TOTOSK KITCHEN Vol. 10 イタリアンパセリイタリアンパセリでつくる
ソバ・デ・アホとパスタソース

(2013.01.24)
写真/黒澤義教
みなさん、こんにちは。
2013年もすでに一カ月が過ぎようとしていますが、どのようにお過ごしですか?
成人の日、都心の大雪にはビックリしました。
積雪の成人式は、実に15年ぶりだそうです。しかもこんな大雪だなんて!
わたしの成人式も大雪で、振り袖の裾がぐちゃぐちゃになったことを思い出しました。
さて今回は、一年で最も寒く、体調も崩しやすいこの季節に
ウィルスや細菌の侵入を防いでくれるという噂の(?)
イタリアンパセリを使ったスープとソースをご紹介したいと思います。

♠イタリアンパセリ料理に合わせたい「トニ・メリッロの音楽」by 吉本 宏

今回取り上げるハーブはイタリアンパセリ。

イタリアンパセリ(英名)は和名ではオランダセリと呼ばれるセリ科の2年草です。
パセリと言えば、洋食屋さんでキャベツの隣にいる緑色の葉が縮れているカーリーパセリを連想しますが、イタリアンパセリは葉が平らで手の平を広げたような形をしています。

ほかにもイタリアンパセリの肥大した根を食用とするハンブルグパセリもあります。日本ではあまりなじみがなく、白いにんじんのような姿はハーブというより野菜ですね。

カーリーパセリに比べイタリアンパセリは風味や香りが優しく、苦味も少なくて、クセのない使いやすいハーブ。主に柔らかい葉の部分を使います。肉や魚料理との相性がよく、その独特の香りによる食欲促進効果もあるので、マリネやサラダのドレッシング、各種ソースやハーブバター、ハーブオイルにも使われます。さらにスープやパスタの隠し味としても活躍します。硬い茎はほかの野菜などと一緒にスープをとるときに使うといいと思います。

ビタミンやミネラル、鉄分、防腐作用のあるクロロフィルが豊富で、風邪予防、貧血防止、そして美肌効果(!)もあるそうです。

日本へは、江戸時代にオランダ人によって伝えられ、初めは洋食の飾りとして使われ、その後料理用としても食べられるようになったそうです。確かにイタリアンパセリがあることで、料理がパッと華やかになる気がします。

今回は、名脇役ではあるけれどなかなか主役になることが少ないイタリアンパセリをたくさん使って主役に抜擢しちゃおうと思います。これを機にイタリアンパセリと深~い関係になりましょう。

ソパ・デ・アホ

各材料のカットの仕方
にんにくは炒まったらいったん取り出す

材料4人分
イタリアンパセリ 大さじ2(葉のみ細かいみじん切り)
にんにく 4片(芯をとりスライス)
バゲット 適量(食べやすい大きさにカット)
ベーコン 50g(細かく刻む)
パプリカ 小さじ2
オリーブオイル 大さじ4
卵 2個
ビーフスープストック 1ℓ
塩 適宜
こしょう 適宜

作り方
1.大きな鍋にオリーブオイルとにんにくを入れてから火にかけ、ごく弱火でゆっくりとこんがりするまで炒める。
2.にんにくをいったん取り出しベーコンを入れ、バゲットを入れて少し火を強めて油と絡める。
3.パプリカを加えて、さらに味をなじませる。
4.水を入れて取り出したにんにくを鍋に戻し、沸騰したら弱火にして20分煮込む。
5.仕上げに塩コショウで味を調節して、一旦沸騰させてから溶き卵を流し込みすぐに火を止める。
6.イタリアンパセリを入れ出来上がり。

パスタソース


ぎゅうぎゅうに詰めてカップ2杯

材料4人分
イタリアンパセリ 2カップ(葉のみ)
クルミ 1/2カップ
パルメザンチーズ 1/2カップ
にんにく 1かけ(すりおろし)
ナツメグ ひとつまみ
オリーブオイル 1/2カップ
塩 適宜
こしょう 適宜
レモン汁 1個(今回、皮はパスタのトッピング使用)

作り方
1.クルミをフライパンでこんがりするまで煎る。
2.クルミの皮をざるなどで振るい落とす。
3.全ての材料をフードプロセッサーにかける。
4.好みの粗さになったら完成!

ビタミンを損ねないよう火にかけずに料理しましょう。

今回のソースは、パスタにサラダに魚料理、肉料理と大抵の料理に合います。イタリアンパセリくんはとっても顔が広いんです。

今回作ったスープ、ソパ・デ・アホはスペインで日常的に食べられているにんにくたっぷりスープのことです。バゲットを買ったけれど食べきれずに固くなって残ってしまった、なんてときに活躍する料理です。こんな料理の時にイタリアンパセリの生葉を一緒に食べると口臭の防止にもなるので、一石二鳥。

パセリに限らずフレッシュハーブのビタミン類は熱に弱いので、スープなどの料理に加えるときは、煮込まずに火を止めてから加えるようにすると栄養価を損なわずに済みます。スープストックがない場合は玉ねぎを少々スライスして代用してもコクが出ます。その場合はバゲットと一緒に炒めてください。

寒い季節には特においしい一品だと思います。ぜひ試してみてくださいね。パセリ類は、乾燥、冷凍保存ができるので、常備しておくと便利ですね。

にんにくたっぷり簡単にできるスペイン料理「ソパ・デ・アホ」
バジルソースよりちょっと個性的な「イタリアンパセリソース」

草花を揺らす優しい風のようなトニ・メリッロの音楽

イタリアンパセリは葉の形がとてもきれいなので、そのまま葉をちぎってスープやパスタに散らしてもいいですね。その青々としたグリーンは料理に爽やかな彩りを添えてくれます。育てやすいハーブなので、プランターなどで栽培している方も多いのではないでしょうか? 

イタリアのシンガーソングライターのトニ・メリッロは、『Il Mio Giardino』(僕の庭)と題されたアルバム・ジャケットで、きれいなグリーンのニットに身を包み“僕の庭”で育てた小さな草花を持っています。彼のガーデンにイタリアンパセリは植えられているのでしょうか?

彼の優しい歌声は、庭の草花を揺らすそよ風のようです。チェット・ベイカーやジョアン・ジルベルトなどのささやくような歌声が好きな方なら、きっと彼の声も気に入ることでしょう。イタリアには、同じようなテイストのジョー・バルビエリや、夢見心地の音楽観をもったジョルジオ・トゥマなど、大らかで陽気な一般的イタリアのイメージとは少し違ったアーティスト達がいます。彼らに共通しているのは、アメリカやヨーロッパ、南米など、様々な国のアーティストをフェイバリット・アーティストに挙げ、多様な音楽の影響を自分の音楽に反映させていることです。

彼のソングライティングや、その細やかな歌の表現、ストリングや口笛などを取り入れたアレンジの美しさを聴けば、彼がとても繊細な感受性を持ったアーティストだということがわかります。きっといつもていねいに庭を手入れして、美しい草花やハーブを育てているのでしょう。

文/吉本 宏

Il Mio Giardino / Toni Melillo