る強豪を破ってグランプリ・ドヌールに輝いたのが、オンタリオ特有の品種、ヴィダルを使った1989ヴィンテージのアイスワイン。創業者は、オーストリア出身の化学者カール・カイザーさんと、オンタリオ出身、当時農学部を卒業したばかりのドナルド・ジラルドさん。ともに家族の食卓には必ずヨーロッパのワインがあったというふたりは、オールド・ワールドの知恵をニューワールドで生かし、世界に誇るワインを造りたいと、オンタリオ初のワイナリーを立ち上げました。アイスワインを造ったのは1984年。常にナイアガラ半島のワインのフロントランナーとして数々の賞を受賞。2006年からは、若手の醸造家、ブルース・ニコルソンさんがワイン造りの指揮をとっています。アイスワインのほか、リースリング、ピノ・グリ、シャルドネ、ピノ・ノワールなどの辛口ワインも内外で評価されています。*ワイナリーツアーは、ひとり$5


左・凍てつく葡萄畑の中でスタッフが試飲を薦めてくれる。アイスワインの収穫は、マイナス8度以下、しかも夜間に行われる[日が昇ると温度がすぐに上がるため]。葡萄の果実の水分だけが凍り、糖分が凝縮する。これを摘み取り、凍ったままプレスし、発酵させる。1本(375mℓ)造るのに葡萄は1kgも必要。高いはずです!
右・ヴィダルは皮が厚く、耐寒性があるため、アイスワインに向く。ほかにはリースリング、シャルドネ、珍しいカベルネ・フランなども造っている。


左・新築の地下のテイスティングルームまで案内してくれるツアーもある。スクリーンには、アイスワイン造りの様子が映し出されている。
右・試飲ルームでは、日本人スタッフの山川澄恵さんが、日本語で説明してくれる。

ペラー・エステイツ・ワイナリー

石造りの建物が印象的なペラー・エステイツ・ワイナリー。現在のオーナー、ジョン・ペラーさんのおじいさんがハンガリーから移住し、さまざまなビジネスを成功させたあと、長年の夢だったワイン造りを始めました。ワインメーカーは、30代前半ながら10年ほどのキャリアをもつローレンス・ブーラーさん。手が空いていれば、ワイナリーツアーにも同行してくれます。300もの小樽が並ぶ地下セラーの熟成庫や、カウンターでテイスティングもぜひ。ワインは、コストパフォーマンスのよい“ファミリー・シリーズ”、“樽熟成の”プライヴェート・リザーヴ“、プレミアムクラスの”シグネチャー・シリーズ“の3つのシリーズがあります。

大きな窓から葡萄畑を見ながら食事できるレストランを併設。地元の食材で作る「ナイアガラ・キュイジーヌ」を提唱するシェフのジェイソン・パーソンズさんは、テレビでもひっぱりだこの有名人。前菜からデザートまで、一皿ずつワインとマリアージュできるペアリングコースが人気 テイスティング・ツアーはさまざまなコースがあり、$10〜。


左・石造りのエレガントな建物。裏庭では、焼きマシュマロのサービスが。
右・琥珀色で、蜂蜜のような甘みをもつアイスワイン。


左・300もの樽が並ぶ地下の貯蔵庫。85%の湿度に保たれている。
右・ブランチのコース。料理は$58、ワインのペアリング付きだと$84。前菜のカエデの木でスモークしたサーモン。りんご、ルッコラ、くるみ、ブルーチーズを添えて。ワインは、ミネラリックなリースリング・プライヴェート・リザーヴ2008を。


左・メインの“タラのスウィート・パン粉揚げ”は、フィッシュ&チップスをモダンにアレンジしたもの。フレンチフライドポテトとオリジナルのタルタルソースが美味。ワインは、キリリとドライなシャルドネ・プライヴェート・リザーヴ2007。
右・デザートのレイヤー・ヘイゼルナッツ・トルテ。ワインはアイスワイン・シグネチャー・シリーズ・カベルネ・フラン2007。


左・シェフのジェイソンさんがワインを選ぶ。「マリアージュは、甘みや辛みなど、互いに補い合うものを合わせる」
右・ダイニングルームの窓から見える葡萄畑。

サウスブルック・ヴィンヤーズ

サウスブルック・ヴィンヤーズは、カナダで初めてデメーターというビオディイナミ(旧オーストリア・ハンガリー帝国出身の人智学者、ルドルフ・シュタイナーが提唱した農法で、宇宙のリズムにのっとって葡萄栽培を行う)認証を取得したワイナリー。オーナーのビル・ルドルメアさんと妻のマリリンさんは、酪農を中心とする農家でしたが、2008年からワインを造り始めました。葡萄畑では羊が草を食べてくれるから除草剤は不要、かつ彼らの糞がたい肥にもなるそう。その自然な農法からは異質な感じがするほどワイナリーは超モダン。と思ったら、これ究極のエコ。ほぼゼロエネルギーの省エネで、周辺の自然になるべく影響を与えないようにデザインされたもので、北米のグリーンビルディング機関LEED[TheLeadership in Energy and Environmental Design]のゴールドランクに認定されているそう。ワインは、カジュアル・ラインの“コネクト”、ナイアガラのテロワールを生かした“トリオンフ”、限定生産の“ウィムジー”、アイスワインのほか、カシスやフランボワーズで造るフルーツワインも人気。


左・すっきりとスタイリッシュなテイスティングルーム。向こうはワインの熟成庫。説明を聞きながら試飲できる。自転車で来る人も多いそう。
右・オーナーのビルさんが熱心にワインの説明をしてくれる。「私たちは元々ファーマー。ただ昔ながらの造り方でワインを造っているだけ」


左・LEEDのゴールデンランクに輝いたエコロジカルなワイナリー。化学合成肥料や農薬は使用せず、天体のリズムに沿って葡萄を栽培する。土壌は主に粘土質。右・どのワインもナチュラルでスルリとのどを通る。

オンタリオ州インフォメーション

面積:106万8582km2と、カナダ第2の広さで日本の約3倍。南は、北米5大湖のスペリオール、ヒューロン、エリー、オンタリオの4つの湖、北はジェームス湾とハドソン湾に接している。
人口:1200万人(トロントは約500万人)
州都:トロント
公用語:英語(カナダの公用語は英語とフランス語)
日本からの行き方:トロント・ピアソン空港まで、エア・カナダの直行便で約12時間30分。
気候:6~8月が夏で、気温は27℃まで上昇することもあるが、北部は涼しい。9月末から紅葉の季節となり、11月に入ると急に気温が下がり、霜が降りることもある。12月から雪が降り始め、1~2月にはかなりの積雪となる。4月には雪は完全に消え、5月は色とりどりの花がいっせいに開花する。2月中は、ウィンターキャンペーン開催。
協力:カナダ観光局
   オンタリオ州観光局

All photos / Yuji Komatsu